「浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展、山あげ祭(那須)」旅行 その1 | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。



浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 「浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展」(いわむらかずお絵本の丘美術館) リーフレット






いわむらかずお絵本の丘美術館 公式ホームページ  http://ehonnooka.com/?p=5961



 7月23日~24日の2日間、日本児童出版美術家連盟(童美連)の有志による、「浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展」(いわむらかずお絵本の丘美術館、栃木県那須郡那珂川町)と、「山あげ祭」(那須烏山市)への旅行に参加しました。
 23日。朝10時に東京駅で待ち合わせです。浜田桂子さんと小泉るみ子さんと古川陽子さん(元童美連事務局)と私の4人で東北新幹線やまびこ133号に乗り込みます。普段の取材旅行ではほぼ一人旅なのですが、久しぶりの大人数での新幹線旅行にワクワクします。といっても、皆さんは大ベテランの絵本作家ばかりで、私一人が新米絵本画家で肩身は狭いはずですが、そこは取材旅行と絵に関しては異様な度胸を発揮する変人・後藤ですので気にはしません。
 途中、大宮駅から高木さんご さんが合流しました。今回の旅行は全て高木さんが企画されたものですが、練りに練った内容に頭が下がります。
 車内で絵本談議等をしているうちに、10時49分、宇都宮駅に到着。あっと言う間です。宇都宮では、昼食の宇都宮餃子を食べました。駅前の餃天堂という店では、モチモチした餃子の皮が特長だそうです。水餃子の皮にはホウレンソウが練り込まれています。私は焼き餃子、水餃子、ライスをペロリと平らげました。

浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 東北新幹線 やまびこ133号 (宇都宮駅)


浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 餃天堂の宇都宮餃子。美味しいネ。 !(^^)!


 宇都宮駅からは「ホテル美玉の湯」の車で、「いわむらかずお絵本の丘美術館」まで送迎していただきました。最初はバスとタクシーを乗り継いで行く予定だったので助かりました。

 「いわむらかずお絵本の丘美術館」に到着です。この美術館には前々から行ってみたかったのですが、なかなか機会がなかったのです。美術館の入口付近には、車で来られた藤本四郎さんが先に待っておられました。美術館入口でいわむらかずお さんが出迎えてくれました。童美連の総会・懇親会で初めてお会いした以来です。いわむらかずお さんは東京藝術大学工芸科を卒業されておられるので、私にとっては絵本画家の大先輩であるとともに、大学の先輩でもあるのです。
 美術館は予想以上に大きな建物で、木造の内部構造が優しい感じをかもし出しています。いわむらかずお さんの美術館建設の経緯等の解説を受けてから、作品を鑑賞しました。 その途中、仕事の都合で遅れた池田あきこ さんが合流しました。最初はバイクで来られる予定だったのですが、天候が悪くて電車に変更したという事です。 

 いわむらかずお さんと浜田桂子さんの家族写真が交互に並べられ、その生い立ちの対比の面白さが味わえます。原画展示では、まずは、いわむらかずお さんの作品の構図色彩の妙に驚きました。絵本を拝見すると平面的な絵に見えていたのですが、原画では画面に空気感があり奥行きが感じられるのです。色彩の移り変わりとボケ味も絶妙で、日本画に通じるものも感じました。絵本を見る限り、日本画家の私等からすると、デッサン的にはやや弱い感じの作品だな・・・という今までの感想でしたが、原画を見るとその確かなデッサン力が読み取れました。やはり原画を見ないと分からないものだと再認識しました。印刷では、いわむらかずお さんの極めてデリケートな色彩と線描が再現しきれずに、かなり殺されてしまっているのです。それでも、その魅力は読者に十分伝わっているのだからすごいものです。『14ひきのシリーズ』(童心社)の原画も緻密で素晴らしいのですが、『とっくんトラックうみへぶぶー』(ひさかたチャイルド)の絶妙な構図と海の色彩変化の美しさも感動ものです。また、木炭で描かれた白黒の作品も、確かなデッサン力を活かした即興性が面白い作品です。パステル・インク・水彩絵具・木炭・鉛筆等の多彩な画材を使いこなされていました。
 浜田桂子さんの作品は、その処女作である『あかちゃんのうまれたひ』(福音館書店)の原画を拝見できたのは嬉しかったです。作家にとって初めての作品(私の場合、『ながいかみのむすめチャンファメイ』〔福音館書店こどものとも〕にあたります。)には、特別な思い入れがあるものです。絵本の世界に足を踏み入れたばかりの私は、特に作家の初期作品に関心が高いのです。浜田さんは、主にアクリル絵具で描かれるそうですが、絵本で見る以上に強くて高彩度の色彩なのだと分かりました。背景にもマチエールの凹凸があり、その勢いのある筆致はやはり原画でないと味わえません。また、浜田桂子さんの作品には、子供達に対する愛情と共に、社会に対する深いメッセージが込められている所が重要です。
 素晴らしい作品の数々に感動しながら、いわむらかずお さんと浜田桂子さんに愚問をぶつけては丁寧なご説明をいただきながら、誠に良い勉強になりました。

浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 「いわむらかずお絵本の丘美術館」 ロビーにて。地元でとれた美味しいトウモロコシをいただきました。 (^◇^)


浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展

 「いわむらかずお絵本の丘美術館」 庭にて。自然に囲まれた素晴らしい環境です。花々も美しく咲いています。 (^^♪ 左から、藤本四郎さん、古川陽子さん、浜田桂子さん、私、高木さんご さん、小泉るみ子さん、池田あきこ さん、いわむらかずお さん。

 その後、ロビーで地産の甘くて美味しいトウモロコシをいただき、遠景の望める自然の豊かな庭を通り、アトリエへ伺いました。通常、作家は他人にアトリエを見られるのを嫌がる場合も多いので、これは貴重な体験です。

 ・・・かつて、私の師である日本画家の後藤純男先生(日本美術院同人理事、元東京藝術大学教授)の家へ頻繁に出入りしていた頃でも、アトリエ部屋だけは入れてもらえませんでした。先生のアトリエは、私の知る限りでも日本各地(北海道から沖縄まで)の5カ所にありましたが、私はその内の4カ所に伺っています。随分前、北海道の先生の家へ伺った時、偶然、中国の西安美術学院(大学)の教授達が見えられており、私も一緒にアトリエに入る事ができた時がありました。120畳という巨大なアトリエには、横10m以上もあろうかという巨大な横長の日本画が2枚(桜と富士山の絵)置いてあり圧倒されました。壁際には、日本画の絵具瓶が日本画画材店より多いくらい置いてありました。その時、先生の箔の押し方の実演を見れて感動しました。今は、先生は大病をされた後、北海道のアトリエにこもられる様になったとかで、この10年近くお会いしていないのが残念です・・・。

 いわむらかずお さんのアトリエは絵本作家らしく、明るい日差しが入り、実に機能的な造りになっていました。机が4カ所位に分かれていて、用途に応じて使い分けるそうです。画材の鉛筆・色鉛筆・筆や資料類が無数にあって、その端々から14ひきのネズミ達が今にも顔を出しそうな雰囲気です。木のぬくもりが感じられる、とても居心地の良いアトリエでした。

浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 いわむらかずお さんのアトリエ。(一般的には非公開です。)


 その後、今夜の宿、「ホテル美玉の湯」に向かいました。この辺りで最も良さそうな宿を高木さんご さんが探してくれました。宿の温泉は、湯が熱めでヌルっとしています。藤本四郎さんと高木さんご さんと一緒に湯につかり、まさに裸の付き合いです。極楽、極楽~。
 夕食には、いわむらかずお さんも参加して下さり、藤本四郎さん、浜田桂子さん、小泉るみ子さん、池田あきこ さん、高木さんご さん、古川陽子さんと私で、和やかな歓談の中、楽しい一時となりました。食事も美味しかったです。藤本四郎さんはこの後に用事があるらしく、食事の途中でお先に車で東京に帰られました。(もちろん、ノンアルコールビールしか飲まれていません。)

浜田桂子・いわむらかずお絵本原画展
 ホテル美玉の湯(美術館から歩いて行ける距離にあります。) 美味しい食事に乾杯。 ( ^^) _U~~ 


 食事の後も部屋に集まり、残った皆で絵本談議に花を咲かせました。普段ではなかなか聞く事のできない深い絵本の話等が次々に飛び交い興味は尽きません。夜11時頃、いわむらかずお さんの歌も飛び出した辺りでお開きとなりました。いわむらかずお さんが部屋を出られる際、「こらからの絵本を頼むよ。」との言葉とともに強い握手をしていただき、本当に感動するとともに、心底「頑張っていかなければ。」との思いを強くしました。その後も布団の中で高木さんご さんと、モゴモゴよもやま話をしながら、夜1時頃眠りにつきました。といっても、アルコールが入ると決まって寝付けなくなる体質の私は、今日の出来事を振り返りながら、一人4時頃まで起きていました・・・。

 明日は、那須烏山市の「山あげ祭」を見物します。「山あげ祭」は以前テレビで見た事があるのですが、一度は実物を見てみたいと考えていた祭りの一つです。元来、日本の伝統文化や祭りの大好きな私は、楽しみで仕方ありません。その模様は次回ご掲載いたします。

  日本画家・絵本画家 後藤 仁