「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」 『ごんざ訳』 村山七郎注
「чадъ」(chad') 「炭酸ガス」 『けむい』 煙
「чадныи」(chadnyi) 「炭酸ガスの」 『けむいのと』 煙の
「чадю」(chadyu) 「炭酸ガスを発散する」『ふすむる』 ふすむる
村山七郎注 cf。フスボル 燻る、くすぶる。徳島・広島・石見・長崎県千々石。TZH.
これだけみると、「炭酸ガス」(=二酸化炭素)という概念がわからないごんざが、くるしまぎれに『けむい』(煙)という訳語をかいたようにみえる。
でも、実際にはごんざ訳がただしくて、村山七郎訳がまちがっている。
岩波ロシア語辞典 「чад 1(生木・石炭・油などがくすぶる)むせるような煙、臭気。2(意識・理性)を麻痺させるもの、毒気。」
「чадъ」(chad')は、煙突からたちのぼるふつうの煙ではなくて、不完全燃焼によって人のいる風呂場やペチカのそばにこもる不快で有害な『けむい』(煙)、つまり一酸化炭素をふくむ煙のことらしい。
村山七郎訳は一酸化炭素と二酸化炭素をまちがえてしまったんだろう。