「えほんdeわっしょい10・えほんマルシェ」(有田川町地域交流センターALEC)その2/最終回 | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

 11月23日(月)、和歌山県 有田川町地域交流センターALECで、絵本イベント「えほんdeわっしょい10 ・ えほんマルシェ」が開催されました。私もスペシャルゲスト(絵本作家)として、イベントに招待されました。

 朝9時半過ぎ、招待作家は貸切の専用バスで、いよいよイベント会場に到着します。今日は小雨まじりの曇り空です。はたしてお客様は来ているでしょうか・・・。
 会場の近くに来ると車が渋滞しています。イベント会場に続く道路が車で一杯なのです。駐車場は満車で、臨時の駐車場もぎゅうぎゅうだといいます。会場は、数千人はいるかと思われる程のたくさんのお客様でにぎわっていました。 !(^^)!
 バスで乗りつけると、入口に並んでいる多くのお客様の視線がいっせいにそそがれました。まるでプロサッカー選手にでもなった気分です。私達は裏口から休憩室に案内されました。
 イベントの中心となる作家以外のゲスト作家の私達は、当日何をするのか、ほとんど把握していません。「何をやらされるのかな~」と少々不安です。

 10時過ぎ、「宮本えつよし さん・絵本作家さんと おばけファッションショー」が始まりました。このイベントは、絵本作家の宮本えつよし さんが企画・進行され、面白おかしい関西弁トークがさく裂します。子供よりむしろ私達大人が爆笑しています。
 子供達と一緒に、カラフルなビニール袋やビニールテープを使って、お化けの衣装を作りました。生来、ものづくりの大好きな私は、童心にかえって一生懸命作りました。私は自身の描いた絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)の主人公の女の子・チャンファメイに扮する事にしました。中国少数民族トン族の紺色の衣装を仕立て、頭にはぐるぐるに巻いた髪の毛を模した被り物を装着(決してヅラではありません ( ゚Д゚) )。後で思うと、肝心のスカートを作るのを忘れていました。オカマ感が出ないわけだ・・・。


えほんdeわっしょい
「宮本えつよし さん・絵本作家さんと おばけファッションショー」 こんな格好で全く説得力がないが、子供のファッションを「かわいいね~!」と講評する私。


えほんdeわっしょい
「宮本えつよし さん・絵本作家さんと おばけファッションショー」 左から、しばはら・ち さん、宮本えつよし さん、私、加納果林さん、星野イクミさん、うさ さん、かんべあやこ さん。それぞれ、こだわりのテーマがあるようです。町田尚子さん、山本 孝さんは「お化け屋敷」で奮闘中。


えほんdeわっしょい

「宮本えつよし さん・絵本作家さんと おばけファッションショー」 左から、しばはら・ち さん、宮本えつよし さん、私、加納果林さん、星野イクミさん、うさ さん、かんべあやこ さん。 「ママ!変な大人たちがいるよ~!!」 (;´Д`)


 その後、昼食の弁当をかきこみ、すぐに「有名作家さん?ガラスライブペイント」に登場。私は、またもや拙作絵本の主人公・チャンファメイを、ガラスに大きく描きました。ガラス面はすべる上、普段使用しないマジックペン・ポスカでのぶっつけ本番での描写は結構難しく、上手く描けません。これはこれで慣れがいるな、と思いました。チャンファメイの周りには、私が小学生の頃からよく描いて来た様々なキャラクターイラストを描き込みました。見に来た子供達のリクエストにも応えて描きます。チベットの犬、ネコ、ウサギ、キツネ、タヌキ、ブタ、パンダ、ネズミ、イモムシ、ミノムシ、カエル、タコ、イカ、ブドウ・・・etc. 実は私は、渋い日本画だけではなく、可愛らしいイラストも変幻自在に描けるのです。 天才だ~ (?_?) 
 ある子供が面白い課題を出してくれました。・・・・私「何を描いてほしい、何でも描けるよ~。」 男の子「横向きのおじいさん。」 私「 ( ゚Д゚) (なぜ横向きなんや)・・・・、よし来た。」 子供のセンスは本当に面白いね。横向きのおじいさん、等なかなか出て来ない発想です。
 ガラスペイントの途中、大阪市立工芸高校美術科の後輩で、今、日展等に出品している和歌山在住の日本画家の友人も来てくれました。制作中であまり話も出来ずに残念。展覧会やイベントでは、懐かしい恩師や旧友に出会える事もあります。
 1時間位、ガラスペイントを楽しみ、大きなガラス面一杯を絵で埋めつくしました。


えほんdeわっしょい
「ガラスライブペイント」


えほんdeわっしょい
「ガラスライブペイント」 絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(福音館書店こどものとも)より、主人公の女の子・チャンファメイを描きました。


えほんdeわっしょい

「ながいかみのむすめチャンファメイ」と、様々な動物キャラクターたち  画:後藤 仁 



 有田川町絵本コンクール受賞者6名の紹介と絵本読み聞かせの後、午後1時から、メインイベント「宮西達也、真珠まりこ トークdeわっしょい」が始まりました。ところが、映写機械のトラブルで映像が映りません。宮西さんが機転をきかして、私達ゲスト作家を壇上に上げて色々な質問をしていき、時間をかせぎました。後で思うと、これがなかったら、お客様は私達ゲスト作家について、ほとんど何者か分からないままだったのではないでしょうか・・・。
 しばらくすると映写機械も直りました。宮西さんのトークは絶好調で、ユニークな話術がとびきり冴えていました。絵本作家は芸達者な方が多いですね。映写機械トラブルの影響で、宮西さんの絵本朗読が一話削られ、私の朗読出演の時間はなくなったようです。最後には全員で「もったいないばあさん音頭」を踊って終了しました。
 私の作画絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』を元に考案されたというワークショップ企画、「チャンファメイの髪飾りを作ろう」のコーナーでは、全ての材料が売り切れたそうです。
 私は「人物画(美人画)」をメインテーマに描いていますので、機会があれば人の動作をスケッチします。ただ、今の時代なかなか他人を描くのは難しいので、こんな時に描いておきたいものです。ワークショップで絵を描く子供達や、宮本えつよし さんのサイン風景等を軽くスケッチしていると、もう帰る時間が来たようです。 

 この様にして、とても楽しい時間を過ごせ、思い出深い体験となりました。




えほんdeわっしょい
「宮西達也、真珠まりこ トークdeわっしょい」 宮西達也さんのトークが冴えます。会場は異様なほど、ぎっしりの人・人・人です。


えほんdeわっしょい
「宮西達也、真珠まりこ トークdeわっしょい」 真珠まりこ さん、うさ さん、かんべあやこ さん、しばはら・ち さんの絵本朗読。


えほんdeわっしょい
「宮西達也、真珠まりこ トークdeわっしょい」 宮西達也さん、町田尚子さん、山本 孝さん、宮本えつよし さんの絵本朗読。


えほんdeわっしょい

「宮西達也、真珠まりこ トークdeわっしょい」 もったいないばあさん音頭


 イベント終了後、専用バスで駅まで送迎していただきました。会場を出る時、バスに向かって何人かのお客様が手を振ってくれました。多くの皆様のおかげで、私達、絵本画家や日本画家が生かされているのだと、改めて感謝の念を抱きました。帰路の間、ほどよい疲労感と、やんわりとした幸福感に包まれていました。
 JR藤並駅ちいさな駅美術館で、絵本作家の大先輩・和歌山静子さんの「和歌山静子 原画展」が開催されていましたので、皆で見学しました。和歌山さんの描く人物キャラクターはとても印象的でインパクトがあります。

 15:49発、特急くろしお24号で新大阪に向かいます。車内では宮本えつよし さんの隣の席になり、よもやま話をしている内に、あっと言う間に新大阪駅です。私は乗り継ぎ時間を30分取っていたので、有田川町が用意された10分しか余裕のないチケットの宮本えつよし さん、真珠まりこ さん、編集者の皆さんと、ここでお別れしました。乗り物の乗り継ぎにはゆとり時間が必要で、ゆとりのないスケジュール組みは大失敗の元ですが、旅慣れた私には旅のノウハウがあるのです。
 新大阪駅を少しぶらつき駅弁を買い込み、17:50発 新幹線のぞみ248号で東京に帰ります。今では、もうすっかり東京人になってしまいました。本当は田舎で暮らしながら制作三昧の生活をおくりたい私ですが、当面その夢はかなえられそうにもありません・・・。

                   *

 今回の絵本イベントでは多くの発見や出会いもあり、とても有意義で充実した時間となり、参加して誠に良かったと感じています。全体としては、この絵本イベント「えほんdeわっしょい10」は大成功と言えるでしょう。有田川町の「絵本」に対する情熱・意気込みも相当高いものを感じます。この様な絵本関連の展示・イベントが、今後ますます公共団体・民間で活発になっていく事を願っています。
 ただ一つ、ご来客の皆様が相当多かったにもかかわらず、意外なほど私の「絵本」の売り上げが少なかった点が疑問です。今回は多くの絵本作家が参加しており、メイン作家ではない私ですので仕方ない部分もあるのでしょう。しかし、「絵本」が売れれば良いというものではないのですが、その作家の「絵本」の魅力を人々に広めて伝えていくのも、絵本イベントでの大きな目的であるはずです。絵本作家は「絵本」が世に広まらなければ、仕事も出来ずに、せっかく素晴らしい表現技術を持っていたとしても、作品を描く事はもとより、生きていく事すら難しくなるのです。
 つまりは、今回の企画では、メイン作家以外のゲスト作家一人一人の「絵本」の魅力を伝える何かしらの企画が足りなかったのではないでしょうか。「何か知らないが絵本作家がたくさん来て、賑やかなイベントがあったな・・・。」ではなく、「普段なかなか会えない絵本作家に出会えて、良い絵本に出会えたな・・・。」という感想が理想です。それが公立図書館・公共団体が主催する絵本イベントにふさわしい、あるべき姿なのではないでしょうか。ただ派手に人を集めて、絵本以外の利潤を追求するイベントなら、営利企業にまかせておけば良いのです。

 イベントでは何から何までお世話になりながら、こんな疑念を投げかけるのも道義に反しているかも知れませんが、今後、更なる絵本文化・美術文化の発展・向上の為にも提言しておきたいと思います。
 
  日本画家・絵本画家 後藤 仁