「その・・・ね、・・・指切りして」どこか躊躇いがちな裕美が手を出してきた。
「いいよ。また今回はどんな約束?はい、指きりげんまん・・・」そのまま右手同士の指きり始めた。
「嘘ついたら、針千本呑~ます」裕美にとっての薬のような指きり。何となく安心した表情を浮かべた。何の指きりかは教えてくれなかったけど。
「寒いからもう帰ろ。ここには神社もないし。歩きながら話そうか」
「うん」もしかして裕美は今日のこと反対するのかなと思いつつ、行きと同じように手をつないで家に向かって歩き始めた。周りは静かで歩いてる人もいない。
「・・・もしかして言うの止めて欲しいとか?」
「ううん、そうじゃなくてね」
「何でも言ってよ」
「私・・・今とっても幸せなんだ」
「俺だって。あ、缶コーヒー飲む?」自動販売機が見えたので買おうと思った。
「うん、飲みたい」裕美はブラックでよかったよね?」頷く裕美を見て、財布取り出してボタンを押した。俺はカフェオレ、裕美にブラックコーヒー渡して「で、何だっけ?」
「アリガト」とぼとぼ歩く二人。何か別れ話でもしてるような雰囲気だな。「・・・私ね」
「うん」
「このままでいいのかなって思ってるの」
「何が?」
「私の父のことはまだ何も進んでないよ。でも、それ以外はもう障害がないよね」
「そうだね。お父さんとは近いうちに会えたらいいと思ってるし。障害っていったらそれ位かな」
「それが怖いの」急に立ち止まって俺の顔覗き込む裕美に俺もずっと裕美を見つめてしまった。
「どうして?今の俺たちに怖いもんってあるわけない」そのまま顔をそらし歩き出した。
「ひょっとしてさっきの指きりってこのこと?」
「うん・・・、でも」
「でも?」歩きながら裕美の顔見てみるととても真面目な顔してた。
「いつかは今がなくなりそうな気がして」
「考えすぎだよ。今は俺たちが生きてる限り永遠に続くよ、絶対」
「絶対?」
「絶対だよ」
「ホントに?」
「うん、本当に」
「分かった・・・」
「・・・ホントかなぁ?」
(続く)