『太陽にほえろ!PART2』の前番組、『太陽にほえろ!』晩年となった1986年に入ってからの放送回をあらためて観ていくと、この当時は新しいものを作りたいという気概がひしひしと感じられる。しかし、伝統に縛られ、またおなじみとなったキャラクターに縛られていたのも痛いほど感じられる。

 

『PART2』の成り立ちと終了に関して、成り立ちのほうはよく知られるように主演・石原裕次郎の病気療養が長期化するために所属の石原プロ側から降板が申し入れられ、それを受けての仕切り直しを迫られたものである。終了のほうは放送期間が短期の1クールだったことから、まことしやかに伝えられている低視聴率で打ち切りになったというものではなく、当初からの1クール。ただ、打ち切りは、打ち切りであった。番組の顔、裕次郎の降板にあたり、スタッフは番組継続派と番組終了派に分かれて、番組継続派の意見が通り、『PART2』の制作を開始したところ、如何ともし難いところがあり、放送開始前に短命番組として終わらせることにする。延長を含むとりあえずの2クール予定から出演俳優などへの契約不履行にならない分の1クールで打ち切りにし、後番組『ジャングル』の制作に入ったというもの。

 

当ブログ 渡哲也が出ている「太陽にほえろ!」

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代理として渡哲也の出演が提示された後の裕次郎降板。石原プロ主導で番組に引導が渡される。

 

『PART2』を観る前、この打ち切りの経緯を知るに、どうして結果(視聴率や世間の評判)が出ないうちから諦めたのか疑問であったのだけど、実際に観ていくと、なるほど、いまさらながら、その如何ともし難かった理由あれこれが判ったような気がする。

 

良くも悪くも これは『太陽にほえろ!』じゃないな と。

 

奈良岡朋子演じる「自立した女性」を体現した女ボス=係長に対して部下の刑事たちは石原裕次郎が演じた前任者へのような尊敬の念を払っていないし、奈良岡とともに『PART2』から新加入の寺尾聰が演じるキャラクターも『太陽にほえろ!』の刑事らしくないつくりになっている。そしてそれまで以上に、クライムサスペンス度を増している展開などで。たしかに新鮮ではあるけれど、ここまでやるんだったら、「警視庁なんでも課」と揶揄された七曲署捜査一係という設定の枠組みではなく、まったく新しい設定を作って動かしたほうがストレスなく行けるんじゃないかと思った(つまり、それがオールリセットした後番組『ジャングル』に)。

 

同時期、日本テレビでは『あぶない刑事』を制作および放送し始めた頃だった。そちらは新番組だけに縛られるような伝統もなければ、キャラクターの作りこみもまだまだだった段階。当初はハードなクライムサスペンス路線だったのが、番組立ち上げから一足遅れて参加して第7・8話を初担当の村川透監督が「どうしてこんな重たいの?」とそれまでの放送回に疑問を呈し、あの軽いノリに仕立てたところ、番組は化けて、文字通りオバケ番組(死語)になっていった逸話がある。

 

無印『太陽にほえろ!』全718話に圧し潰されてしまった『PART2』ではあったが、潔く全12話で打ち切った良い面も出ている。それは思うに、最初からゴール(1クールで終了)を決めてあるから、キャラの使い切り、設定の使い切りの良さが出ているのだ。

 

第3話「老犬ムク」(1986年12月12日放送)なんかでは、それが如実に表れている。終盤で事件が解決した際、DJ刑事らは散々ムクに振り回されたものの、可愛さ余って憎さ百倍ならぬ憎さ余って可愛さ百倍となって、飼い主が亡くなってしまったムクを七曲署で引き取って飼うことが決まる。それまでの無印『太陽にほえろ!』だったら、七曲署のペットとなったムクを再度登場させることも出来るこの場面でハッピーエンドだったはず。しかし、展開がもう一捻り加えられ、深夜にムクは七曲署から独りで抜け出し、飼い主が亡くなった河原に出向いて冬の寒さのなかで殉死してしまうというバッドエンドでオチを付ける。そのやるせなさは、深く印象に刻まれるものとなった。

 

『PART2』を観ていくと、後番組の『ジャングル』は当初から『太陽にほえろ!』を目標とした長寿番組を目指してしまい、その踏ん切りのなさがテコ入れのあらしとともに負に働いたことをあらためて気付く。以前、当ブログで、伸びない視聴率と話題のならなさで低迷していた『ジャングル』が再起を図るべく、レギュラー陣の入れ替えと路線変更を断行したリニューアル版の『NEWジャングル』について触れた際、同時期のフジテレビで放送された(舞台設定だけ取り入れた)刑事ドラマ『君の瞳をタイホする!』との比較において、1クール作品ながらどうしてそっちが成功して、『NEWジャングル』も引き続き低迷していったのかを分析したことがある。旧態依然の刑事ドラマとその直後にブームとなるトレンディドラマの元祖との違いもあるほか、やはり最初からゴールを決めてのキャラの使い切り、設定の使い切りの良さがあったのが大きい。なお、『君の瞳をタイホする!』は当時のヒットドラマでよくある後日談のスペシャル版も作られず、1988年1月から3月まで放送した全12話だけで完結してあって、いまとなってはそこも好感が持てるところである。

 

 

当ブログ記事 刑事ドラマの終焉 その2 『君の瞳をタイホする!』がもたらしたもの

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