アヤとの夢のようなデートが終わり、僕らは深夜零時前にホテルを出た。
「・・・アヤさん、終電、間に合います?」
「まだ20分ぐらい余裕あるから大丈夫よ。主人も今夜いないし」
「帰したくない気分です・・・」
「ふふ・・・ありがとう。わたしも帰りたくないけど・・・」
「いつかお泊り愛がしたいです」
「そうね・・・いつか・・・できるといいね・・・」
不倫恋愛ではお相手の女性の家庭事情にもよるが、なかなかお泊り愛をすることが難しい。無理して一晩過ごすとそこから伴侶に怪しまれ、バレてしまうケースが過去に何度かあった。
「今日のアヤさん、すごく色っぽくて綺麗でした」
「お世辞でも嬉しいわ・・・ショウくんもステキだったわよ、2度もわたしの中に・・・ほんとタフよね・・・」
「お昼寝してお薬も飲んだから」
「でも、すっごく男らしかった・・・ふふ・・・思い出しちゃう」(照)
「日頃のストレス、ぶっ飛んだでしょ」(笑)
「うふ、ストレス・・・ほんと、なくなった。明日からやっていける」(笑)
「よかった・・・ねえ、また逢えるよね」
「うん・・・たしか再来週の水曜日、また主人が出張でいない日だったと思うから、その日でよければ」
「再来週の水曜ね、あけておくね」
駅の改札に着いた別れ際、僕は少し心にひっかかることがあったのでアヤに質問した。
「僕ら・・・またあの頃のように交際してるって思っていいのかな」
するとアヤは僕から目線をはずして少し俯いてこう言った。
「チナツさんからはまだ連絡は来る?」
僕は・・・少し嘘をついてしまった。
「もう連絡は来なくなったし・・・来ても無視するから」
「そう・・・よかったわ。じゃあ・・・再来週の水曜ね」
「えっ、ああ、うん・・・」
アヤは僕の質問への回答はくれずに笑顔で手を振りながらそのまま別路線のホームのほうへと消えていった。
自宅に着くとアヤとチナツからLINEでメッセージが届いていることに気付いた。
アヤからのメッセージは今回のデートのお礼と僕とのセックスの感想が書かれていた。長時間にわたり僕に抱かれたことの悦びが伝わってきて読んでいて嬉しくなった。
僕もアヤに返事を書いた。暖かく柔らかで美しいアヤの身体に長時間繋がっていられたことへの悦びと感謝の気持ちを書いた。また早く抱きたい。本気でそう思った。
チナツのメッセージは無視するつもりがうっかり画面をタッチしてしまい、既読がついてしまった。
彼女からのメッセージの内容は旦那との離婚届けを近日中に出しに行く、という内容だった。僕はもちろん返事は書かなかった。
翌日、スマホの画面にアプリ通知らしいメッセージがいくつか入っていた。
仕事の合間に通知を見ると、探偵事務所を経営する親友のマチシバから一時チナツのストーカー対策として借りて先日返したはずのGPS通知だった。
アプリを立ち上げてみると、1つの光点が地図上を動いているのが見えた。
「なんだこれ・・・ああ、ひょっとして僕にGPSを貸したときのIDを変えずに別の客に貸したんだな・・・」
すぐにマチシバに電話で連絡したが出なかった。
仕方なくメールで「GPSの設定が残ったままだぜ」と連絡した。
マチシバからは連絡がなく、僕は仕事をしながら時折興味半分でGPSアプリを見ていた。
すると光点は昼過ぎに動き出し、都内のラブホテル街の一角で止まった。
(ついつい見ちゃうな・・・この光点の主は男だろうか、女だろうか・・・」
GPSが浮気調査で使われていることは明白だった。
僕はGPSの光点がラブホテル街で止まった時間とそこから動き出した時間を見ていた。
(13時にホテルに入って・・・15時半に出たか・・・短い滞在だな)
仕事が終わり、自宅に着いたころようやくマチシバから電話連絡が入った。
「ごめんごめん、ショウちゃん。ご察しのとおり設定ミスっているね。助手にやらせたんだけど・・・しくったな」
「設定かえられないの?」
「いま、地方に来てて事務所のPCいじれないんだよ。助手は週一でしか事務所に来なくって」
「そうなの?」
「悪いけど数日見ないフリしててて。個人情報にふれるから・・・ってもう見ちゃったよな」
「そんなに詳しくは見てないし、住所調べたりしないよ。どうせ不倫調査でしょ」
「ま、そういったところだ・・・ちなみにそのクライアントさんは『別れさせ屋』を使って対応中」
「別れさせ屋・・・」
僕はふとその言葉を聞いて思い出した。チナツのことをマチシバに相談したときに、「別れさせ屋」を使う手段もあると言われたことを。
僕はそこまではしないと言って「別れさせ屋」の提案を断り、GPSを借りたのだ。
「ショウちゃんと同じケースでその奥様が不倫相手の男性にぞっこんだったパターンでな、ついに別れさせ屋の登場となったわけだ」
「このGPSを仕込まれたのは女性なんだね」
「あ、ああ・・・いけね、口が滑った。まあ、聞かなかったってことで」
「ははは、大丈夫・・・えっと、それでこの女性は今その『別れさせ屋』さんと交際中なんだね?」
「そういうこと。今のところ無事に不倫相手とは別れ、奥様の心は『別れさせ屋』にたなびいている」
「ほんとにそんな商売があるんだね・・・」
「ショウちゃんは例の女子と綺麗に別れて例の奥さんとは続いているの」
「僕としては前カノとは綺麗に別れて、本命の奥様とは続いてるつもりなんだけど」
「つもりってなんだよ。その奥様とはもう何回かやってんだろ」
「やってるけど」
「じゃあ、よかったじゃん?その女性の思惑通りでしょ」
「思惑って?」
「その奥様が前カノさんからショウちゃんを略奪したんでしょ」
「略奪・・・」
マチシバからそう言われてやけにしっくりくるものがあった。
アヤは僕をチナツから引きはがそうとしてくれていたのかもしれない・・・と。
翌日も僕はついGPSアプリを見てしまっていた。
光点は都内の一角を指していた。ここがGPSを仕掛けられた既婚女性の自宅だろう。
午前10時過ぎぐらいにその光点は動き出し、電車に乗ると都内の一角で動かなくなった。住所を見ると某タワマンの一室にいるように見えた。
(奥様が・・・『別れさせ屋』の男性の家に行ったのかな・・・)
光点はしばらくの間動かなかった。
奥様が『別れさせ屋』の男性に部屋で抱かれている光景が目に浮かんだ。
(あっ、ああっ・・・ああっ・・・気持ちいいっ、気持ちいいわっ・・・!!)
2日連続でこの二人は逢っていた。
僕も若い頃は毎日のようにセックスをしていた。
この奥様は性欲が旺盛なお年頃なのだろうか・・・
光点を見ているだけで色々な想像をしてしまった。
翌日、都内の仕事先で午前中に会議を終え、オフィスに戻ろうとしたとき、ふとGPSを見ると光点の主が自宅から動き、電車に乗っているのがわかった。
行先はどうやら一昨日に不倫相手とデートをしたラブホテル街だった。
(あれっ・・・近くないか、ここから)
僕が今いる場所からラブホテル街までは1駅か歩いていける距離だった。
(どんな奥様か一目見てみたい・・・)
僕はいけないなと思いつつ、これはマチシバが与えてくれた余興だと思い、その光点の動きを追うことにした。
つづく







