正月三が日は寝正月の予定でしたが、昨日は午後から親戚にコロナ感染者が出て薬を届けたり、急きょビルマの人と大久保の台湾料理屋さんでプチ新年会を持ったりしたので、慌ただしくなってしまいました。
今朝はやや二日酔い。
だから、午前中は家でぼ~~っと過ごして、午後は録りためていた韓ドラを見続けていました。
気がつくと18時過ぎて、東空には月齢11の月と明るい火星が輝いていて・・・。
年末から、近藤ようこさんの絵による「死者の書」(折口信夫:原作。KADOKAWA、上・下各740円+税)を、ゆっくり読んで年を越しました。
「死者の書」は折口信夫が「当麻曼荼羅縁起・中将姫伝説」をもとに表した、天平時代を舞台にした幻想的小説。その「鑑賞の手引き」(近藤ようこ)のように描かれているのが、この漫画版「死者の書」です。
藤原南家の郎女(中将姫)が浄土教千部写経をするうちに、非業の死を遂げた大津皇子の霊とまみえ、やがて蓮の糸で織り上げた布に曼荼羅を描いて完成し、自らも姿を消す。という内容で、読み進むうちに、読者は今の世から遠い昔にトリップするような作品です。
「死者の書」は岩波文庫で読めますが、WEB図書館「青空文庫」からその冒頭の部分を引用します。
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彼(カ)の人の眠りは、徐(シヅ)かに覚めて行つた。まつ黒い夜の中に、更に冷え圧するものゝ澱んでゐるなかに、目のあいて来るのを、覚えたのである。
した した した。耳に伝ふやうに来るのは、水の垂れる音か。たゞ凍りつくやうな暗闇の中で、おのづと睫マツゲと睫とが離れて来る。
膝(ヒザ)が、肱(ヒヂ)が、徐(オモム)ろに埋れてゐた感覚をとり戻して来るらしく、彼カの人(ヒト)の頭に響いて居るもの――。全身にこはゞつた筋が、僅かな響きを立てゝ、掌(タナソコ)・足の裏に到るまで、ひきつれを起しかけてゐるのだ。
さうして、なほ深い闇。ぽつちりと目をあいて見廻す瞳に、まづ圧(アツ)しかゝる黒い巌の天井を意識した。次いで、氷になつた岩牀(イハドコ)。両脇に垂れさがる荒石の壁。したしたと、岩伝(イハヅタ)ふ雫(シヅク)の音。
時がたつた――。眠りの深さが、はじめて頭に浮んで来る。長い眠りであつた。けれども亦(マタ)、浅い夢ばかりを見続けて居た気がする。うつらうつら思つてゐた考へが、現実に繋(ツナガ)つて、ありありと、目に沁みついてゐるやうである。
あゝ耳面刀自(ミミモノトジ)。
甦(ヨミガ)ヘつた語(コトバ)が、彼の人の記憶を、更に弾力あるものに、響き返した。
耳面刀自(ミミモノトジ)。おれはまだお前を……思うてゐる。おれはきのふ、こゝに来たのではない。それも、をとゝひや、其(ソノ)さきの日に、こゝに眠りこけたのでは、決してないのだ。おれは、もつともつと長く寝て居た。でも、おれはまだ、お前を思ひ続けて居たぞ。耳面刀自(ミミモノトジ)。こゝに来る前から……こゝに寝ても、……其から覚めた今まで、一続きに、一つ事を考へつめて居るのだ。
☆写真/画像は昨日の夕方「プチ新年会」を行った、大久保の台湾料理屋さんの「取り皿」とその絵。3枚目は死者の書(上・下)の表紙。
↓去年の今日のブログです。去年は「正月休み」が十分にとれなくて、不満たらたらでした。