お金をください | 38度線の北側でのできごと

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38度線の北側の国でのお話を書きます

 翼をくださいって名曲なんですかね。

 この曲ってぼくの世代では合唱コンクールの定番なんだけど、ぼくは「今 私の願いが かなうならば お金が欲しい」と歌ったんです。これを音楽の教師に聞かれてしこたま怒られました。だから言い返したんです。

「そもそも翼をもらって飛んでどうなるんです?空を飛んだところで航空自衛隊がスクランブル発進ですよ。F-15とF-4ですよ相手は。それだったらぼくは普通にお金もらって飛行機に乗りますよ」と。

 おまえは夢がないとか散々言われましたが、この主張は今でも間違っていないと思うんです。だってこの曲の歌詞って読めば読むほどどこまでも他力本願で現実逃避じゃないですか?と。(与えられるはずなどない)つばさが欲しけりゃいつまでもひとりでレッドブル飲んでろよと思うのです。自分で空は飛べるんですよ。結構簡単に安価に。そう、飛行機に乗っちゃえば。そういう道もあることを教えるのが教師の仕事なんじゃないですかね。

 あとKANの「愛は勝つ」も嫌いでしてね。「信じることさ 必ず最後に愛は勝つ」というサビを「儲けることさ 必ず最後に金は勝つ」と歌ってまた(以下略)。

 でもどうです?大人になるとほぼ愛は負けることを体験的に知ることになります。結局最後は金が勝っちゃうんですよという、いつかのホリエモンみたいなことを言ってた当時のぼくはそりゃかわいくないガキだけど、でも「おまえはよくわかってる」という大人がちょっぴりいてくれたから、今なんとかこうして生きているわけでして。

 たまにあります。愛が勝つケースも。黒田博樹みたいに大リーグの大型オファーを蹴って広島東洋カープに帰って来る奇跡も。でもね、それがほとんどないのが残念だけど現実。「悲しいけどこれ戦争なのよね」というセリフを既に機動戦士ガンダムで聞いていたろ?

 そんな空疎で、きれいごとばかりの、反吐吐きたくなる歌詞ばかりの90年代のまだバブルの残照が残る日本の音楽に絶望して、その果てに北朝鮮音楽にハマる(すでに当時ハマっていた)流れは何だか自分でも理解できる。

 そうか。10代のぼくは既に絶望していたのか。