ごんざの「かわめんたい」 | ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

ゴンザのことば 江戸時代の少年がつくったロシア語・日本語辞書をよむ

1728年、船が難破して半年後にカムチャツカに漂着した11歳の少年ゴンザは、ペテルブルグで21歳でしぬ前に露日辞書をつくりました。それを20世紀に発見した日本の言語学者が、訳注をつけて日本で出版した不思議な辞書の、ひとつずつの項目をよんだ感想をブログにしました。

「ロシア語」(ラテン文字転写)「村山七郎訳」     『ごんざ訳』

「мень」(meni)      「かわめんたい(魚)」  『あんこ』
「налимъ」(nalim')     「カワメンタイ(魚名)」 『あんこ』
                              村山七郎注「鮟鱇」

 「カワメンタイ」(淡水産のタラ)は、ごんざが日本でみたことがない、北の川にいるおおきい魚だ。ごんざは川にいるあやしい魚に『あんこ』という訳語をつけた。
 村山七郎教授は、ごんざの別の著作の「項目別露日単語集』の『あんこ』の説明には「淡水魚ひげ」とかいている。川にいる『あんこ』はアンコウ鍋のアンコウではなく、「サンショウウオ」のことだ。

日本国語大辞典 「あんごう さんしょううお(山椒魚)の異名。」
日葡辞書 「Anco, Ango アンカウまたはアンガウ 川魚の一種で、足のある魚」。

 この「あんごう」ということばは、「探偵ナイトスクープ」という関西で人気のある番組からできた「全国アホバカ分布考 はるかなる言葉の旅路」松本修 という本に、「アホバカ」の意味の岡山の方言としてもでてくる。

 図鑑で「カワメンタイ」の写真をみると、もちろん足はないけれど、おおきくてあやしい奴だ。

 チェーホフは「налим」(nalim)「カワメンタイ」という短編小説をかいている。川のあさいところにいるおおきいカワメンタイを手づかみにしようとして、いろいろな人物がやってきて、最後の最後、おしいところでにげられる、という、「おおきなかぶ」の反対のような話だ。