ゼロ・ウェイストのまちづくり
水俣宣言
水俣市
1.前文
私たち水俣市民は、水俣の豊かな自然と文化に育まれてきました。
雲がたなびく矢筈岳、愛林里、冷水の森、清ら湯出川、水俣からの流れ、不知火の海に恋路島そんな豊かな暮らし中で、私たちは水俣病の経験をしました。
水俣病は、工場から海へすてられた水銀が食べ物のつながりを通って起きた病気です。
たくさんのいのちが傷つき、失われ、人をとりまく社会も壊れました。
「自然はすべてつながっている。自然にすてたものはいつか戻ってくる」
水俣病は「自然と共に生きる」ということの意味を私たちに教えています。
私たちが考える「ゼロ・ウェイスト」とは、
資源やエネルギーの消費を“できるだけ減らす”
暮らしの中で使うものをムダなく“できるだけ回す”
自然にすてなければならないごみを“限りなく減らす”
そして、そのための暮らしやしくみを“みんなでつくり、支えていく”
ということです。
世界中に「ゼロ・ウェイスト宣言」をするまちが広がりつつあるのは、
「将来にわたって誰もが安心して暮らせる社会をつくっていきたい」という思いを、
世界中のみんなが持っているからです。
それは、私たちが1992年から進めてきた「環境モデル都市づくり」に込めた思いと同じです。
私たちの思いが向う目標のために、そして同じ思いを持つ仲間どうしがつながるために、
私たち水俣市民は「ゼロ・ウェイストのまちづくり水俣宣言」をします。
2.水俣がめざすゼロ・ウェイストのすがた
私たち水俣市民は、「水俣がめざすゼロ・ウェイストのすがた」を掲げ、水俣で生きる者としてゼロ・ウェイストの取り組みを進ます。
○水俣病の教訓を生かすゼロ・ウェイスト
私たちが水俣病から学んだこと、その1つが、廃棄物でいのちの基盤をこわしてはならないということでした。ゼロ・ウェイストの取り組みを進めることは、水俣病の教訓を生かすことにつながっています。
○処分場反対運動からのゼロ・ウェイスト
水俣市民はいのちと水を守るために、水俣に計画された産業廃棄物最終処分場の建設に反対しました。「埋立に頼らない」という選択は、最終処分場建設を止めた私たちにとってとるべき1つの方向性です。
○高度分別回収の経験を生かすゼロ・ウェイスト
私たちは1993年から、家庭ごみの高度分別収集を地域の力で支えながら続けてきました。
この経験で得たリサクルの習慣と意識を、リユース(再利用)・リデュース(発生抑制)へと発展させ、ゼロ・ウェイストの実現をめざします。
○環境モデル都市づくり宣言(1992年)の理念を大切にするゼロ・ウェイスト
1992年に水俣市が行った「環境モデル都市づくり宣言」は、水俣病の教訓から生態系へと思いをはせ、文明社会のあり方を問うものでした。そしてこの宣言を機に、さまざまな取り組みを行ってきました。
私たちはこの理念と実践を大切にして、ゼロ・ウェイストを進めていきます。
○環境モデル都市(2008年)のゼロ・ウェイスト
水俣は、2008年に政府から認められた「環境モデル都市」の1つとして、ゼロ・ウェイストの取り組みを通して低炭素社会をめざし、他の環境モデル都市にもゼロ・ウェイスト政策を広めていきます。
○私・私の家・私の地区のゼロウェイスト
ゼロ・ウェイストはすでに私たちの暮らし中にあります。私が買い物でマイバックを使うこと、家で洗濯に石けんを使うこと、地域でステーション回収…
ごみになるものを家に持ち込まず、環境に良いものを選び、ものを長く使う私たちの行動と、ゼロ・ウェイストとのつながりをいつも意識します。
○実現にこだわるゼロ・ウェイスト
ゼロ・ウェイストの実現に向けて市民・事業者・行政協働のもとで、裏付けのある目標設定をし、 具体的な行動計画をつくります。
さらに、現状を評価しながら、常に目標の確認と再検討をし、ゼロ・ウェイストを確実に実現する方法の検討を続けます。
○継続・持続するゼロ・ウェイスト
ゼロ・ウェイスト達成のために、議論を継続し、そのための場を確保し続けます。
また、経済的な持続可能性に留意し、達成後も必要な取り組みを続けながら、ゼロ・ウェイストを持続させます。
○世界の自治体のモデルとなるゼロ・ウェイスト
水俣は、ゼロ・ウェイストの達成とその過程を含めて他のモデルとなる「ゼロ・ウェイストモデル都市」を目指し、そのための情報発信をしていきます。
○日本中・世界中の自治体と連携するゼロ・ウェイスト
日本中・世界中のゼロ・ウェイスト宣言自治体どうしで、実質的な意義のある連携を実現し、そのしくみを持続します。
○広がっていくゼロ・ウェイスト
ゼロ・ウェイスト宣言都市の活動を「点」から「面」へ展開させ、ゼロ・ウェイストの動きを日本全体、世界全体へ広げていきます。また、そのためのリーダーシップを発揮します。
3.ゼロ・ウェイストのまちづくり水俣宣言
私たち水俣市民は、私たちの日常をあらためて見直して、自然の恵みを大切にし、限りある資源やエネルギーを最大限有効に利用する暮らしとしくみづくりに努めます。
私たち水俣市民は、大切なふるさと水俣の自然をけがさず、全ての生き物の命と健康を脅かさないため、2026年までにごみ処理を焼却や埋立に頼らないまちづくりのしくみをつくります
私たち水俣市民は、1992年「環境モデル都市づくり宣言」以来、私たちが続けてきた取り組みと努力に誇りを持ち、この経験と成果を生かしてゼロ・ウェイストを進めす。
私たち水俣市民は、ゼロ・ウェイストの取り組みを進めるために、市民・事業者・行政が必要な情報を共有し、継続的に話し合う場を設け、常に目標・行動・成果を見直しながら協働で取り組みます。
私たち水俣市民は、志を同じくする日本中・世界中の人々や自治体と手をつなぎ、連携して問題解決を図り、日本と世界の環境をよくするゼロ・ウェイストの仲間づくりを進めます。
平成21年11月22日
熊本県水俣市