「お姉ちゃんも思うでしょ。裕美さんみたいな人がよりによってお兄なんかと付き合ってるって、前代未聞だよね」志奈子。
「言える範囲でいいから教えてよ」姉ちゃん。
「・・・一目ぼれみたいなもんだよ、な」俺。
「・・・そうですね」裕美。
「それじゃちっとも分かんない。どうやって知り合ったの?」姉ちゃん。
「ナンパで」俺。
「嘘おっしゃい!あんたがそんなこと出来るわけない」姉ちゃん。
「あー、言うよ言うよ。俺たち同じ速記部なんだけど、6月のもう半年前か、合宿があって、そんときの宴会で彼女飲めないお酒飲んで気分悪くなってたのを介抱したんよ。それがきっかけ」俺。
「あのときの私ってバカでした。飲めないのにみんなが楽しんでるの見てたら飲んでみようって思っちゃって」裕美。
「元々お酒弱いんだ」姉ちゃん。
「はい、苦いだけです、私には」裕美。
「そういう彼女なんでお酒は駄目なの」俺。
「で、そのきっかけがずっと続いてるの?もう半年になるけど」姉ちゃん。
「まぁ一応」俺。
「そうですね」裕美。
「あんたもエライ変わったね。高校のときは誰が見ても根暗にしか見えなかったのに。でも、裕美さん、アリガトね。こんな頼りにならないの相手にしてもらって。少しは心配してたんだぞ、鮫行」姉ちゃん。
「姉ちゃんには悪いけど、俺今も根暗だよ。一人のときは誰とも喋らないから根暗。たまに一人酒してネットしてるし」俺。
「そんなのは普通でしょ。根暗って言うのは家族といても黙ってた高校時代のあんたのこと。今はホント普通になったね」姉ちゃん。
「普通以上に生意気になってる。私のこと小ばかにするし」志奈子。
「はいはい、ごめんなさい。昔はいっつもネガティブにしか考えなかったけど、大学も第一志望入ってこうして彼女みたいな女の子と付き合ってる俺の人生、毎日がバラ色だよ」俺。
「しょってるな。あんたホント変わった。顔つきも前みたいなウジウジした顔じゃなくなったし」姉ちゃん。
「ご馳走様。彼女と付き合い始めて俺も変わることが出来た。もし裕美がいなかったら・・・高校の延長の毎日送ってたろうな」俺。
「でしょうね。ま、あんたが明るくなってくれて良かった。ホントアリガトね。裕美さん」姉ちゃん。
(続く)