第15期自治政策講座in横浜 「進む人口減少と自治体の政策」
~右肩上がりの成長・発展から発想の転換を~
第5講義 持続可能な都市地域経営~社会インフラの課題
増田寛也 野村総合研究所顧問 東京大学公共政策大学院客員教授
❶社会インフラ”蓄積の実態”
・経過年数30年が事故等の発生確率を高めるターニングポイント
・高度経済成長期に投資された社会インフラが今後50年にかけて次々と更新期を迎える。
・人口が少ない自治体ほど、一人当たりの維持管理費の負担が重い。
❷老朽化と更新期の到来が意味するもの
❸社会インフラ再設計の方向
まとめ
・社会インフラ(特に公共施設や上下水道等の都市インフラ)の老朽化・大量更新期。
・財政制約・担い手+防災・減災等の観点から現状の都市インフラストックの形や使い方を変えていく必要がある(社会インフラ再設計)
・再設計の方向性は3C(縮小:コンパクト、転換:コンバージョン、横断管理:クロスオーバー)である。いずれもICTが重要な役割を果たす。
・スマート化が利用者の安心・利便性や産業の活性化につながるような全体像を描く必要あり(類型化を念頭に)。抑えるべきは目的、特性、地域・地区展開のプロセス。
・都市インフラの再設計はきっかけ。その実現に当たっては、俯瞰的視点で構想できるプロモーター・コーディネーターが必要。
人口減少時代に必要なもの
①首長のリーダーシップ
②人員の確保
③予防保全
④自治体としての全体の更新計画を作っていく必要がある(実態を市民に公開する)
3Cに取り掛かるのは早い方がいい。
・民間資金の活用が不可欠
・首都高の空中権の活用
・仙台空港の民営化
・PFIの検討
・武雄市の図書館の民営化
社会資本の更新の話は「自分たちの街をどうしていくのか」を決めるという話。それが議会の仕事。
しかし、こうした勉強会にくる熱心な人はいいのだが、本当に話を聞くべき人はこうした勉強会に来ない「議会の重鎮」(場内笑い)
長い目で見ると「地域代表の議員」を有効に活用していかなければならないことがわかる。
なぜなら執行部は長期に渡る問題は苦手だから。
人口予測だけは間違いなくピタリと当たる。
多死社会の到来で大都市の救急医療、介護の問題が深刻化する。
以下質疑応答
道路の長寿命化…
荷重と速度を制限する。何を守るのか、何を制限するのか明らかにすべき。
都道府県の役割は…
人口減に対してどう対応するのか?ナショナルミニマムを県がどう支えるのか?
やり方は二つ、広域で水平補完もしくは県に委ねる垂直補完。今、水平補完でなんとかしようと耐えきれないか。
無理なら垂直補完するしかない。つまり自治の返上。
プロモーター・コーディネーターの選び方…
東洋大学の根本教授が一番でしょう。簡易診断プログラムの活用。根本教授の人脈の活用。
がけ崩れ危険地区移転促進制度、強制出来ないので誘導する方法は…
釜石の例:人口減によって8万人から高炉の停止で4万人に。中心市街地には空き地が多い。しかし、国交省は反対する(がけ崩れ防止事業が進まなくなる)
一般論として、地域コミュニティを分断するおそれ…しかし災害危険性の高いところについては、実は、安上がりで早くできる。移った先のコミュティを再構築できるのなら、静岡なら、東南海地震の災害危険性を横串に…。国はダメです。川勝さんも国のいうことをきかない人なので、静岡方式でやった方がいいですよ。
PFIについて、特に道路の…
収益性がインセンティブになります。空港は民間の方がノウハウを持っている。そうしたノウハウを持っているものはPFI手法が使える。しかし道路や橋梁は極めて難しい。港湾・空港はアイデア次第。
新しいハコモノ…国庫補助制度の今後の見通し…
補助制度がいいとは思わない。あるものを使おうとすると、国の財政が傷む。
来年度以降、全体としてどこの予算も非常に厳しい。「骨太の方針」に載らないとその補助制度には頼れない(無くなる)。国土強靭化とか言ってる人もいるが今後は「激変」に見舞われる可能性。地方向けの歳出は相当絞られる。
防潮堤について…
自民党政権が相当背伸びしている。高い防潮堤が本当に必要か。
避難路の整備に切り替える、高台移転するほうがコストがかからない場合もある。
国は一律にやりたがるが…。
国交省は先祖がえりした。「2037年問題」はどうするのか。
国から自治体へ宿題を投げかける時期がくる。