老人〜レボリューションズ

食事と言えば、

パスタか、トーストだった。


今日はハムとチーズのホットサンドだった。

俺はコーヒーでそれを流し込み、

自室で、出社までの時間をくつろぐつもりだった。


車のロードノイズ。

ドアの開け閉めの音。

自転車のブレーキ音。

PCから流れるキャロルキング。


穏やかな一日になりそうだ。



しばらくして音楽が止むと、



しばしの静寂が訪れ、

明瞭に、

外から人の話し声が聞こえてきた。


しわがれて、

くぐもった、

しかし、

特徴のある声。

俺は声に耳を傾けながら、

コーヒーを啜る。

何故かコーヒーが、とんでもなく不味く感じられた。


外で聞こえる人声は、


老人の声だった。


生気のない声。

隣の家人と立ち話でもしているのだろうか？

話している内容はわからない。

老人の声は低く、そのせいか、よく響く。


老人が、いつ移動し、

俺の家に来るか、

気が気ではなかった。


いったいいつまで、外で立ち話しをているのか。


俺のことを話しているかもしれないと、

俺は被害妄想的な発想で、

その会話を想像した。


「お宅の隣のキチガイ野郎はとんでもねえやつだ。ビール一本だぜ」

「ああ、ひどいですね。せめて三本は欲しいですねえ」


俺は落ち着かずに、老人の不快な声の振動を聞いていた。


早く家に帰れ。


頼むよ。


外で立ち話なんかせずに、家でやれよ。


公害なんだよ。

あんたの存在は。



俺は次第に苛立ち始め、

どうにもならなくなった。



声が止んだかと思うと、

また聞こえた。


そして、

俺はとんでもないことに気付く。

そう。

知らず知らずのうちに、

老人の声を待っていたのだ。




～おおお～～～い～～いるかあ～～～





ちくしょうめ！！


俺は玄関を開けた。


そこには誰もいなかった。


幻聴だった。



部屋に戻ると、

あいかわらず老人の声が聞こえた。




胸がむかつく、

吐き気がした。

多世界解釈

生と死。

失敗と成功。


そして、


極楽と地獄。


それらはすべて、同時に存在し、

同時に死滅する？


僕らはどっち側か？


頭の中の世界は実在する。


夢に描いた自分さ。


それは確かに存在するよね？



世界は無限に分岐し、

世界は常に選択を強いられる。



自己の存在自体が重ね合わせ？



シュレーディンガーの猫のように。



誰かが僕らを観察する。



すべては観察者の意思？


それとも、


僕ら自身が観察者か。



パンか。

パスタか。

飯か。


僕はパスタを選択する。




新たな世界へようこそ。



僕は夢に、


君は地獄に。

三交代勤務

金にしか興味のない人間には、どこか病的なところがある。
同じことが、利益のみを追求する会社にも言える。
(米保険会社CEO: Rechard Hayen)　
　　　　　　　
ツイッター名言botより転載





A番。

B番。

C番。


つまらんな。

どうせなら、


アルファー、

ブラボー、

チャーリー、

と表記した方がよくない？


三交代勤務。


それは機械を中心に、

人間はそれに隷属するシステムだった。


生産量は機械の性能ですべて決まった。


俺達労働者は、その機械が一秒たりとも停まらないように、


材料を機械に仕掛けたり、

データを抜き出したり、

時には自分の休憩時間を削って、

機械のお守りをしているだけ。


爪の先ほどのクリエイティビティーも無く、


ただ盲目的に、

奴隷的に、


決まった時間に職場へ行き、

決まったことを、

執り行う。


俺達が祝日も会社に出て来て、

その分の埋め合わせとしての、

連休までブン捕られて、

会社側はいったい幾ら利益を上げるのだろうか。



一緒に入社した若者が言っていた。


「俺は行政書士と司法書士を目指します。もう、人に使われるのは御免だ」


そう。

夢は大きく持つべきだ。




そして、

最後まで諦めないことだ。


単純労働は人の希望と、

活力を奪い取り、

それこそ、奴隷に仕立て上げる。


そうなるまえに、

何か手だてを。


考えられる頭のあるうちに。


俺はその若者が、

スーツを着て顧客の相談に応じる姿を想像してみた。


耳にピアス。

茶髪に、細い眉毛。


俺は首を振り、


現実に戻った。




では、


今日もがんばって、

働こう。


そして、


緩慢な死を。