第19期自治政策講座in東京(講義まとめ) | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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第19期自治政策講座in東京


第1講義「問われる教育行政」

 西川純 上越教育大学教授

【5%の子供のアクティブラーニングと95%の子供のアクティブラーニング】

 

・アクティブラーニングとは『学び合い』のこと

  私の話は、教育界の権威に毛嫌いされている。彼らの権威の根源、つまり今までの記憶力中心の学習方法を否定する事になるから。

  『学び合い』が何故必要か。日本は中進国のトップランナーであって、先進国ではない。所謂「ものづくりの国」とはそういうもので、「マニュアル人間」や「丸暗記児童」を量産することで先進国をキャッチアップしてきた。そして今、中国・インド等の後進国の追い上げを受け、ものづくりでは食えない時代がやってきた。だから日本は今後、先進国の仲間入りをしなければならない。先進国の子供はどう育てられるのか?それが5%のアクティブラーニング。つまり新しい発明やビジネスモデルを構築することで、世界に貢献する、そんな5%の才能を伸ばしていく・・・そんな教育。

IVリーグのような大学を日本に

  先進国に求められるのは、新たなものを作り出す能力。学習現場では平等である必要はない。必要なのは公正さ。進める子はどんどん進ませる。トップ5%の子供たちが自ら学ぶ事を自覚する教育。そして、自分が理解したことを他人に理解させる能力を育てる。自分だけ点を取ればいい・・・そんな子が優遇されるのは「公正」ではない。だから『学び合い』が必要になる。人に教えて、初めて自分の知識となる。そんなIVリーグのような大学教育が日本にも必要だと文科省は気づいた。

  そこでは狭くても深い知識が求められる。文部科学省が目指すスーパーグローバル大学創生支援事業。教授を凌ぐ議論の出来る学生・・・指定されたトップ13大学が求めるのはそういう人材。だから受験方法も変わらざるを得ない。そしてついに昨年から東大の入試が変わった。

 

・今後、教育界は上から変わる

  東大が変わり、指定された日本のトップ13大学の入試問題が変われば、遠くない時期に全国のトップ高校の教育が変わる。「マニュアル人間」はトップ高校から排除されるようになる。

  トップ高校が変われば、それは今後全国の高校に波及する。そうなると中学校も変わっていく。「学習指導要領」も変わる。その時、文科省の目指すものが見えてくる。

  小中学校へのアクティブラーニングの導入。しかし、教育現場は「平等」にこだわり続ける。成功体験は中々捨てられない。

 

「この5%のアクティブラーニングを95%のアクティブラーニングにしましょう、というのが今日の講義のキモ」

 

 今、浪人する高校生は3%(受験戦争の時代の十分の一)。

  大学全入時代。しかし、大卒の学生の本当の就職率は70%(実は浪人率は変わっていない)  学生支援機構(育英会)の滞納率の発表によって本当の就職率が判る。

  卒業後、何時の間にか返済できずに、年収170万円以下の非正規雇用になる人が30から40%存在する。(大学が発表している就職率はウソである。近年では3年で3割の大卒者が離職する。3年ももたない・・・そんな表面的な「就職率」に意味があるのか)

 今後の日本企業の平均寿命はどんどん短くなる。例えば「10年倒産率」は20%、50年でほぼすべての企業は入れ替わる。今後は離職と再就職が当たり前の時代になる。必要なのはノウハウではなくノウフーやノウホワイ。

 

・必要なのはサバイバル能力。それが95%のアクティブラーニング

  学び合い、教え合いを進めようというならば、それを「つながり」「友達ネットワーク」へと一歩進めるべき。5%の天才候補たちは孤独な戦いを続ける。それが社会の要請ならば、茨の道を行くがいい。しかし、残った95%の学生にサバイバル能力を身につけさせることも大切なこと。

 

・一番大切なのは中学校。(郷土愛、あいつがいる、父母がいる)

  トップエリートではなく、地方にどれだけローカルエリートを集められるか。  地方に「ビルゲイツ」はいらない。20人にひとり、20人を雇える人を育てる。そうした人材が育つ地域は衰退しない。

 

※参考

新学習指導要領

 ⑴知識・技能

 ⑵思考力・判断力、表現力等の能力

 ⑶主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

 20163月文科省「3ポリシーの策定及び運用に関するガイドライン」

 

 

2講義「自治体の危機管理と復興体制づくり」

 青山 明治大学大学院教授・元東京都副知事

(青山元副知事)

 

災害に常識は通用するか (危機管理の基本は常識の破棄)

 1 地震学火山学は予測しない・・・予知はできない。予測は当たらない。

 2 マニュアルは精緻につくるな!

 3 クレーマーに誠意は通用しない!

 4 仮設住宅は作りすぎるな・・・2ヶ月よりも5ヶ月、大切なのは復興住宅。

 5 安全は指定管理に出せない

 6 メディアこそパニック状態・・・土地勘なし、訓練なし、しかし締切はある。

 7 自治体議員の役割は大きい

 8 市民活動の力は行政に勝る

 

・社会的排除とテロの関係

  危機管理のためにはソーシャルインクルージョンが必要。2005年カトリーヌ台風で、ニューオリンズだけが1300人の犠牲者。何故そこだけ・・・調査の結果「識字率の低さが原因」。

・災害の時こそ政治の出番

  役所は「予算の平等」しかし「復興とは土木工事」。

  偉い人が早く来たら迷惑?全くそんな事はない。

  ただし、現地の市長知事が「水も食料も足りない」とメディアの前で言ってしまったために、届くのは水と食料ばかりという事もあった。本当に必要なのは後の復興工事。

・災害基本対策法

 空振りでもいいから避難指示は早めに出す。

911の時の地下鉄ワールドトレードセンター駅

  一人の犠牲者も出さなかったここの緊急時マニュアルが後に評価された。 わずか1ページ。そして「何かあれば止める」この一行。

・クレーマー対応と暴力団対応は一緒

 業務妨害があれば、仮処分を活用。

 110番は複数の職員がかける。隠れてかけない、目の前でかける。

・指定管理であっても安全管理の責任は市町村

  以前は指定管理者の責任は刑事罰で問われていた。ところが、ふじみ野市立大井プール事件以降、安全管理は行政側の責任(確定判決)となった。

  契約書に書かれていても「安全管理は委任できない」というのが新常識。

・これからの問題は老朽マンション

・被災者と心を一つにする「寄り添う」という言葉は日本の良さ

  しかし、それは海外メディアには通じない。

  防災服でメディアに出ないのが常識。通常を装うのが危機管理。

・略奪暴行のない日本

  行政が押さえ込んでいるのではない。市民活動の力。

 

 

 

 

3講義 子供の貧困にどう向き合うか「未来へつなぐあだちプロジェクト」の実践 秋生修一郎 足立区政策経営部子供の貧困対策担当部長

 

 平成21年から、健康・治安・学力というボトルネックの解決に取り組む。

  根底にある共通の原因は「貧困の連鎖」

   ↓  

次代を担う子供支援

 

「子供の貧困対策に特効薬はない」

  (Aが上がればBが上がる。しかし原因はCにあるかもしれない。つまり、AとBに相関関係はあるが因果関係があるとは限らない)

「貧困と貧乏は違う」

  貧困とは経済的に苦しいだけではない。経済資本・文化資本・社会環境資本、このうち社会環境資本の低下は日本全体の問題。(「3丁目の夕日」問題)

  貧困対策の最初は「職員の意識改革」。自己責任論では解決できない。

「学力定着」

  高校中退者数が23区内で突出

   ↓  

 高1クライシスを止める!

  しかし、中退者名簿を要求するも都は名簿を出さない。不本意入学は中学の進路指導の問題だろうか。偏差値信仰に親も教師も陥っていなかったか。まず手を付けるべきは小学校ではないか。

「朝食提供モデル校」の実施

  地域住民では調理室が使えないので家庭科室を利用して月一、ひとクラスずつ+α 「モグモグゴシゴシポッとん」(貧困対策ではなく生活習慣対策として予算を取る)。プラスアルファの部分で「朝食を食べられない子ども」にも提供する。

「子供の貧困対策実施計画(27年度)」

  検討会議(学識経験者の招聘)

   ↓  

 予算検討委員会に間に合わせる。

 

 基本理念

 ・自己責任論には立たない ・生き抜く力を身につける

 親を変えるには10年かかる。だから子供達が直接、体験・経験・学び。(自分でご飯を炊く) 子どもたちにスティグマを植え付けない。

 

【教育・学び】

 ・そだち指導員(つまづき解消) ・はばたき塾、土曜塾(子供たちの自信へ)

 ・スクールソーシャルワーカーによるハイリスク対策

 ・子供の居場所づくり

【健康・生活】

 ・親子に対する養育支援

 ・ひとり親家庭に対する支援 (自立支援教育訓練給付金への上乗せ補助) (高校卒業程度認定試験合格者支援事業への上乗せ補助)

【推進体制の構築】

 ・「つなぐシート」の活用

 

平成27年度調査から見えて来たもの

 ①保護者が困った時に相談できる相手がいると、子供の健康リスクが低減する。

 ②子供が運動習慣・読書習慣を身につけると、逆境を乗り越える力がつく。

 

 

4講義 豪雨から社会を守るー自治体の責務
 山田正 中央大学理工学部(都市環境学科)教授
 (CバンドレーダーとXバンドレーダー整備による「Xレインデータ」の開発者)


・常総市鬼怒川堤防決壊映像を見ながら

  防げた決壊。機能しなかった「水防団」(高齢化)。越水高さはわずか土嚢2段分。なぜその2段が積めなかったのか。途絶えてしまった災害の伝承。

  「防災学」は「地理・歴史学」、しかし「危機管理」は「想定外に対する備え」。

  洪水氾濫解析による浸水拡大状況と住民避難行動。群馬のダムは東京都民のためにつくる。

(流域一貫管理という考え方、お互い様という意識の欠如)

・平成288月北海道大雨激甚災害における水防災対策検討委員会

 被害甚大の鉄道と地方道。しかしレジリエントな施設としての高速道路(高規格道路)は残った。  「防災上必要な資材は高速道路脇におく」という教訓。

・今後の水防災対策のあり方

 ①気候変動を考慮した治水対策(全部を守るのは財政的に無理)

 ②ハード対策とソフト対策の総動員  大災害を防ぐために弱い堤防を作ることも検討すべき。  (小災害によって命を守る。それがレジリエンス。ただ住民合意をどう得るかは今後の課題)

 ③賢い逃げ方、住み方。(危ないところには住まないことが基本)

 ④既存施設の評価と有効活用  線状降水帯予測を活用し既存ダムの事前放水。(前もって空にしておく)

 ⑤水害危険区域の指定  不動産屋は大反対するが、お金と命とどちらが大切か、答えは自ずから明らか。

 

・質疑応答

 Q:いわゆるダムは大丈夫なのか?

 A:コンクリート製のダムは大丈夫。心配なのは農業用の「ため池」。

 

 Q:東京都は時間雨量50ミリ対応を75ミリまで引き上げたが、地方もそうすべきか?

 A:あまり意味がない。東京都の対応は矛盾だらけ。 B/Cはマイナス。 現実は一時間100ミリがしばしばある。そこまでやるのか。

 

 Q:水循環基本法は役に立つのか?

 A:助け合いは大切。これは地域全体で流域全体で考えようというもの。