長年トレーニングを続けていると、同じ目標や夢を持つ仲間が自然にでき、共に厳しい練習を頑張ったり意見を出し合ってみたり、苦しいからこそお互い分かり合えたり敬意を持って接する事ができるようになる。
個人的には筋力があるから尊敬できるとか、経験がただ長いから偉いというものではなく、どれほど真剣に取り組んでいるかという事が大切だと思っている。
だからジムのメンバーの中でも親しい仲間の数はそう多くはない。
その中で私のような人間に熱心に指導を頼んでくる仲間が何人かいる。
ほとんどが私より随分若く、将来が楽しみな青年もいたりする。
そのうちの一人に私がかれこれ7年程指導してきている一番と言ってよいほどの期待の青年がいる。
彼は現在大病を患っている。
数年前、胃癌が判明して胃を全摘出した後検査を繰り返しながら体重も筋力もかなり回復してきていたのだが。
先月から病気の再発の恐れがあるからと、また入退院を繰り返す事に。
退院してくる度に体重も減り、ジムにくる事自体奇跡に近いのに完治する事を信じてひた向きにトレーニングする姿を見るのが辛くてたまらない。
病気が病気だけに周りの仲間も何と声をかけたらいいものか。。
近いうちにまた手術の予定があるような事も聞いているし、状況はかなり厳しいのではと私も毎日心配している。
つい先日も退院してきてすぐにまたジムに来ていたので、私は自然に会話するように心掛けていたのだが、日に日に弱っていく彼を見ていると胸が締め付けられる想いだ。
「退院する度に筋力が落ちてるからショックですよ!」と軽い笑顔を見せ、何かを払拭するように真剣にトレーニングに取り組む彼に何もしてやれないなんて。。
入院中ずっと寝たきりで抗がん剤の点滴をされているのだ。
調子がいいはずなどあるわけがない。
なんという強靭な精神力の持ち主だろう。
正直なところ私も心のどこかには既に覚悟を決めている。
だが今は先の事は考えず、一日一日を精一杯生きて回復する事を信じるしかない。
彼を見ていると、世の中には五体満足で健康なくせに、それに甘えて大した努力もできない情けない人間がなんと多い事かと思ってしまう。
今までも、これからもそうだが、トレーニングを通じて彼には教えた事より学ばせてもらった事、精神的な強さをもらった事のほうが遥かに多いであろう。
少し前病院にお見舞いに行った時に彼に私の昔からの信念を話してきた。
スポーツでも何でも一緒であるが、諦めた時が負ける時だ!
病気なんかに負けてはダメだ。
自分を信じて絶対に諦めるなと。