相手の話をきく、ということはコミュニケーションの基本です。
けれど、私たちは誰でも主張することにばかり意識を向けて、相手の言い分をきくことを軽んじる傾向があります。
この傾向は立場が上になるに従い強くなり、より人の話をきけなくなるのですが、実は「自分の言うことを聞かせたい相手」ほど、こちらから先にきかせてもらう、という姿勢が必要になるのです。
また、最近では「部下の話をきく」「妻の話をきく」「こどもの話をきく」といった重要性があちこちで言われているためか、「自分は人の話を聞いている」と豪語している方も増えてきました。
けれど、聞いているつもりがまったく相手には届いていない、実はきいていないというケースのほうが多いのです。
今日は、あらためて「きく」ということについて考えてみたいと思います。
社会が高度化・複雑化すればするほど、またコミュニケーション手段が多様化すればするほど、会話によるコミュニケーションは重要性を増しています。
職業生活におけるストレス原因の1位は「人間関係の問題」です。
人間関係の悩みの大半は、コミュニケーションの悪さから発生します。
職場での「コミュニケーション」「助け合い」が減ることで「心の病が増加」するという調査結果も出ています。
人は誰しも、理解され、認められたいという心理的な欲求も持っています。
特に、ストレスを抱える現在社会において、話を聞いてもらい理解してもらうことで心理的充足感を満たすコミュニケーションが必要とされています。
前回のモチベーションマネジメントの回でも述べたように、「きく」ことは相手が自分自身の考えを整理し、納得のいく結論や判断に到達するというポジティブな効果もあります。
相手の能力を引き出す、気持を落ち着かせる、選択や決断を促す、そして自分との信頼関係をつくるのにも、「きく」ことは大きな役割を果たします。
・3つの「きく」
「きく」という言葉は、日常使っている上では区別がつかなくなってくるものですが、意味は3種類あります。
1.訊く(ask):
尋ねる。尋問する。
訊き手がひたすら質問します。
訊き手の訊きたい答えを訊き出すために、訊き手が話し手をコントロールする姿勢です。
話し手の気持ちは無関係で、訊き手が訊きたいことを訊けばそれでおしまいです。
例)インタビュー。取調室。裏を取る訊き方。
2.聞く(hear):
聞こえる。
相手の声や言葉が聞こえてくるということで、「音声として耳に入ってくる」ことをさします。
聞き手が自分の都合のいいところだけ、聞き手の聞きたい答えだけを選別して聞いています。
聞き手の都合の悪いことや関心のうすいことについては、聞こえていても聞いていない、「うわのそら」状態です。
「門」の中に、「耳」が入っています。聞くだけ聞いたら門を閉めてしまいます。
例)人の噂話、電車・バスでのアナウンス。
3.聴く(listen):
積極的に耳を傾けて、話を聴く。(積極的傾聴)
話し手の内面にある感情や、価値観を踏まえた話し手にとっての「意味」を聴きます。
話し手は自分の気持ちをできる限り正確につかみ、表現しようと努力するようになります。
「聴く」というのは、相手の言葉を聴き、「心の内面をとらえようとすること」と定義されています。
「耳を傾けて十四の心で聴く」ということです。
つづきます。