その夜出来たものは、すき焼きとは名ばかりな汁気の足りない鍋だった。
味付けは醤油と砂糖。中身はひたすら肉と、マッシュルームとアジア食材の店で買った糸こんにゃく…。


ぐつぐつぐつ・・・・。


「おれすき焼き初めて食べたけどおいしいね~」
アレンがニコニコしながら食べている。日本の味すき焼きが彼に正しく伝わったかどうかは別として、まあ喜んでもらっているのでいいか??

「ほんとは、もうちょっとスープがあるんだけどね(笑)」
「意外と難しいね、すき焼きって。かなことみきは日本からすき焼きのもとをもって来てくれたから簡単だったけど、自分で作るとむずかしいなー」
「そっかー」


いかん、なんかかなこの名前を聞くと心が痛い。


「さちは、何日ネブラスカにいるの?」
アランがビールを空けながら聞く。
「3泊4日だよ。学校が始まるから帰らないとね。」
「そっか、楽しい滞在になるといいね♪。」
「そうだね~」
にこっとウインクするアランをみて、もしやこの人わたしがちょっとかなこにヤキモチを焼いている事を知ってるのかな?と勘ぐってしまった。


すき焼きを食べた後、わたしとアランとデイブはビールを飲みながらリビングでだらだらとする。
アランがゲームをして、わたしはデイブと取り止めのない事を話して、滞在一日目にして自分の家のようなリラックス振りはなんなんだろうと頭の片隅で考える。


「もう少ししたらもう一人のシェアメイトのブライアンが帰ってくるからそしたらみんなで飲もう。」
「いいね~」


ほろ酔いの頭で再び考える。
デイブがかなこと付き合ったのは、もう起こってしまったことなんだからしょうがないよ。
せっかくアメリカ滞在最後の週をネブラスカで過ごすんだから楽しく飲んで友達が出来たらいいじゃん。
(英語の練習にもなるし)    

つづく→

「実はさちにちょっと話さないといけないことがあって。。」
車を走らせながらデイブが話し出す。
「なに?」
景色が珍しくてきょろきょろしながら適当に相づちを返す私。

「おれがアメリカに帰国する前に電話でさちに話した事、覚えてる?」
「えーと、もしわたしが彼氏と別れたら自分と付き合ってって言ってたこと?」

忘れるわけがない。デイブが空港からかけてきた電話で、彼はこう言ったのだ。


”さちの事が気になってた。。けどおれは国に帰る事がわかってたし、さちには彼氏がいるから今まで言えなかった。もし、さちが彼氏と別れて、おれがまた日本に戻って来れたらおれと付き合って”


まあ、結果わたしは彼と別れアメリカに遊びに来るころにはデイブには彼女がいたわけなんだけど。


「そう。そんな事言っておきながら、かなこと付き合うことになったから、もしさちがショックを受けてたらどうしようと思って。」
「大丈夫だよ~。ここに来たのも、シカゴに来たついでに遊びに着ただけだし。まあ、付き合ってることを聞いてびっくりはしたけど。」
「よかった。さちが着てくれたのは本当にうれしいよ♪」


チクッ


なんだか、その台詞を聞いて心がいたんだ。
意識しないようにはしてたけど、わたしはデイブと再会するのをかなり楽しみにしていたのだ。
わたしが来る直前にかなこと付き合いだした事を聞いたとき、わたしはショックだった。
もしわたしが先に来ていたら?と思わずにはいられなかった。あらまあ。



つづく→

コンコン・・・・
誰かが部屋をノックする音で目がさめる。
「・・・あ、そっか昼寝してたんだ。」
寝ぼけて周りを見渡す。男くさい、ちょっと散らかった部屋。わたしは滞在中デイブの部屋を借りる事になっていた。デイブはカウチで寝るのだ。一緒にねれたらよかったのに、ちっとヨコシマなことを思いついて首を振る。

「晩御飯買いに行くけど一緒に行く?すき焼き作ろうぜ--」
「行くーーすき焼き作れるの?デイブ」
「材料切って煮るだけでしょ?」
・・・そうか?

デイブについて下に下りていくと、他の男の子が2人と女の子が1人いた。
「これが、クリフォードとその彼女レネ。こっちがアラン。」
アランはこの中で一番大人っぽい感じで、クリフォードはメキシコの血が入っている感じ。レネは優しそうな女の子だった。なにやらみんなで、カードブックを覗き込んで話し合っている。

「こんにちわー。何してるの?」
「やあ!これはね、マジックカードコレクションだよ。俺のコレクションをアレンに見せてたんだ。」
クリフォードがにこにこしながらカードコレクションを見せてくれる。その隣でニコニコしているレネ。カードゲームコレクターとは、要はおたくである。

「遠いとこから来たね~。買い物行くの?」
アランは低めの声でゆっくり話す。(わたしが聞き取りやすいようにかな)
「**マート行くけど一緒にくる?俺とさちですき焼き作るよ」
「おれ今からバイトだよ。でも夜には帰ってくるから一緒に食べようぜ~」
「了解!」

こうして、ネブラスカ第一日目はデイブとの買い物後すき焼きという日程で始まった。



つづく→