以下は「観光創造論」の調査のため、現地視察と関係者のインタビューを2012/11/13に行ったレポートです。
午前8時には華厳の滝駐車場に到着してしまった。エレベータ運行開始を待って展望台まで下る。エレベータの往復料金530円。(この観光地の値段設定は高めに感じる。例えば日光東照宮拝観料1300円、鬼怒川ライン下り2500円、ホテルの日帰り入浴料840円)
午前10時、朝食の為に入った喫茶店のオーナーに鬼怒川温泉の現状について話を聞く。温泉街の寂れかたは予想以上だった。バブルで沸いた時代に次々に建設され、放置されたままのホテルの廃墟が、解体もされず多数存在している。
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東武鬼怒川温泉駅に降り立つ女性グループに「シャッター押しましょうか」と声をかけて、話を聞く。東京から来た4人組。「鬼怒川って有名だから・・・」と屈託ない。目的は温泉と食事と東武ワールドスクエアだそうだ。
日光東照宮拝観のあと見つけた「たまり漬け」のお土産屋さん。駐車場が大きくてけっこう賑やかだが、帰りに寄ったが5時過ぎにはもう閉店していた。団体客以外は相手にしていないらしい。
さて、事前に電話で取材をお願いしていたホテルに午後3時に到着。約束した午後4時まで時間があったのでホテルの温泉で入浴。中庭をうまく使ったレイアウトで、露天風呂も広くて結構快適。貸し切り状態。
温泉観光地の売りって、やっぱり情緒だと思う。ゆっくり温泉に浸かって運転の疲れを癒してから地元の温泉活性化団体の関係者と面談。鬼怒川温泉の歴史から足利銀行の破綻、産業再生機構と政府の援助。どれだけ苦労なさったのか、お話を伺えた。
しかし、何が悪いと言っても、やはり潰した経営者が一番悪いと思う。自己破産して、競売にかけて何十億円もの借金をチャラにして、それを身内が買い戻して、本人は退いても結局息子さんが経営している。そこに投入されたのは国民の税金だ。
「さて鬼怒川温泉の再生を
どうする?」
お話を伺ったホテルにも5時をまわると、大型バスでどんどんお客さんが運ばれてくる。稼働率も週末は60%を超えているとのこと。しかし、ご多聞にもれずやはりここも、宴会、二次会、締めのラーメン、そして帰りのお土産まで宿泊客を囲い込み、外へ逃がさないような仕組みが完成している。ホテル単体の収支は改善しても「まちづくり」には寄与しないわけで、そうして町並みは寂れて行く。廃墟となった幽霊ビルの使い道も無い。この町には「定住人口」が決定的に不足している。
そこで、その定住人口を増やすアイデアを提案したい。
鬼怒川の長所を上げてみると
①都内から2時間という交通の便。
②放置されている廃ホテルも、RC造で躯体はしっかりしている。
③鬼怒川のネームバリュー
④そして何より「温泉」という健康資源。
これらの特徴を生かして、多すぎる宿泊施設や廃ホテルを「ケア付き高齢者マンション」に改造してはどうだろうか?
2009年群馬県で起きた「たまゆら」火災事故のように、無届の「老人収容施設」が未だ劣悪な環境下におかれているといった例は枚挙に暇がない。
お年寄りたちに居場所を提供し、介護サービスや医療サービスを提供する人たちの雇用の場を提供する・・・そうした社会事業としても実現する意義があると考える。躯体は出来上がっているのだから、これら廃ホテルのリフォームは地元の建設業者で施工できる。地域に与える経済効果はいっそう大きくなるはず。
実は今いちばんお金を持っているのは、高齢者世帯。子どもや孫も都内から2時間で訪れることも可能。高齢化社会に向け、こうした需要は必ず増加するから、「ケア付き高齢者マンション」や「ケア付き高齢者住宅」は今後の政府の施策にも合致する。
「まちづくり」はこうした社会事業ですすめることが一番いいのではないだろうか?高齢化社会というのは「確実にやってくる未来」なのだから。