でも、今はこうして明るくなってるし、お前が笑うとこ見たの久しぶりだよ。小田島君と付き合ってやっと自分らしさが取り戻せたのかって思うよ。良かったな、裕美。それと有難う、小田島君。君はいい奴だな」
「有難うございます。ですが助けられたのは本当は僕の方ですから。・・・僕の高校時代は根暗な毎日でしたが、大学入って裕美さんと付き合っていくうちに少しずつですが明るくなりましたし、今は責任感が大きく背中に乗っかってますよ」
「ふーん、まだ学生の身なのにしっかりしてるな。根暗って言われてもちっとも感じないし。小田島君なら変なことには突っ込みそうにないから安心できるよ。5年後も10年後も裕美を君に任せても構わない。責任感か、俺はもう放棄してるからな、横山の家は」
「お兄ちゃん、もうお父さんの会社には戻らない?」
「馬鹿なこと訊くなよ。俺は一生ブロキャスに捧げるつもり。マスコミも景気悪いけどITよりはまだまだましだしな。あいつの会社もどうなるんだろうな?しきりと中国系資本が入ろうとしてるみたいだけど」
「そうなんですか?」
「ITに限らず今の日本の家電とか車のメーカーとか大変なの知ってる?凄い赤字決算だったろ?」
「テレビのニュースとかネットでやってましたね。どうなるんでしょう、これからの日本」
「考えないこと。自分の会社が海外に乗っ取られないよう、出来るだけ大きな資本のある会社に入るのがいいだろうね」
「僕はまだ業種も決めてませんけど、出来ればやっぱり教師になりたいと思ってます」
「やめとき!あ、悪い。でも少子化は知ってるよね?」
「ええ、まぁ」
「日本の将来は少子化でどんどん高齢化して駄目になる。ましてや教師なんてまず入れないって。何十倍もの今一番の狭き門じゃないかな。吸収されにくい民間企業に行くべきだよ」
「そうですか?でも将来の道がまだ見えてこないものですから・・・」
「それはこれからじっくり考えたらいい。まだ1年だから時間はある。出来ればTOEICみたいな資格取っとけば就職に有利だよ」
「はい、智さんにこんなところでアドバイスいただき有難うございます。まだ就職のことは考えてませんでしたが、これからじっくり考えて進めていきたいと思います。もっとも教員試験は受けるつもりですが」
「何でもチャレンジだ、頑張れよな、あ、名前何て言うの?」
「鮫行です」
「さめゆき?変わった名前だな、ま、さむゆき君のこれからに期待してるよ!」
「有難うございます」
(続く)

