東証が23日に発表した18日時点の3市場信用残で、買い残が前週比4845億円減と昨年来で最大の減少を記録し、先週前半がセリング・クライマックスだったことが改めて確認されたといえよう。
◇<特集>東日本巨大地震を追う―波乱の東京市場(5)=日銀による国債の直接引き受けの可能性
 政府が発行するであろう“復興国債”については、日銀が直接引き受けを行う可能性がある。

 財政法第5条には「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」と規定している。しかし、これには但し書きがあり、「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」となっている。“復興国債”であれば、直接引き受けの可能性は高いのではないか。

 実際、11年度予算の予算総則には、日銀保有国債分については、「財政法第5条但し書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる」としている。

 “復興国債”に対する利払いは政府から日銀に行われ、その分は日銀から国庫納付という形で政府に循環することになるため、実質的な財政負担が発生せずに、安定的な発行が可能になる。

<気をつけるべきは、円高と金利上昇>

 阪神・淡路大震災後にも、為替は円高に推移し、1カ月半程度で円は当時の史上最高値79円75銭まで上昇した。今回の大震災後も再び円高の動きが見られ、17日の東京時間の早朝に76円25銭と史上最高値を更新した。

 18日午前9時、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁による電話会談の結果を受け、米国、カナダ、欧州中央銀行とともに協調介入を実施した。

 円高は企業収益を通じて、災害復興にも大きな重しとなる。今後も政府はG7の協力を得ながら、円高阻止に動くであろう。為替相場の動向には注意が必要だ。

 また、大震災からの復興に向け、民間も資金需要が高まる。さらに、大震災がリスクプレミアムとなり、金利上昇圧力が出るのは必至。すでに、海外市場では円金利が上昇を始めている。

 金利の上昇は、円高と同様に企業の金利負担を増加させるとともに、企業業績を通じて復興への大きな足かせになろう。金利動向にも注意をしておく必要がある。
◇<特集>東日本巨大地震を追う―波乱の東京市場(4)=復興需要は20兆円規模か
 政府が東日本巨大地震の被災地支援、災害復興に向け、動き始めた。16日には各党が一堂に会し、「政府震災対策合同会議」の初会合が実施された。補正予算案編成と被災地支援策の特別立法に向け調整が進められている。

 今回の大震災は、95年に発生した阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3)を上回り、23年の関東大震災(同8.0)をも上回るマグニチュード9.0というわが国観測史上最大規模の地震で、未曽有(みぞう)の被害を及ぼすに至った。

 阪神・淡路大震災では、6343人の死者数を出し、戦後わが国で発生した災害としては最悪の被害をもたらした。直接被害額はおよそ9兆9000億円と推計され、国富の0.8%に想定した。

 今回の大震災は、地震の規模、被害総額とも阪神・淡路大震災をはるかに上回り、復興需要は10兆円を大きく上回り、一部には20兆円規模との予測も出されている。

<復興国債発行、復興税の創設>

 問題は現在の財政状況では、復旧・復興資金をいかに手当てするのかという点だろう。

 税制改正により所得税、相続税の増税を行い、これを財源として実施を目論んでいた子ども手当などについては、税制改正ができない以上、現予算から削減を行い、震災復興資金へ転用するべきだろう。

 ただ、現予算からの歳出削減程度では、必要な復旧・復興資金には遠く及ばず、結果的に資金調達は国債発行に頼らざる得なくなるであろう。13日、菅直人総理と谷垣禎一自民党総裁が会談を行い、「臨時増税を含む時限立法を検討することで合意した」と報道されている。財源不足の解消、国債償還の手当てのために、“復興税”などの名目で増税が行われる可能性は高い。