ごんざの辞書のかきかえ132「したつる」と「ゆする」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

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1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」『ごんざ訳』 村山七郎注   

 

「ползованiе」(polzovanie) 「利益」  『ゆするこ』 良くすること

 

 鹿児島県立図書館の原稿コピーをみたら、ごんざははじめに(ш)(sh)とかいてから、それをけして『юсуркотъ』(yusurkot')『ゆするこ』とかきかえていた。

 

 はじめにかいた(ш)(sh)は何か。

 

 みだし語は村山七郎訳のように「利益」のことらしい。

 

岩波ロシア語辞典 「полезный 1役に立つ;ためになる、有益な;利益のある。」

 

 そういう意味で(ш)(sh)からはじまることばをごんざの辞書の中からさがすと、

 

「содЕйствую」(sodeistvuyu) 「協力する」  『したつる』

cf. シタツル(為立つる)整える、または、準備する。フィトヲシタツル(人を為立つる)

 人に金銭を与えたり、援助したりなどして、その人が一人前の人間になるようにしてやる。

 日葡.

 

岩波ロシア語辞典 「содействовать 1協力する、助力する、援助する。2助成する、促進する;助けとなる、寄与する。」

 

 『したつる』は(ш)(sh)からはじまるし、意味もちかいとおもう。

 

 『したつる』「助けとなる」から『ゆする』「役に立つ」にかきかえたんじゃないだろうか。