遠い星136(真実の裕美編⑥) | たろすけ日記
「予定入ってるんだ。残念」仕方ないか。俺も自然俯く姿勢になろうとしたら、

「聞いてくれる?」裕美が立ち止まって俺の顔覗きこんだ。俺も立ち止まって、

「何?」

「・・・あのね、・・・今晩泊めてくれないかなって思って」え?泊まるって!?

「どこに?」

「鮫君のレオパレス」俺の部屋?でもどうして急に?いや、今の裕美の感情なら分かる気がする。

「今日?」

「お願い!」裕美のひたむきな眼差しに拒否は許されない。尚更こんなときはすぐに返事した方がいいに決まってる、何も異論なく。

「いいよ。でもお母さんには?」

「いいの、また嘘つくけど」

「分かった。じゃ、おいでよ。2日のときみたいに手繋いで眠ろう。こんなことがあるかもっていうか、家族が来たときのために布団も買ってるし。真っ新だから気持ちよく眠れると思う」

「うん、アリガト。でも、ゴメンなさい。またワガママ言っちゃった・・・」俺には今の裕美の苦渋が分かってたので、

「全然いいよ。前にも言った通り二人三脚が俺たちのモットーだって」

「こんなときはスッゴク頼りになるから・・・好き。お願い、私を離さないでね」じっとひた向きに見つめる裕美を見て、

「頼りにしてもらってアリガト。ホントは今思いっきり裕美抱きしめたいけど人がいるから無理。でも、今晩のご飯とかどうしよ?部屋には冷凍物しかないし、そんなの裕美には食べさせら
れないし・・・、どっか食べに行く?」

「ううん、何も要らない。一緒にいるだけでいい」

「そういうわけにもいかない。こんなときはとにかく食べること。どっかで外食しよう」

「嫌、だったらお酒飲もう。こういうときはお酒飲んだら直る」

「お酒か。いいね。最近飲んでないからたまにはいいかも。でも、また裕美らしいワガママ始まったな。いいけどね。俺は裕美のそんなとこも好きだし」

「・・・ゴメンなさい。お酒はいいです。でも食事もいい。食欲ないもの」

「お酒は飲もう、俺の部屋で。これも初めてだよね、俺の部屋でって?でも、食事は摂らないとダメ。・・・そうだな、こんなときに何か作ってもらうのは遠慮したいし、弁当とかでも買ってみようか?裕美なら多分初経験かもしれないけど」

「お弁当?食べたい!でも、コンビニとかのお弁当は嫌」

「・・・そうだな。裕美でも食べられそうな弁当屋っていうと、ほっともっとかな?こっから近いけど一緒に行こうか?」

「うん、一緒に行く!」その店は新目白通りなので近いといえば近い。そのまま足をそっちに向けた。
(続く)