#映画 #タクシー運転手ー約束は海を越えて  #光州事件 #金大中東京誘拐事件 #大平正芳 | Gon のあれこれ

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読後感、好きな太極拳、映画や展覧会の鑑賞、それに政治、ジャーナリズムについて、思いついた時に綴ります。

1969年軍事クーデターで政権を握った朴大統領(昨年逮捕された第18代大統領の朴槿恵は次女)

 

因果は巡り、その朴もまた1979年暗殺されて、一時は民主化の期待は膨らむが、12月保安司令官の

 

全斗煥が軍の実権を掌握して翌80年5月に全土に戒厳令を布告して有力政治家等を逮捕軟禁した。

 

そのうちの一人金大中は全羅南道の出身で光州では特に人気があった。

 

更に5月18日大学を封鎖、そこから軍と学生が衝突、軍の暴力は次第に激しさを増し、これを見た

 

一般市民は激怒してこれに加わり郷土予備軍の武器庫から武器を奪って対抗した。

 

しかし兵器の質量の違いから結局27日、9日間の暴動は鎮圧された。

 

軍は光州市への道路を封鎖、ソウルや250K東の釜山などから記者が入り込むのを阻止したが、

 

ドイツ公共放送の東京駐在特派員であったユルゲン・ヒンツベーターは宣教師と偽ってソウルに入り、

 

そこからタクシーを雇って光州に入る。

 

運転手のキム・マンソプ(ソン・ガンホ)は大学生や広州市のタクシー運転手ファン・テスル(ユ・ヘジン)

 

らの、この暴虐を世界に伝えてもらいたいと記者のヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)の撮影と

 

光州脱出を助ける。

 

 

 

この実話に基づくジャーナリズム映画は、米国映画の大統領ニクソンと対峙したニューヨークタイムズや

 

ワシンポスト、教会権力と対峙したボストン・グローブとは全く趣の違う、全体主義国家のむき出しの

 

暴力に抗して報道した物語である。

 

しかし映画は同時に笑いとペーソスに満ち、思わず笑い、思わず涙する、そんな市井の人の魅力に

 

あふれた映画となっている。 とりわけ光州の運転手を演じたユ・ヘジンはオーセンティック、というか

 

実在感を文句なく感じさせる。

 

この映画は昨年韓国で1200万動員した、とあるが事件当時20代であった人たちが今は60歳前後に

 

なり、2016年から17年の朴槿恵大統領を退陣に追い込んだ「ローソク革命」の今の若者世代も

 

この映画から感じるものはとても多いのであろう。

 

見ていて思い出したのは光州事件に先立つ1973年、有力な朴大統領の対抗馬とも見られていた

 

金大中が、東京のグランドパレスホテルから韓国KCIAに拉致された事件である。

 

当時、我が国の主権を犯されたにもかかわらず、さしたる抗議もしなかった田中角栄政権

 

に私は批判的であった。

 

しかし、金大中はその後市民権を回復して大統領になったけれども、もし仮に日本政府が声高に

 

韓国政府に抗議していれば、金大中は日本海に投棄された可能性が高かった。

 

当時の外務大臣は思慮深い大平正芳であった。

 

金大中を拉致した船が日本海上にある時、日本のヘリが上空から威嚇して金大中の投棄を阻止した、

 

とされる。

 

この日本政府の大人の対応によって金大中の命が救われた、と言う事実も韓国の皆さんには

 

知っておいて欲しい、と今は思う。

 

この映画はシネマート新宿で9時半開始で観たのだが、当日は盛況であった。

 

観客も40代から20代、と比較的若い世代が多かった。

 

最後に付け足しになるが、この光州事件は当時の軍事政権のプロパガンダによって、北朝鮮が

 

背後にある、と宣伝され、事件に参加した学生、一般市民を「アカの手先」「反社会的勢力」と

 

レッテルが張られた。

 

その後金泳三、金大中、廬武鉉と文民政権が続く中で事件は見直しされ、事件の死者たちへの補償

 

や全斗煥への実刑判決などがあり、北朝鮮関与説は払しょくされた

 

一方「光州事件は金大中と北朝鮮特殊部隊が起こした」とする元韓国陸軍大佐の著書が、市民団体から

 

名誉棄損で訴えられたが、2012年韓国最高裁は「光州事件が民主化運動として既に法的・歴史的評価

 

が確立されており、これによって訴えた人の名誉が改めて毀損されたとは言い難い」として著者を

 

無罪とした。しかしよせばいいのに日本の櫻井よしこはこの無罪を以て「北朝鮮の工作だったという

 

主張は認められた」と歴史を歪曲する者らしい言論を吹いているらしい(ウイキペディア光州事件より)

 

これを見て思い出すのは、福島第一原発事故のさ中に安倍晋三が読売と組んで飛ばした「菅直人が

 

海水注入を止めた」とするデマ

 

菅直人はこのデマに対し名誉棄損として訴えたが、一審で敗訴、上訴審で棄却された事件である。

 

デマであることを裁判所は認めたものの、「海水注入による再臨界の可能性を強い口調で質問した

 

ことをもって、菅の側にも「止めた」と受け取られない言動があった、とされた。

 

再臨界は大変な事態であるから最高責任者の菅が強い口調で質問することが何の問題がるのか、

 

と言う疑問に加え、裁判所や検察も天下りなどを通じて「原子力ムラ」の一角を占めており

 

法曹に対する信頼を大いに傷つける判決であった。

 

そして裁判所は安倍のデマを認めているにもかかわらず、安倍は「完全勝訴」といって宣伝している。

 

このあたりが櫻井といい安倍といい、歴史を歪める者たちの常套手段なのであろう。

参考:

https://buzzap.jp/news/20170223-abe-alternative-fact/