「あ~スッキリした~・・・あっ!!」
気を利かせてトイレに去ったのだと思っていたブライアンは、用を足してすぐタバコを吸いに戻ってきた。
どうやらただ本当にトイレに行きたかっただけみたい。



彼は、カウチの上でわたしとデイブが抱き合っており、さらに私が泣いている状態に動揺を示してはいたが結局そのまま私の横にどかっと座ってタバコに火をつけた。

寒いな~」
独り言をつぶやいて、なんとなくこの場を和ませようとするブライアン。



「・・・・あー。アメリカにくる前に失恋した事、思い出したら泣けてきちゃった~。」
わたしはとっさに思いついた台詞を口にした。

”日本で彼氏に振られて傷心なわたしはデイブに慰められた”という状況である。

「ありがとう、もう大丈夫だよ、デイブ」
といいながら、彼の腕をほどく。
「あ、うん。」
デイブはまだ何か言いたそうだったが、腕を解き、泣いているわたしの背中をさすってくれた。



いくら酔ってても、今の状況でしかも付き合い損ねた男の子の腕の中で泣いているなんてちょっとダサすぎるという意識はまだはっきり残っている。しかもそれを彼の友達に見られて慰められたりした日には・・・・恥ずかしすぎる!!


今回は恋愛のタイミングが合わなかっただけであって、私が被害者なわけでもなんでもないんだから、そこのとこはっきりさせなくっちゃ。

デイブとブライアンがタバコを吸いながらたわいのない話をしている間、わたしはネブラスカの星空の下で思考をめぐらせていた。



「CDが終わったよ。寒いし、中入ってもう一回だけドリンキングゲームしようか♪」

ブライアンが、タバコの火を消しながら言う。
「うん。最後のドリンキングゲームは派手なのにしよう!!」
「あっ。。。いいのがあるよ。。。」
デイブはすごいことをひらめいた!という顔をした。そんな彼にわたしとブライアンはオーバーリアクションで答える。
「な~に~!!!????」


*3人とも、酔ってます。


つづく→

飲み始めたのは確か夜の9時ごろ…。


夜景を見た後、安いビールを買い込み家に戻るとレネとクリフォードが遊びに来ていた。

アランがバイトから戻ってきて参加し、ブライアンもその後現れて気が付けばすでに深夜を回り、何回目かのカードゲームで丁度ブライアンが負けてビールを一気した所だった。


私は、飲むとタバコが欲しくなるタチなので一服しにこうとすると、結局みんなぞろぞろと外に着いて来て一服がてら外の風にあたる事にした。

ブライアンが、最近の自分の新作だというCDをプレイヤーにセットして、音楽を聴きながら外に置いてあるぼろぼろのカウチにみんなで座る。



外の空気は相変わらずひんやりとしていて酔った私の頭を多少なりとも冷やしてくれた。

アメリカではタバコが高いという話でレネとクリフォードと盛り上がっていたが、禁煙派の彼らは寒いので部屋に戻り、アランはビールを取りに部屋に戻る。



「さちが来てくれて、ほんとにこの2日間すごい楽しかったよ~」


酔いがかなり回ったのか、デイブが唐突に話を始める。


「わたしもだよー。まだきて2日しか経ってないのに昔からここで暮らしてる気分になってた」


ブライアンは気を利かしてか、ちょっとトイレと言ってタバコを消して立ち上がる。デイブは私に向かい合って話し出した。



「さち、おれはかなこと付き合ってるけど、さちのが来て一緒につるめて、すごい楽しくて、正直ぐら付いてるよ。もちろん、かなこを傷つけたくないし、そんなダメな男(ASSHOLE)になる気はないけど、さちこのことが好きだよ。」



・・・ボロッ 酔ってほてった私のほほを涙が伝ったのがわかった。


「デイブ、そんな事今言われても、わたし悲しいだけじゃん」

「ごめん」


デイブは泣きだした私をそっと抱きしめる。


「優しくするんなら私と付き合ってよ~」「ゴメンできないよ。すごいしたいけど出来ない」

「じゃあそんな事言わないでよ~。バカ~」


こんなとこでデイブの前で泣いててもしょうがないじゃん、大体デイブの言ってる事も都合よすぎるよ。デイブの腕の中で泣きながらも、冷静な私の心の声が聞こえた。


でも私の酔った頭の中では、今のデイブが私を抱きしめてくれている状態が一生続けばいいのにと、それだけ考えていた。


つづく→

誰かの足音で目がさめる。
時計を見たら夕方6時過ぎ。
ベットには、寝る前に書いていた日記そのまま広がっている。書いた事と言えば、まあデイブとかなこと恋愛のタイミングに対する文句なのだが。



部屋から出て、下に行くとデイブがピザ屋の征服のまま牛乳を飲んでいた。
ブライアンもいる。

「さち、よく寝た?俺今から着替るから、リンカーン(ネブラスカの首都)の夜景でも見に行く?ブライアンが暇だから自慢の車に載せてくれるって。その後はまあ、飲もうぜ。明日土曜日だし。」
「ちょっと町から離れると星も見えるんだよ」
「田舎だからな~」
「うん。行く。」

あさってには日本に帰るんだし、ここで変に嫉妬しててもしょ~がないよね。みんなそれなりに忙しい中私の相手もしてくれてるんだし。そう思うと、私の中の嫉妬心は少しおさまった。



「ほら、あれがこの街のシンボルのチャペル!」

私たちが来たのは町からちょっと離れた大きな自然公園だった。山とまではいかないが、小高い丘になっているそこからちょうどリンカーンの町が見下ろせる。
自然公園の入り口は柵で囲まれており、わたしたちはそこで車をおりて柵に腰をかけて町を見た。

「こーやってみると小さな町だな~」
デイブが町を見ながらつぶやく。
「ほとんどコーン畑だしな~」
ブライアンもそれに続く。ネブラスカの男の子たちが自分たちの町を観察している間、私は見える星の多さに感動してずっと空を眺めていた。


「ほんとに星がいっぱいだ。。」
9月なのに、日が沈むと肌寒い。

今年の夏休みはシカゴでインターンシップもしたし、ネブラスカで友達にも再会した。新しい友達も出来た。

もしデイブとかなこが付き合ってなくて、私と彼が付き合うことになったとしても、わたしは遠距離に向いてないしきっとこれでよかったんだわ。


9月の澄んだネブラスカの星空を見て、わたしは自分で自分を言い聞かせた。

つづく→