欠陥住宅に関する相談事例(相談者の同意を得たので公開します) | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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「違約金2割を支払わないと解約できませんか」という相談に対する回答です。
ご意見ください。

●●様
 ご心痛お察しいたします。特定非営利法人建築Gメンの会の鈴木です。早速ですがFAXでお問い合わせいただいた件について回答させていただきます。
 契約にあたって、買主から売主に手付金が支払われると、それは「解約手付」と推定され、相手方が履行に着手するまでの間は、買主はその手付金を放棄し、売主はその倍額を返すことによって、いつでも契約を解除できます。しかし履行の着手後は、手付放棄による契約解除はできなくなり、違約金などを払って解除することになります。
 これは●●様からお送りいただいた「不動産売買契約書」の第8条(手付解除)ならびに第9条(債務不履行による契約解除および違約金)の項に書かれている通りです。
 「履行の着手」の意味については、最高裁判決(※1)が出ており、「客観的に外部から認識できるような形で履行行為の一部をなし、または履行行為の提供のために欠くことのできない前提行為をした場合を指す」とされています。また、債務者が履行期前に債務の履行のためにした行為が、「履行の着手」に当たるか否かについては、「当該行為の態様、債務の内容、履行期が定められた趣旨・目的等諸般の事情を総合勘案して決すべき」とした最高裁判決もあります(※2)。

※1:最判昭和40年11月24日判時428号23頁
※2:最判平成5年3月16日民集47巻4号3005頁

 一般に売買契約における売主の債務とは、売買目的物たる建物の引渡や登記の設定です。今回の場合、売主に頼み2階の間仕切りを3枚引き戸に変更したとのことですが、この変更によって売主が他の買主を探すことが不可能になったとは考えにくいと思います。電話で「気に入らないのであれば他の物件に変更してもいいです」と売主が申し出たという事実とも矛盾します。つまり「あなた仕様の家」をうたいながら他の建売物件と交換してもよいことを自ら認めています。
 実はこの回答をする前に友人の弁護士に意見を求めてみました。選んだ屋根の色が特殊で、他の購入者であれば選ばないような特別なものであれば、「履行の着手」があったと解する余地が生じるかもしれないとのことです。しかし一方で消費者契約法第9条は、消費者契約において契約解除に伴う損害賠償額や違約金を定めた場合であっても、平均的損害を超える部分を無効とすると定めています。平均的損害がいくらになるかは解除の時期等によって異なりますが、手付金を全額放棄しなくても良い可能性がありますので、お知り合いの弁護士に相談することをおすすめします。なお、手付金の方が平均的損害額より低くても、手付けを放棄して解除できる場合、手付金を超える額の賠償金を支払う必要はありません。

 次に、頂いた状況写真についてお答えします。基礎の欠損や外壁材のひび割れなどの仕事ぶりは確かに杜撰、つまり仕事が雑だと思いますが、欠けていたり凹んでいたりするだけでは「欠陥住宅」とまでは言えません。ただし外壁のひび割れから雨漏りが発生したり、基礎コンクリートの欠落によって鉄筋のかぶりが不足したりする場合は明らかな「欠陥」だと言えます。(当会には検査用のレーダー等もありますので、万が一争いになった場合、調査して鑑定書なり意見書なりを裁判所に提出することは可能です)
 問題は補強金物の写真です。
 建築基準法施行令第47条には「構造耐力上主要な部分である継手又は仕口は、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他の国土交通大臣が定める構造方法によりその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない」と決められています。この写真のねじは確かに浮いているように見えます。これは法律に定められた施工方法に違反している「欠陥」の可能性が高いと思います。(まだ調査を依頼されたわけではないので断定は避けます)
 こんな写真が外部に出たら、この図面に名前が載せられている建築士の責任が問われることになります。私なら、自社が施工中の全ての接合部について目視確認させ、こうした欠陥が見つかる前にやり直しを命じます。それくらい「構造耐力上主要な部分または雨水の侵入を防止する部分」に対する建築士の責任は重いからです。もしもそれをやらずに、工事監理を他人に丸投げしていたことなどが判明しようものなら、免許を失う事にもなりかねません。

 もうひとつ、連日入金を迫られ、夜遅い時間に2回も電話があったとなると「相手方に対する脅迫的な言動または暴力を用いる行為」にあたる可能性があります。今後は時間を記録し録音しておく必要があると思います。

 以上、私が判る範囲でお答えしました。特に平成12年に住宅の品質確保法が施行されて以来、消費者の立場は格段に強化されています。一生に一度の買い物です。契約と明らかに違うものを渡されたかもと考えるなら、泣き寝入りしてはいけません。相手方の言動に精神的苦痛を感じるようなら、場合によっては警察に相談することもおすすめしておきます。当会には建築紛争に詳しい弁護士もいますので困ったときにはまたご連絡下さい。
 寒さ厳しい折、ご自愛下さいますようお願い申し上げて筆をおきます。

特定非営利法人建築Gメンの会
一級建築士 鈴木幸司