中国高速鉄道における今回の事故後の対応ほど、中国の統治機構、社会のシステムの劣化を示すものはない。
死傷者数混乱 早期幕引き急ぐ当局 揺さぶるネット世論(産経新聞)
「遺体がない」鉄道事故の家族訴え…死者39人(読売新聞)
今回の中国鉄道省当局の事故検証を十分に行なわないという対応は、鉄道文明、そして人類に対する冒涜行為である。救助活動を満足に行なわない、などとは鬼畜の行為である。僅か38時間で運転再開したことなどは恥の上塗りで、即刻停止すべきである。
中国高速鉄道は運行を続ける限り今後も何度でも事故を起こす。その死者は数千人だろうか、数万人だろうか。その唯一の理由は、現実に向き合わず、事故の検証を十分に行なっていないからである。
現在鉄道先進国と言われる日本も、数多くの悲惨な事故を経験してきた。「国鉄戦後五大事故
」と言われるように、多数の死者を出す事故を経験してきた。
しかし、その都度検証を繰り返し、原因を究明し、やっとここまで来たのである。それでも尼崎事故のような悲劇がまだ発生する。一方、歴史的に安全を軽視し、様々な指摘、警告を黙殺して身内の利益保全を図った原子力業界は、福島で致命的な事故を起こした。彼らの文化レベルは中国共産党や鉄道省と何ら変わらない。
今回の事故対応を見て、中国の体力が落ちていることを感じた。全く現実に向き合っていない。中国鉄道省は運転再開により夢の世界に閉じこもったのか?いくら経済的な繁栄を誇ったところで、これでは砂上の楼閣である。アヘン戦争前の中国清朝も、自らを比類なき大国と誇っていたが、その実態は恐ろしく脆いものだった。
今回の綻びは、中国全体からすれば小さい、と中国指導者は思っているのだろうが、歴史上この程度のことが王朝崩壊のきっかけになったことはいくらでもある。深刻なのは、今回のつぎはぎ新幹線事故自体も、その後の恐るべき事故対応も、中国社会の腐敗を如実に浮き彫りにしている点である。現に2月には、劉志軍鉄道相(部長)が12億元の収賄の疑惑で解任された、との報道もあった。
どうせこの前鉄道相や、現場の担当幹部などに全責任を背負わせて幕引きを図るのだろう。しかし糾弾されるべきは、僅か38時間での運転再開を許した幹部であり、それに抗しなかった現場幹部であり、この風土を放置している幹部、労働者全てである。
一事が万事この調子なら、中国共産党政府は滅びる。隣国国民として、中国が散り散りに乱れ、かつてのような群雄割拠の内戦状態になることは全く望まない。しかし、それを選ぶのは中国国民であり、その審判を受ける中国共産党である。
私の聞く限り、特に温家宝首相の評判は決して悪いものではなかった。しかし、独裁権力下で汚職を防ぐのは絶対に不可能である。しばらくは共産党主導でもやむを得ないにしても、何らかの形での民主化を急ぐべきである。武力や暴動でしか政権が倒れないシステムは、いつか皆が不幸になる。