発送電分離の可能性に言及した海江田経産大臣
東電の福島第一原発事故の損害賠償問題について、政府案がほぼ固まったようである。
新機構に公的資金5兆円=原発賠償へ東電支援-12日に政府案決定(時事通信)
(引用始め)
巨額の賠償金を支払う東電を支援するため、電力業界とともに設立する新たな機構に対しては、必要に応じて現金化できる交付国債を5兆円規模で投入する方向だ。公的資金を活用した賠償の枠組みづくりは事実上決着し、12日に政府案として正式決定する予定。
新機構設立に当たっては特別法を制定する。政府は今月下旬の法案閣議決定を目指す。枠組みが固まることで、福島第1原発周辺から避難した住民や農漁業関係者らへの賠償は、事故発生から2カ月を経て支払いに向けて始動する。政府は、今後の生活などに対する被害者の不安一掃に全力を挙げる考えだ。
原子力損害賠償法(原賠法)に基づいて賠償の一義的責任は東電が負い、賠償総額に上限は設けない。ただ、同社の支払い能力を一時的に上回る可能性があるため、交付国債や原発を持つ電力会社の資金拠出で新機構をつくり、優先株の引き受けなどで東電に資金供給する。東電は毎年度の利益から1000億~2000億円を賠償支払いや調達資金の返済に充てる方向だ。
(引用終わり)
残念ながら、当初案と変わらない決着となった。しかしながら、この案に対する反発は国民のみならず、国際的に高い電気料金負担を強いられている産業界からも強い。このブログでも5月4日 、6日 、そして8日は2回(中部電力 浜岡原発停止の結論持ち越しと今後の電力供給体制 、海江田経済産業大臣へのメールと本日の賠償枠組みに関する関係閣僚会議について )発送電分離について述べてきた。
しかし、僅かだが前進があった。海江田経産大臣は、将来の東電の解体、発送電分離の可能性について言及したのである。
東電解体の道筋残す=賠償枠組みで-経産相(時事通信)
(引用始め)
海江田万里経済産業相は11日、日本記者クラブで会見し、東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償の枠組みに関して「何年先か分からないが、将来の発送電分離の可能性を奪う形になってはいけない」と述べた。
枠組みは、東電を当面、地域独占の電力会社として存続させ、賠償支払いに当たらせるのが前提。ただ、経産相の発言は、東電の発電と送電の両部門分離や、原発部門の切り離しなど解体を通して、他業種からの発電事業参入を容易にするなど電力自由化につなげる道筋も残すことを示唆した形だ。
(引用終わり)
(引用始め)
海江田万里経済産業相は11日、日本記者クラブで記者会見し、大手電力各社の送電部門を分離する発送電分離について「将来の課題として残している」と述べ、今後の検討課題とする考えを示した。東京電力福島第1原子力発電所の事故をきっかけに、産業界では電力10社の地域独占体制を疑問視する声が出ている。
政府による東電の賠償を支援する枠組みでは、現行の大手電力体制を前提としているが、経産相は「賠償をしっかり担保させるための仕組みが、将来の可能性を奪うようになってはいけない」と強調。経費に一定の利益を上乗せして決める電気料金についても「経産省が最終的にチェックをするが、どちらかというと冗費も含んだまま電気料金に乗せてきた傾向がある」と指摘した。
(引用終わり)
賠償スキーム作りが先行してしまったのは残念だが、被災地の復興を優先に考えればやむを得ない部分があったと思う。
一方で、ここで海江田経産大臣が述べている発送電分離案は、一部報道によると4月中に既に経産省の一部で検討されていたが、現在の電力体制維持に固執する事務次官や資源エネルギー庁サイドの巻き返しで一旦潰されたという。今回の海江田大臣の発言は、これらの動きを牽制し、広く国民、産業界、マスコミに発送電分離というテーマについてインプットすることが目的と思われる。
今後も既存電力会社は、発送電一体体制の維持に向けたプロパガンダを展開し続けるだろう。曰く安定供給ができない、曰く自由化しても料金が上がるなど、マスコミでも自由化の難点ばかり取り上げた電力会社の提灯持ちの記事が見られる。宣伝の必要がほとんどないはずの電力会社が、TVCMなど通じて莫大な額をマスコミへ流し続けてきた事実を忘れてはならない。
しかし、既に日本の電力会社(特に東電)は、安定供給も出来ない上に、国際的に高い料金を需要者に強いている。設備投資額を電力原価に反映できる総括原価方式をバックに、高価な原発建設に邁進した結果、地震大国を原発大国にしてしまった。
何が間違っていたのか、検証していけば結論は自ずと明らかになるはずである。菅首相、海江田大臣は、被災地の復興、福島第一原発の封じ込めとともに、原発政策に決定的な影響を与える発送電分離を不退転の決意で推進してもらいたい。さもなくば今回の賠償スキームなど、誰も支持しない。