『光る君へ』の公式サイトを見てみたら、なんと藤原惟成(これしげ)のキャスティングが新たに発表されておりました。

 

大河ドラマ「光る君へ」 第4回の相関図・キャスト(外部リンク)

 


藤原惟成@吉田亮さん
2024年大河ドラマ『光る君へ』より

 

「藤原惟成って誰…?」というと、リンク先の人物紹介でも書かれている通り、師貞親王の乳母子(乳母兄弟)

 

乳母の役目はオッパイ与えるだけなんて考えていたら、大間違い。

 

幼児のころは皇子の成長を見守り、大きくなってからは教育までやらねばならない。

 

皇位継承のライバルが多かったら、熾烈な権力闘争から守り抜かねばならない。

 

重い重い役割だったのです。

 

だからこそ、もし皇子が権力の座に就いた時の効果は絶大。

 

師貞親王が即位して花山天皇となると、惟成は重臣に取り立てられ、権勢を振うことになったといいます。

 

そんな彼が登場するということは、いよいよ花山朝の幕が切って落とされる…ということになりそうですねー。

 

 

惟成は、天暦7年(953年)生まれなので、道長の兄・道隆と同い年(道長の13歳年上)

 

彼もまた「藤原さん」ですが、系統としては道長とは遠い親戚で、「魚名流」の人になります。

 

魚名は以前にも触れたことがありますが、「藤原北家」の祖・房前(ふささき)の五男。

 

魚名が見た夢(参考)

https://ameblo.jp/gonchunagon/entry-12728328493.html

 

道長から見ると250年くらい遡った先祖(祖父の祖父の祖父)である真楯(またて)の弟です。かなーり遠いですね(^^;

 

藤原氏略系図(藤原北家)

 

ところが、惟成の母親は藤原中正の娘でした。

 

中正は、『光る君へ』で声優の三石琴乃さんが演じたことでも話題になった時姫の父でもありました。

 

つまり、惟成に限って言えば、実は「道長たちの母方の従兄弟」という身近な関係でもあったりします。このあたり、大河ドラマでも出てきますかね…?

 

 

ちょっと話がそれますが、系図でも書いたように中正の三男・安親(やすちか)の孫娘は、道隆の妻となって、道頼(みちより)が生まれています。

 

道隆の子というと、定子や伊周、隆家といった高階貴子(儀同三司母)の子たちが思いつきますが、道頼の方が先に生まれた長子でした。天禄2年(971年)生まれなので、伊周の3つ上にあたります(道長の5つ下)

 

定子を后がねとして育てる都合上、伊周たちの方を嫡流としたので、道頼は庶長子となってしまったのですが、祖父にあたる兼家が可愛がって(初孫ですもんね)、道隆に乞うて養子にしています。

 

まぁ、大河には出てこなさそうなので、道隆にはそんな子もいたんだよ…ということで…(もし出てきた時は、昇進面で異母弟の伊周と行動を共にしているので、そこに注目ですね)

 

それにしても、中正の子孫たちは、どうしてこうも兼家一家と関係が深いのだろうか。中正の父・山蔭は清和天皇の皇太子時代からの側近(春宮大進→蔵人)ですが、その時の蔵人頭が、兼家の祖父にあたる基経だった…その縁が生きているんでしょうかねぇ。

 

ともあれ、「円融天皇の即位と師貞親王の立太子」を目指した兄・伊尹を、陰に日向に支え完成させた兼家は、その功績も手伝って、妻の姉妹である惟成の母を師貞親王の乳母に推挙できたと考えられます。

 

こうして、惟成は師貞親王の乳母兄弟となりました。師貞親王は安和元年(968年)生まれなので、惟成のほうが15歳年上です。

 

円融天皇の元では「従五位上・左少弁・東宮学士」。「東宮学士=東宮の教育要員」ということは、為時と同じ係だった…ということですかね?(為時は「侍読」ですが)

 

花山天皇の受禅に伴って五位蔵人に補され、やがて左衛門権左、権左中弁を兼ねて「三事兼帯」の栄誉を達成。花山朝における無視できない存在に成り上がっていきます。

 

歴史小話集『古事談』によると、この頃に「髪を売ってでも夫のために尽くした糟糠の妻」を、新たな地位に相応しい奥さんを手に入れるべく離縁した…と言われています。もし本当なら中々のクズ野郎ですな。

 

なお、新たに迎えた奥さんは、河内源氏・満仲の娘だったと言われます(満仲は頼朝の8世先祖)。この頃の河内源氏は、まだ内紛で弱体化する前の軍事貴族だったので、「新たな地位に相応しい」は否定できないかもしれないですね。

 

ちなみに師貞と惟成の仲はどうだったのかというと、師貞は惟成の烏帽子を奪い取るのが好きで、惟成を度々困らせていた…と『古事談』にあるそうです(SNSで教わりました)

 

平安時代、烏帽子を外されて頭が丸見えになるのは、ズボンを下ろされてスッポンポンになるのと同じくらい恥ずかしいことだったと言われます。

 

なので、これを「仲が良かった」と見るか「惟成は敬遠していた」と見るかは、解釈が分かれるところですかねー。

 

(捕捉しておくと、花山天皇は「みんなの烏帽子を獲るのが好き」だったようです…惟仲はそのうちの1人ということですな)

 

(第4話の次回予告で「烏帽子を奪われている人」がいましたけど、これが惟成っぽい…かな…一瞬なので判別が…)

 

 

 

花山天皇の母・懐子は、伊尹(道長の伯父)の娘なので、本来は伊尹が外祖父として権力を掌握するところなのですが、即位より12年も前(972年)に薨去していました。

 

嫡男の義孝(行成の父)も相次いで亡くなっていたため(974年没)、伊尹の五男にあたる義懐(よしちか)が外戚としての責務を担うことになります。

 

なお、前述の惟成は義懐の側近を務めていたようです(年齢は惟成のほうが4つ上)

 

義懐は天徳元年(957年)生まれなので、花山朝が始まった時は27歳。花山天皇の受禅に伴って蔵人頭に進み、円融朝から引き続き再任された実資と同僚となります。

 

花山天皇が即位を遂げると、蔵人頭を去って短期間で従二位・権中納言にまで一気に駆け上がりました。実資は「外戚いいなー(意訳)」と『小右記』に記しています。

 

父・伊尹と兄・義孝の亡き後、兼通や頼忠に権勢を持って行かれた義懐は、立て直しを図るべく叔父の為光(ためみつ)と組む策に出たようで、義懐の妹が為光に嫁ぎ、また為光の娘を自身が娶り、二重の縁戚を結んでいます。

 

一応確認しておくと、為光は兼家の異母弟で、四納言の1人・斉信の父にあたる人物ですね。

 

 

為光は、円融朝では中宮・藤原媓子(兼通の娘)の中宮大夫を兼ねておりました。

つまり、兼家の宿敵だった兼通の側にいた人。「敵の敵は味方」論法による取り込みだったかもしれないですかね。

 

 

ついでに言うと、義懐の別の妻は、長良流藤原氏の為雅の娘なのですが、彼女の従姉妹が、紫式部の母にあたります(『光る君へ』では「ちやは」)

 

大河ドラマでは、為時は兼家のコネで師貞親王の教育係になっていますが、本当は義懐と繋がっていたこの縁で、その仕事にありつけていたのかもしれないですね…?(本当のところは分かりません)

 

閑話休題。為光の娘・忯子(よしこ)は大変な美人だったようで、花山天皇は一目惚れしてしまいます。

 

そこで、義懐を仲介して娘を入内させるように為光を説得。こうして為光は天皇の寵姫の父となりました。

 

この娘が、後に大変な出来事のきっかけとなってしまうのですが、それは大河ドラマでオタノシミニw

 

 

 

花山朝において「関白」の座は、前の円融朝から引き続き頼忠が勤めました。

 

またもや確認しておくと、頼忠は小野宮流(道長の大伯父・実頼の系統)の人で、四納言の1人・公任の父。実資の伯父にあたります(実資は祖父・実頼の養子となったので、義理の兄にもあたります)

 

大河ドラマでは、あの声の小さい頼忠ですね(笑)

 

 

本当は嫡流のはずの小野宮流は、どうあっても天皇の外戚になって本流を取り戻したい。

 

円融天皇に遵子(のぶこ)を入内させて、皇后にまで押し上げることに成功。公任は「こちらの女御さまは、いつ后になるのでしょうか?」と詮子に軽口を叩いて(むしろ失言レベル)ムッとされています(大河ドラマでは描かれませんでした…)

 

しかし、ついに皇子を手に入れることはできず、次代の花山天皇の皇太子には、詮子の子である懐仁親王が立ち、外戚対策は完全に後れを取ります。

 

花山朝に移ったことは、遵子が無駄になってしまいますが、新たなチャンスでもあり。今度は遵子や公任の同母妹にあたる諟子(ただこ)を花山天皇に入内させています。

 

しかし、諟子はキャスティングが発表されていません…登場しないんでしょうか…?

 

こうして全く外戚関係にない小野宮流の頼忠は、「関白」でありながら存在感が小さくなっていた…とされます。

「小さい声」は「発言力が弱い」と通じているようで、中々に上手いキャラ付けですな(笑)

 

 

というわけで、以上をまとめてみると、無力な関白・頼忠が巻き返しを図る中、乳母子の惟成外戚の義懐に政権は牛耳られ、さらに寵姫の父・為光も権力争いに参戦。

 

大河ドラマでは存在感が薄いですが、一上には左大臣・源雅信がいて、中立のような立場を取っていました。

 

そこに「権力欲の鬼」たる兼家が皇太子の外祖父として虎視眈々と様子を伺って、朝廷の権力は3つにも4つにも分裂していたと言われます。

 

そんな状況の上に、あの奇人ぶりではバツグンの花山天皇が君臨w

 

 

もはや戦国時代並みの波乱が待っているとしか思えない錚々たるメンバー(笑)

 

 

「おそれながら、師貞親王様が今すぐ次の帝にお成りあそばされれば、世は乱れます」(『光る君へ』第3話「謎の男」藤原実資の台詞)

 

 

『光る君へ』の花山朝…どうなっていくのか、楽しみでございますね♪

 

 

 

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大河ドラマ『光る君へ』放送回まとめ
https://ameblo.jp/gonchunagon/entry-12837757226.html