繊細なることばの世界へようこそ | 38度線の北側でのできごと

38度線の北側でのできごと

38度線の北側の国でのお話を書きます

 GWなのだけど、平壌文化語保護法の成立についてコラムを書いていた。

 

 日本でも沖縄で「方言札」を使い、教育現場で方言を駆逐し標準語化を推し進めた過去があったが、21世紀になった今、法律でことばづかいについて規定しようとするというのは、人類史における興味深い実験であるといえる。

 

 南北間のことばづかいには明確な差がある。簡単に整理するとこうなる。

 

・いわゆる方言。地域差や、古い表現が北には残っていることが多い

・発音や語尾の違い

・外来語。韓国においては英語語源の外来語が多い。北は少ない。あるいはロシア語語源のことばがあるのが面白い

・政治的な意味を持ったことば。トンム(동무)が好例。単に友、仲間を指す意味が北では目下、同じ立場の人の呼称となり、それに伴い南では余り使われなくなった。

・最高尊厳(金日成、金正日、金正恩氏)に対しての表現。北では最高敬語。南で最高敬語を使うと国家保安法違反に問われることも

 

 怖いのは南と北で正反対の表現となっていることで、偉大なる金正恩総書記は~と平壌でいうのは当然だが、同じことをソウルで言ったら大変なことになる。国家保安法違反容疑だ。

 

 つまり口から出ることばことばひとつで、政治的な立ち位置を問われるのが韓国語であり、朝鮮語(この表現ですら問われている)。君は北のシンパか。南のシンパか。その間を中立を貫くのは、一輪車で走るかのように心もとない。

 

 韓国語を極めただけでは足りない。朝鮮語も極めてようやく足りるのである。逆も然り。

 

 学生から韓国語面白いですか?と聞かれると、にやりと笑ってしまう。自分の政治的立場を問われる、それは繊細なることばへようこそと。