日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -203ページ目

娘と夕食

カレーを食べながら娘が唐突に言った。

「体の中で、生きる」

俺ははっとした。

娘の言葉は、好きな映画のワンシーンを思い起こさせたからだ。

娘は何をいいたかったのか。

ただの言葉の羅列なのか。

そうだとしても、3歳の子供のいうことにしては、洒落ている。




~林檎はいずれ腐ってなくなる。しかしこうすることで、体の中で生き続ける。~

映画の中で、死期迫る青年が言った言葉である。


記憶の中で生き続ける。

思い出として。


そんな意味なのだろうか。

掃除

起床し、山と詰まれた汚れた皿を洗った。

妻が娘を幼稚園へ送り帰宅する。

「掃除機ぐらいかけろ」

今日、最初に妻から投げつけられた言葉だった。






もう、別れよう。



喉元まで出かかった言葉を、俺は呑み込んだ。


休み時間の過ごし方

社食の窓から階下を覗いた。

トレーニングウエア姿で、息を弾ませている男の姿が目にとまった。

屈み込み、膝に両手をついている。

いつまでも、肩が上下していたが、暫くすると呼吸も整ったのか、ストレッチを始めた。

簡単に足だけ伸ばすと、すぐに走り出した。

ひどく疲れた気分で飯を食っていた俺は、驚きとともに男を目で追い続けた。

男はすぐに正門を出、外に走り出ていった。

男は飯をいつ食ったのか。

食わずに走り、そのまま仕事なのかもしれなかった。

どう考えても、飯を食う暇はなさそうだった。


いつも昼休みは、飯の後読書だった。

近頃では、本を読むことさえしていない。

くだらないと思いながら、昼のバラエティー番組を、ただ眺めてしまう。


260円のランチを腹に詰め込み、社食を後にした。

休暇室。

本でも読もうとページを開くと、同僚がとなりに座った。

一言、言葉を交わす。

すると、いつまでも話は途切れなかった。

話が終わり、俺は言葉を返した。

やはり、いつまでも話は続いた。

俺は諦めと共に、本のページを綴じた。