日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -206ページ目

どうするの?あれ

「どうするんですか」

「俺は無理、かな。やっぱり買うんですか」

「一応予約はしたんですが、発売日に手に入るかどうか微妙なところですよ」

俺は眩しいような視線で同僚を見た。

彼はこの日の為に金を溜め込んだという。

確か五万円以上はするのではなかったか。

たとえ金が確保できたとしても、俺には買えないだろう。

ゲームをする人間は、向上心がない。


以前に、妻が俺に言った事を思い出した。


プレイステーション3。

それでも、欲しいという気持ちは消えない。

いい歳である。

そろそろゲームは卒業するしかないか。

まあ、ゲームをする時間もないし場所もないのだが。

吐き気

よい大学に入る為に一生懸命受験勉強に励み、就職活動でしのぎを削り、会社に入ってからも、必死で働いている。

それなのにあんたは。


そう妻が言った。

妻の友人達はみなそうなのだという。


向上心のない奴と一緒になったと皆に笑われるだろうとまで言った。


もちろん、俺のことである。


軽自動車に乗って満足している男。


つまりは向上心のない奴と言う訳だ。


反論など出来なかった。

向上心もあり、日々努力を欠かさないなどと言ってみた所で、現状を見る限り説得力のかけらもないことだろう。

口でいくら努力していると言った所で、意味はなかった。



考えてみると、欲というものが無くなった気がする。

欲する物が無いというのは、望む物が何一つ手に入らないための、ただの諦めなのか。

それは自分が無能だという事ではないのか。


ひとしきり考えていると、腹の奥が震えた。

吐き気がしてくる。


それは外に対してではなく、自分に対してだった。

外出

家族三人である所へ向かった。

そこにはドリンクバーが設置されていて、しかも無料だった。

俺達家族はぶらぶらと買い物をして、喉を潤す為にそこを目指したのだった。


車の中で妻が言った。

「運転中によそ見ばかりで本当に危ないんだから。何度言ったらわかるのよ」

ほんの一瞬、道路脇の建物を見た。

当然頭もそちらに向いたのだろう。

危ない、というほどではなかったが、よそ見にかわりはなかった。

俺はうるさいという思いを微かに込めて、わかってるよと答えた。

「本当にわかってるの。あんたは平気で後ろ見たりしてるじゃない」

確かに、時々娘の様子をみるために、後部座席を覗いたりするのだった。


「よく、わかりました」


俺が言うと、妻もそれ以上何も言わなかった。



すぐに店に着いた。


俺達家族はドリンクバーを楽しみ、ちゃんと買い物もして、その店を後にした。