遠い星19帰郷編⑧ | たろすけ日記

「・・・」いつものようにだんまりの寡黙な口調で妹が帰ってきた。
志奈子(しなこ)って名前。こいつは相手にしないほうがいい。高二のくせに個性が有り過ぎ!

さっぱりしてるって裕美には言ったけど、ほとんどだんまりで俺以上に話さない。でも気に入った相手とはとことん話す奴。
テニスの部活から帰って来て、志奈子も裕美が来てることは知ってたようで何かいつもと違って慌しい様子で居間に顔見せ、
「こんにちは!」いきなり陽気な笑顔を見せる始末。「横山さんのこと楽しみにしてましたぁ!」えぇ、こんなのありかよ!?いつも無愛想な奴なのに。

「お帰り、俺も帰ってるで。こちら・・・」平静を努めて言ったものの、

「分かってる!」睨む志奈子。何や関心あるのは裕美だけか!?

「こんにちは、横山です」裕美は居たって平然としてる。

「横山さん見てビックリです!こんな綺麗な人ちょっといないな!クッキリ眼でほっそりしてるしぃ!あ、あたし、志奈子です。今日楽しみにしてました!」何や躁状態?でもお前も部活で疲れてるんじゃ・・・?後が続かない。俺を指差しながら「あたし、これに彼女が出来るなんて思ってなかったしぃ!」笑い飛ばす志奈子。俺も呆れてしまった。

「はぁ・・・」ほとんど沈黙の裕美。

「こんな根暗な朴念仁に彼女が出来るのが不安でしたけど、もうこれの彼女って呼んでいいんですよね?」と笑顔の志奈子。

「お前なぁ」とムカつく俺に、

「着替えてくるんでまた話しましょ!」とっとこそのまま出て行った。志奈子が出て行った後、

「・・・ごめん、ウチの家族って変なのばっかりだから」

「明るい妹さんね」

「いつもは暗いんよ」俺も実際戸惑った。『彼女』って志奈子が言ったものだから何か恥ずかしかった。まだまだそんな関係には思えないんだけど、あのときの指きり思い出したらそう言ってもいいのかなぁとも思った。おかしいのかな?

妹は普段着に着替えて降りてきてすぐ、
「横山さん!」っていきなり切り出してきて、俺はさっきのいちゃもん言われるのがシャクだったので、
「志奈子、おかん手伝え!」って言ったら、

「鮫に言うてない!」って言われたもんだから、もう、こいつって思って、

「何!?」

「私も志奈子ちゃんとはお話したかったの」と裕美が助け舟出す始末。

とたんに志奈子が
「良かったぁ、これからどんどんお話しましょ!」と訳分からん。

「これからよろしくね」って裕美が言ったとたん、

「ねぇねぇ、これのどこが良かったの?それ一番訊きたいんです!横山さんみたいな綺麗な人が信じられない!」と言う始末。

俺たちはお互い眼をパチクリさせながら、
「いきなり変なこと訊くなって!お前に言われとぉない!」

「鮫に聞いてへん!」いつものこいつの喋くりパターンに陥ってしまう。

「志奈子さん」突然いつものしおらしい裕美に戻り、「私が小田島君と付き合ってるのは私にないものが小田島君にはあるからなの。別に変な気持ちで付き合ってるんじゃないの。分かってくれるかな?」

暫し沈黙・・・。しっとりした裕美の態度に志奈子も納得したようだ。

「ふーん。横山さんて変わってるなぁ。でも、それ以上にあたし横山さんのこともっと知りたい!」

「お話できることは何でも話すわ」

「じゃあじゃあ―――」と取りとめもなく裕美に聞いてくる志奈子だった。「東京のこととか・・・」
俺は裕美と志奈子が仲良くなってるのを見ていて安心した。志奈子は好き嫌いがはっきりした奴なので、もし裕美を嫌った場合ここも長居出来ないと思ってたから。長居といっても2泊3日だけどな・・・。

「あたし、横山さんのこと気に入っちゃった!これから裕美さんって呼ばせてもらってもいいですか?」

「ええ、もちろん構わないわ」・・・気に入った人にはとことん好きになる志奈子の癖が始まった・・・。俺自身二人の会話聞いてて分からない話題もあったが満足した。志奈子って妹の第二関門は突破できたなって思った。
(続く)