ジヤトコ、EV用変速機を開発 | 富士市議会議員 鈴木幸司オフィシャルブログ Powered by Ameba

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日経ビジネス2月3日号「記者の目」から引用します。

 

 

 

電気自動車が迫る部品会社の自己変革(阿部 貴浩)

 CVT(無段変速機)大手のジャトコ。世界最高水準の変速比幅を持つCVTを開発するなど、CVT技術をけん引する企業だが、EV化によって変速機の市場がどう変わるかを、真剣に考え始めている。

 

 エンジンの動力を効率的にタイヤに伝え、性能を向上させるのが変速機の役割だ。ガソリンエンジンは低回転時の力が弱いため、変速機で力を増幅させることでスムーズに発進できる。しかし、モーターは特性として低回転時でも大きな力を得ることができる。回転数の制御もエンジンに比べて容易なため、大半のEVは変速機を搭載していない。回転数を下げるための減速機を搭載している程度だ。

 ジャトコの親会社は日産自動車。三菱自動車も株主だ。日産は「リーフ」、三菱自は「アイ・ミーブ」というEVを量産して販売拡大を急いでいる。どちらも変速機は搭載していない。

 

 

 では、EV社会ではCVTの出番は無いのか。こうした問いに対し、ジャトコ関係者は「将来はEVにも変速機が必要になる」と話す。モーターにも効率の良い回転数がある。低速時の力が強い半面、高速回転時の加速は苦手で、「電費」と呼ぶエネルギー効率が低下する。高速道路で追い越しをかけるなどの使い方をすると、バッテリーの消耗が早くなり、航続距離が短くなってしまう。

 こうした欠点を補うのがCVTなどの変速機だ。CVTを搭載することで効率の良いモーターの回転数を維持しながら速度を変更できるようになり、なおかつ減速時に回収できるエネルギーの量を増やせるという。こうした研究の結果、「EVでもエネルギーを的確に伝えて、制御するという技術は欠かせない」(ジャトコ)と判断し、EVの性能を高め、コスト負担も小さいEV用変速機の研究に着手したという。

 

 クルマの電動化と言う変革期に直面し、ジャトコは自社製品の将来性を見極め、その技術を進化させる道を選んだ。豊田自動織機は新たな事業領域へと挑戦する道を選んでいる。共通するのは、自分の会社が持っていた技術という財産を、来るべき新産業に活用しようと工夫している点だ。一から新技術を立ち上げるのではなく、徐々に進化させることで、強みを生かしつつ新たな時代を生き抜こうとしている。


 
 「記者の目」では、まず豊田織機が電気自動車を自主開発して昨年のモーターショウに出品した話から始まり、そして上記のジヤトコの物語へ繋がる。いずれも部品メーカーの生き残りの話で、共通のテーマは「電気自動車」ということだ。

 しかし8輪駆動の「エリーカ」のように、ホイールインモータを採用すれば変速機は不要になってしまう。そこでジヤトコは「電費」という概念から、EV用変速機という一つの答えを導きだした。小さいモーターをいくつも使うより、大きなモーターを「電費」よく利用した方がオトクですよ・・・というわけだ。
 富士市に本社を構えるジヤトコは、今も海外へ飛躍し続けている。クルマの電動化というこの変革期に、生き残りを賭けるためのマザー工場が富士に存在し続けていることに、私たちは大きな誇りを感じる。

 今後はこうした部品メーカーが自動車の販売台数を左右する時代になるだろう。例えばデンソーが開発した「コモンレール」を独ボッシュが実用化し、現在の欧州市場を席巻している。ヨーロッパではコモンレールシステムのおかげで、乗用車の2台に一台がディーゼル車という有様だ。今後、内燃機関の時代が終焉すれば、自動車の駆動システムは単純化し、自動車会社はアッセンブリーだけを請け負うことになるのかもしれない。クルマの電動化は、部品メーカーにとっては腕の見せ所でもあるのだ。

 かつてのジヤトコは「歯車技術」世界一を誇っていたが、その集大成ともいう「トロイダル変速機」はまったく売れなかった。しかしトロイダルの理論は、火力発電所のような馬鹿でかい軸力を伝達するプラントに応用できるのではないだろうか。発電効率が求められる時代にこそ、ああした技術が必要なのだと思ったりする。
 
 先日、米コダック社が倒産した。デジカメ時代への変革に乗り遅れたのが原因だろう。その一方で、富士フィルムのように新商品開発に成功した企業もある。ジヤトコがコダックになるか富士フィルムになるのか・・・その行く末を占う研究開発の拠点が、富士山のふもと、私たちの住む富士市にある。大事にしないとばちが当たると思う。


東京理科大学自動車工学研究室(正木研)昭和57年卒
富士市議会議員 鈴木幸司