「ロシア語」(ラテン文字転写) 「村山七郎訳」『ごんざ訳』
「носокъ у обуви」(nosok' u obuvi) 「靴の先」 『くつのふぁな』
「конецъ」(konets') 「端」 『くち』
ロシア語の「носъ」(nos')が「鼻」だから、ごんざは「鼻」を意識しているんだろうけど、(さきっぽ)という意味の漢字が「鼻」か「端」かなんてことは、漢字をしらないごんざには関係ないことだ。
それより、船のりのごんざにとっては、つぎのことばの方が大切だろう。
全国方言辞典 東條操 「はな ①岬。岩手県釜石・千葉県長生郡・伊豆大島・岡山県邑久郡・広島県倉橋島・島根県簸川郡・高知・長崎県千々石・熊本県天草島・奄美大島 ②船のへさき。栃木県河内郡」
ロシア語の「конецъ」(konets')は、英語の「end」とおなじように(おわり)という意味と(さきっぽ)という意味をあらわす。辞書をひく人にとっては、両方の訳語をかいておいてほしい。
(さきっぽ)をあらわすごんざの訳語の『くち』は、私はつかわないことばだけれど、辞書にはでている。
日本国語大辞典 「くち(口)(2)⑥物の端(はし)。へり。ふち。⑦物の先端。かど」
ごんざは別の著作の『日本語会話入門』の中で、十字架の4つのさきっぽのことを『くち』と訳している。
ごんざにとって(さきっぽ)は、鼻でもあり口でもあったんだろう。
獣の(さきっぽ)は鼻だし、魚の(さきっぽ)は口だから。