川村から言われて加藤を探し始めたわけじゃない。彼女の住所は突き止めている。が、それからは何も進まない。
彼女のマンションに着いた。10階建て位のマンション。彼女の部屋は明かりが付いていた。
「ふーん、このマンションに加藤がいるのか」ギクッとした。振り返ると川村がいた。
「か、川村、どうして?」
「コンビニからお前つけてきたのさ。加藤の居所分かってながら俺に黙ってるなんてとんでもない野郎だ。もう会ったのか?」
「い、いや、そんな」
「会いに行こうぜ、何号室だ」
「・・・」黙ってると、
「加藤に5年前のこと謝りに行くんだ。謝って済むもんじゃないけどな。俺もお前もあいつにとっては加害者なんだ。少なくとも謝っておけばあいつの機嫌も直るだろ」と言われ
「その気持ちに嘘はないよな?」と訊くと、
「当たり前だろ。さっさと加藤の部屋に行こうぜ」と言ったので部屋番号教えた。
彼女の部屋に着きチャイム鳴らすとしばらくして玄関のドアが開いた。と同時に川村が押し売りさながらの態度で乗り込み、
「よぉ、久しぶりだな、加藤」その後ろから入った僕が彼女の顔伺うと、彼女は呆然、というよりも虚脱した表情だった。彼女はTシャツに短パンと身軽な格好だった。間違いない、彼女は加藤美紀だ。
「お邪魔するよ。男と一緒かと思ってたが一人だったのか。いい部屋だな」
「な、何しに来たの?帰って!」川村は意に介さず、
「AV女優ってのは儲かるもんだな。せっかく来たんだから酒でも出してくれよ」
「・・・あんたに出す酒なんかないわ。何しに来たのよ」
「そりゃ勿論旧交を温めによ。酒出してくれないんなら勝手に出すぜ」と言って冷蔵庫からビールを取りだした。僕はその間ずっと俯いたままで彼女から顔をそむけていた。彼女はというと川村ばかりをずっと見てた。
プルトップを開けてビール飲みながら、
「5年前のこと覚えてるだろ?俺もあれからいろんな女とやったけど、お前のこと忘れられなかったんだよ」そのまま加藤のそばに行き、「お前のビデオ見てまたそそられてさ、是非またお相手願いたいもんだと」そのまま川村は加藤にキスした。ち、違うだろ。僕たちは謝りにきたはずだったろ。何してるんだ。
「いいわ、脱ぐわ」
「5年前と違ってえらく素直じゃないか」
「1週間ほど前から、マンションの近くでこの部屋を見てる男がいるのは知ってたわ。それが誰かってことも」じゃ、加藤はそれが僕だってことに気付いてたんだ。とてもじゃないが謝るような雰囲気も出なかった。
Tシャツ脱いでブラジャーも外し加藤の胸が弾けた。
「あんた達って5年前と同じことしてるのね」
5年前と同じことしてる!?それはどういうこと?
(続く)