ごんざの辞書のみだし語の重複7 数詞 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

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1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

 数詞の中には、微妙につづりがちがうものが重複しているものがある。

「ロシア語」(ラテン文字転写)    「村山七郎訳」 『ごんざ訳』

「трепутныи」(treputnyi)      「三本道の」  『みつみちの
「троепутныи」(troeputnyi)     「三つの道の」 『みつみちの

「тройныи」(troinyi)         「三重の」  『みいぇん』(三重の)
「троеныи」(troenyi)        「三重の」  『みっつぃねた』(三つになした)

 数詞は聖書にたくさんでてくる大切なものだから、ごんざの辞書にでてくる数詞は、教会スラヴ語が優勢だ。
 だけど、数詞にほかのことばがくっついたものの中には、ロシア語と両方でているものもある。

「одноокiй」(odnookii)        「1つ目の」  『ふとつめん
「единоокiй」(edinookii)       「一眼の」   『ふとつめん

「однорукiй」(odnorukii)      「1つ手の」  『ふとつちぇん
「единорукiй」(edinorukii)     「1つ手の」  『ふとつちぇん

 上がロシア語で下が教会スラブ語だ。

 11から19までの数はおもしろい。
 11と14は、みだし語になっていない。12はロシア語のつづりから教会スラヴ語のつづりにおくっている。17、18、19は教会スラヴ語で、なぜか16だけロシア語だ。
 そして、13、15は重複している。

「трети надесять」(treti nadesyati) 「第13」『じゅさん』(ロシア語)
「тринадесят(н)ыи」(trinadesyat(n)yi)「第13の」『じゅさんの
                               (教会スラヴ語)

「пятнат[д]цатыи」(pyatnat[d]tsatyi)「第15の」『じゅごん』(ロシア語)
「пятьнадесятыи」(pyatinadesyatyi)「第15の」『じゅごん』(教会スラヴ語)

 辞書の中にロシア語のアルファベット順にちらばっている数詞を、体系的にそろえようなんてことは、ボグダーノフ師匠はかんがえなかったんだろうな。