走る日本ワーグナー協会!E1で行こうバイロイト! | 自動車コラムニスト中込健太郎のブログ『込氏のブログ』

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自動車ライターですが、最近はノリで買った積載車が忙しく、レッカー・搬送、搬入搬出、自動車何でも屋みたいになっております。自動車絡みだったりじゃなかったりの日々を綴ります。

少し前になってしまいましたね。しかしこのクルマについては、やはり少し書いておかないと。
 
ちゃんと乗ったのは初めてかもしれません。ちゃんと乗ったと言っても少し移動しただけですが。しかし、この手のくるま、ガッツリ乗ってのインプレッションは山ほどあるはず、それをご覧くださいwその意味では、あの距離、あの速度で十分です!
 
最近クルマというと、電動化、自動運転へのどう言った道筋でどの程度の立ち位置なのかが話題の中心。そういう絡みもあって、スポーツカーや大排気量のクルマは、もしかすると今後出てこないのではないか?これが最後なのではないか。そんなとてもセンチメンタルな眼差しでみてしまう面があります。そういう新技術、いいでしょう。おやんなさい。しかし、やはり思うのです。最近はっきりさせておいた方がいいなと感じるのです。「私の好きなクルマではない」です。電動化したくるまは、何度も言ってるかもですが、バッテリーを搭載しないといけないので、躯体もしっかり。そういう意味では案外、魂を売ったみたいに言われていた出始めの頃の予感は、乗るほどに覆される。ドライバーズカーとしていいと思います。
 
でも、あの航続距離を担保できないところとか、バッテリー上がったクルマの救援できないとか。持続可能的なことを言って出てきている割には、割と自分勝手なその構成に「ムシが好かん」というのが率直な温度感です。自宅を構えて、自宅も蓄電してとかにしたら、アシグルマにはいいなとは思いますが、それでも趣味車とか、クルマ好きとして買うものにはなかなかならないのではないかと思っているのです。
 
それに対して、こうした、従来通りのクルマの魅力を載せてきたクルマ。いつまで行けるのか。とても心配なのです。人類として、こうした車を購入できる最後の時代に差し掛かっている。オーバーな言い方をするとそんな気持ちになるわけです。
 
直列6気筒、3リッターターボという「字面も含めて」の魅力を持ち込んだこの新しいスープラ。ご存知の通り、とても滑らか。最初、わかっていても!NGワードであっても、その事実には驚かされるほど。雲上の心地と言ったら言い過ぎでしょうか。しかしとにかく滑らか。挙動の全てが洗練されています。そういう言い方はどうかとも思いました、思いましたけど「デートカー」にも確かにいいかもしれません。お金が貯まったら、嫁探しの前には標準車でいいのでマカンを探して臨もうかとか思いましたが(別にSとかでなくても分からないでしょうから。むしろ、そこをしっかり言ってくる人の聡いというか鋭い感じとか、そこまでクルマ好きな
人は避けた方がいいのではと思ったりしていますw)GRスープラにしようかしらと思ってしまったほどでしたw(世に蔓延るクーペはヤダとか言ってるのも上の鋭さ以上に嫌なのでその判別式、試金石、踏み絵としても、嫌でもクーペ的なものは必要なのではないか、とさえ思ったりもします。)
 
しかし、それは一つ目の角を曲がる頃には「結局BMWなんだな」と思ったりするのです。何故一つ目の角か。ウインカーの位置もまんまBMW、左側についてますから。けれども、側だけ変えたの?といえばそんなことはないでしょう。例えば奈良盆地から見える低くさほど険しくない山々。大和国はまほろば。そういう風景が脳裏に浮かぶ、角の取れた挙動がこのクルマには感じられるのです。エンジンは確かにBMWのそれかもしれません。しかし、そのクルマの味わいはヤマトの国のおおらかで滋味に溢れる印象。これはなかなかいいクルマだなあと思いました。
 
個人的には、BMWのイメージ、南ドイツバイエルン地方の風土と強く結びついています。ノイシュバンシュタイン城であり、リヒャルトワーグナーな訳です。もっとノーブルで、しかし若々しく、孤高の気高さ。そういうイメージがBMWのイメージなのです。日本にもファンは多く、自動車絡みでいえばかつて本田技研の藤沢武夫さんが、和服を着てバイロイトに通っていたなどという話もよく聞きました。国内でもファンが多く、日本人の感性で受け取れるバイエルンというものは、昨日今日のことでなく、一つのタイプとして日本に存在するのだなと感じています。日本にもワーグナーの作品や世界観を愛好している人たちの組織、日本ワーグナー協会というのがありますが、このクルマには、あの組織をクルマにしたような、という感じがあるのです。BMWの影の潜めかたというか、投影の仕方が日本流。でも、アクセルを軽く煽って、トルクを出している時、遠くの方からホルンがなっているような気がしました。
 
積載車に積んでいても、このクルマの足のしなやかさ、、バランスの良さは実感できました。
 
トヨタもBMWも、こうしたクルマをもはや単独で用意することが難しい世の中なのかもしれません。けれども、こうして、ラインナップしてくれている事に感謝したいと思います。もし今、お金があるなら、これも買っておいて損のないクルマのような気がしました。
 
世の中の悪い傾向をネットで知って、頭でっかちに考える、でもさほど変わらない結果は得られるのかもしれませんが、こういうクルマで、自分で森を抜け山を越えてみる。その勾配とワインディングと、全ての人が走ったことで確実に体感し、時間を費やす事になる絶対的距離が、きっと価値ある示唆をもたらしてくれるに違いないのですから!
 
こんな時代だからこそ申し上げておきたい。今こそGTが必要だ。もっと言えば、自分で移動した体験もなしに、人任せにする、運送や、伝達を人任せにして自分だけ効率化、タスクフローのスリム化スマート化を図っていけば、結局皺寄せがいくのです。そういうことをわからずに持続可能とか言ってもそれは「寝言に過ぎない」と思ったというのが、黄色いスープラを私のエルフに積み込む時に感じたことでした。
 
欲しい!し、もし買えるなら、みなさんすぐに注文いれにいかれた方がいいと思いますよ。