「電子書籍の未来について…ただし日本の【その1】」に続いて第2弾。
前回では、電子書籍の未来を考えるイベントのルポ的なものを中心に書いたけど、今回はさらに発展的な電子書籍ビジネスの展開を示唆できればと。ちょっとなんか思い当たるところがあって、このブログの文体はもうめんどくさいから口語で書くことにした(笑)。
このブログは理路整然とした文体でしっかりと体系づけて叙述しているわけでもないし、まあ僕のメモとかそういう側面もあるし、見てくれてる人にちょっとした知識や着眼点のソースして読んでもらえればいいし、ってわけで。
はい、んで簡単に電子書籍なるものの技術的な構造はどうなっているかということなのですが、大雑把に分けて2種類あると。
1.単にスキャン
1つは既刊本などの電子化の即効性を重視して、もはや電子書籍と読んでいいかわかりませんが、スキャンPDF(OCR認識済)というもの。
スキャンPDFは流行りの「自炊」というヤツ。本のノドをぶっ壊して1枚の紙にして高速スキャナーでOCRかけて読み取った電子化データですね。OCRの精度はまあまあ上がってきているものの80%ぐらいの精度かな。でも、全文検索もできるので、最低限の画像ではない電子書籍データと言えるかも。
PDFはレイアウトソフトやイラストソフトやワードやエクセルなど、とにかくデータ作成ソフトからPDFに吐き出せば終わりというデータ。これもテキストを拾えるように吐き出せるので全文検索はかけられるわけ。ただし、みなさんもビジネスで使っていらっしゃるレベルのファイルなので「電子書籍」と呼称できるかどうかという感じです。
2.各フォーマットに合わせてプログラミング
もう一つはKindle用だったらTopazというフォーマットに準じて、アプリ型であればそのアプリで機能するフォーマットに準じて、GoogleEbooksだったらオープンソースのEPUB3.0に準じてという風に、どのような配布や販売をするかを考えて最適なフォーマットで構築するということです。
スキャンPDFとは根本的に違う。基本的にHTMLを応用したフォーマットが多いけど、オープンフォーマットとして最も世界標準になると言われるのがEPUBと言われるフォーマット。HTML5+CSS3に準拠したフォーマットで電子書籍として成立させる為の制限も多いが、オープンフォーマットなので誰でも構築することができる。
はい、ここで述べたいのは、1のスキャンPDFはどうでもいい。新規に電子書籍ビジネスに参入していこうとしたら、当然EPUBに準拠したコンテンツ開発の話になってくるわけ。EPUBデータの独自配信はいいと思うけど、独自アプリ開発してそれ専用のクローズフォーマットなんか止めた方がいい。乗り遅れるぜ。
前回のルポで僕が「こりゃあいい!」と思ったのは、業界がとろとろしててかつ現行の出版社には大手を除いてノウハウも知識もビジネスプランも欠如しているという事実。出版社に分があるとしたら、著作権者との交渉など法律知識と編集能力だけ。まあ本来出版社というのはその腕で飯食ってるからね。あと流通経路の確保ってとこか。
InDesign5.5
このInDesign5.5ってのは例のごとしAbobe社のDTPレイアウトソフトだけれど、簡単な工程でEPUBで書き出せる。ということはiPadでもiPhoneでもどっかのサーバにアップすればブラウザで見ることもできる。でもって本来DTP用のソフトだからそのまま印刷屋や製版にデータを入稿できるので紙の本だって作れるわけだ。コンテンツの内容や読ませ方や編集なんかは当然必要だけれども、ポスト工程に関しては単にこのソフトを扱えればそれでいいわけ。

http://tv.adobe.com/jp/watch/cs-55-design-premium-feature-tour/9452/
電子・書籍デザイナー
たぶんこれからこういう職業が出てくる気がする。文章ばっかりの書籍とかはいまでも編集から版下のオペレーション会社に発注するのが多い。昔の写植屋がオペ会社やってることが多いから。デザイナーに発注するまでもない。中面1CのDTPだったら文字組がうまかってInDesign触れる版下会社だったら事足りるからね。それでDTPデザイン会社はもっぱら4Cの販促チラシとかポスター、会社案内、雑誌とかのエディトリアル系、通販カタログの一部分とかそういうもののデザインで食いつないでることが多いわけ。
なんで電子書籍デザイナーが必要かと。まあ単にタグ付きテキストのコードをひたすら打たされるってこともありえるけど、そうじゃなくて要はいままでのInDesignが触れるDTPデザイナーは印刷入稿用のデータとしてデザインレイアウトすることはできるけど、それをEPUBとして電子書籍化する技術や知識は全然ない。いくらInDesignが進んでいってもやっぱり後処理でコードを触って調整したりすることはあるわけで、HTML5とCSS3っていうWebの知識がいる。
逆にWebデザイナーはコード知識はプロだけど、DTPレイアウトやデザインの知識が全然ない。そもそもCMYKとRGBの色の出方の差異とかも理解してないといけないし、ぶっちゃけ紙質とかでも色沈みとか印刷だったらあるしね。要は紙印刷に対応できる必要な知識が欠如している。
その両方の知識とノウハウを持っているエンジニアが、「電子・書籍デザイナー」だと思う。わざと電子と書籍の間に中黒打ってみたけど、そういうエンジニア必要でしょ。そういう人材はこれから活躍していけると思う。
Web屋はどうする!?
さて、電子書籍ビジネスへの参入ってことだけど、Web屋はもともとHTML5+CSS3とかJavascriptとかなんか日常茶飯事の常識的プログラム言語だから、別にInDesignなんか使わなくてもEPUBデータ生成できちゃうよね。でも一応紙の本も電子書籍のプレミア版として用意する将来像を描くならInDesign使った方がいい。
よくネットの雑誌ってあるじゃない。雑誌っていうかまあ情報がまとまってコンテンツを形成しているようなコーナーっていうか。そういうのはどんどんEPUB化してWebと同じように無料で配布してしまえばいい。Web閲覧では60%閲覧可能ぐらいにして電子雑誌(EPUB)で100%載っているとかにするのもいいね。無料だけど広告掲載してやりゃいいわけ。ダウンロード数とかの電子書籍に関するトラフィックデータ収集できるからマーケティングデータの吸い上げにもなる。広告料もEPUB生成コストとイコールになる程度にして、とにかく電子雑誌にユーザーを慣れさせる。
そんな感じでコンテンツ制作ノウハウとEPUBでの配布とトラフィック分析のノウハウが溜まって来たら、いろんなビジネス展開が考えられてくるでしょ。思うにWebでの対談とか編集記事とかライティング記事とかに媒体側が著作権者にどんぐらいの金払ってやってるのかってのはCaseByCaseだけど、電子「書籍」ですっていうとなんか色々リーガルことがめんどくさそうだけど、単に電子コンテンツってことでうまいことサインさせてやれば当面は誰も訴訟とかまでやらないんじゃないかな。まあそこは担当弁護士とチェックしてみて。
Web屋はプログラミングのプロだからリッチなEPUBを作れるよね。コンテンツ内容は着眼点とか切り口とか編集力とか読者が喜ぶものじゃなきゃ意味ないけどね。でも下請けで単にオーダーされて一所懸命安い報酬でしこしこWebデザインとかしてるのもそりゃカッコいいかもだけど、やっぱりこれからは自分たちのドメイン商品を発信していくことが重要だと思う。皆アプリ開発とかHTML5+CSS3のリッチなブラウザベースのクラウドソフトとかも考えるだろうけど、その中に電子書籍も含めていいと思うね。ばりばりのデベロッパー組織だったらアレだけど、HP制作会社クラスだったら技術的にはInDesign触れるだけでいいから初動が早いわ。
Webでの情報コンテンツ⇒電子(EPUB)コンテンツ⇒プレミア感として紙の本
という流れでやるべき。EPUBコンテンツが好評だったら追加特集とか入れてプレミア感出して紙の本に行けばよい。コンテンツ作る自信がなかったら、出版社の編集マンとかを引き抜くのよ。
デザイン会社はどうする!?
これからのデザイン会社や版下会社は、InDesign5.5以上を使ってEPUB3.0に対応したレイアウトやタグ付けやアンカリングをデバイスに依存しない形で書き出せる技術を身につけるべき。かつAdobe Digital Publishing Suiteでのホスティングも行えれば、自社コンテンツとしてAppleStoreやAndroidStore、google eBooksへの販売・管理まで行えるチャンスがある。
市場が拡大する前に高い技術力を醸成できれば、DTPデザイン費を削られている今日において高い作業費を請求できる可能性がある。そのために必要なのは単なる版下(紙)でのDTP技術ではなく、HTML5+CSS3の技術力つまりWeb開発の技術力が結びつかないとダメ。
当然Adobe社のソフトウェアに依存しなくてもHTML5+CSS3の技術力があればePubコンテンツは容易に生成できる。でも印刷をも考えた場合は入稿データとしても機能し、PDFx-1入稿も可能で、かつEPUBも生成できるため現状の市場を鑑みるとInDesignを導入しない手はないだろう。
それができれば版下として生き残っていく寿命がはるかに伸びるに違いない。いまのところブルーオーシャン戦略とも言えるかも。出版や印刷業界全体が電子書籍ビジネスを本格的に進めていくことは必至のため、取引先も出版社から印刷会社からクライアント直接取引まで幅の広い顧客を手に入れるチャンスだね。
また自社でeBookの開発技術を持つことになるため、編集ノウハウや著作権法やDMRの知識を持つスタッフを雇用できれば、単なる下請け制作会社に甘んじることなく、自社発信のコンテンツビジネスを展開することも可能だ。
業界構造の中で自らがエンドユーザーに一番近いポジションを得ることもでき、出版社でもあり、自社コンテンツだけでなく他社EPUB商品のSPを展開して各ストアーにユーザーを飛ばしたり自ら直接販売するなどの小売機能も有することもでき、「完全なる下請けからの脱却」を図ることができる可能性がある。そして紙のコンテンツが必要なときだけ、例えば今まで上部構造にあった印刷会社などに発注者として君臨できるわけだ。
出版社はどうする!?
寝ててください(笑)。いやいや、いくらでもやりようはあるよね。だって出版ノウハウ全部握ってるんだから。ただいままでのように書店などの小売りに販売やSPを完全に依存した体質だと未来はない。自らEPUB生成できるデザイン会社と組むとかしてデータ版権をしっかり握っていく。またWebマーケティングを勉強して独自配信やすでにブログなどで知名度の高い人をターゲットに電子書籍をつくってそのブログに紐づけたマーケティングを行うなど自発的な取り組みやってかないとね。
どういう参入経路であれDRMの問題とか著作権法の絡みとか、EPUBデータ化のコストや管理方法の問題とかややこしい問題がいっぱいあるけれども、アップorアウトじゃないけど、ゴーorアウトであることは間違いないでしょ。だって野村総合研究所の予測によると、国内の電子書籍市場はハード、コンテンツともに高い成長率で推移し、2015年末には2400億円規模のコンテンツ市場を形成する見通しだっていう市場規模なんだから。
そんなわけで、長々書きましたが最後までお読みいただきありがとうございます。

