お久しぶりです。
久しぶりの小説更新です\(^o^)/
といっても、FC2ブログからの転載ですが・・・。
久しぶりにFC2ブログも少量ですがプレゼント企画で更新しました。
同人誌をお持ちの方は、FC2ブログも覗いてみてください♡(宣伝)
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1.甘く痺れるかなしばり
初めてあの方にお目通りした時、
私はきっと心を奪われた・・・。
立派なお姿。
ずっと見ていたい。
叶うのならば、ずっと傍にいたい。
・・・千年の悠久の時を、ずっと、ずっと。
自然と言葉が溢れてきて。
私の想いを今様にのせ、舞えることが幸せだった。
あのお方に舞を見てもらえることが嬉しかった。
君を初めて見る折は千代も経ぬべし姫小松
御前の池なる亀岡に鶴こそ群れいて遊ぶめれ
・・・私の気持ちは、あなたに伝わりましたか?
-
邸内を案内してくださる祇夕様が、
口元を袖で隠しながら、ふふっと微笑んだ。
「そんなに緊張するでない。先ほど、あれほど堂々と舞ったであろう?」
「え、えっと・・・っ。あれは、気が付いたら・・・っ」
あのお方に見惚れたまま、舞ってしまったというか、、、
はっと気が付いた時には舞い終わっていた、というか、、、。
それなのに私は本当にこんなに立派なお邸に仕えられるの・・・?
貴族のお邸。
叔父が薦めるから、このお邸に来たのだけれど、
今まで見てきたどのお邸よりも立派で迷子になってしまいそう。
これだけ広いのならば、局はたくさんあるのでしょうけど、
いきなり私が局を賜っても良いのかしら・・・。
「・・・私、本当にこのお邸に置いてもらえるのですか?」
「なんじゃ。他の邸にすでに局を賜っておるのか?」
「いえっ! で、でも、門前払いになっていた私が、急にこんな・・・」
白拍子としての実績はないし、田舎で学んだ教養しかなくて。
祇夕様に比べたら、というよりも、比べるのもおこがましい気がする。
そう必死に言えば、祇夕様はニヤリと笑った。
「そなたを育て上げるのが楽しそうじゃ。ところで白河?」
「は、はいっ!」
「そなた、白拍子の仕事は分かっておろうな?」
えぇぇぇっと、今様や朗詠、舞いを披露するのが主な仕事。
あとは・・・。
ポンッと顔を赤くすると、
祇夕様が口元を隠すのも忘れて、楽しそうに笑っていて。
「この邸のお屋形様はな、一年のほとんどは衾におられて、
妾は片時も傍から離れられぬのじゃ・・・」
一年のほとんどは衾におられて・・・
白拍子の祇夕様が片時も傍から離れられない・・・
「一年のほとんど朝から晩まで祇夕様を寵愛しておられるのですか!?」
御所に出仕もしなくて、愛欲の日々を過ごしておられるのですか!?
驚いて大きな声を出せば、
祇夕様が慌てて私の口元を袖で覆う。
そんな祇夕様の背後に現われた影。
「祇夕・・・。そなた、新入りをからかうものではない・・・」
「・・・りょ、嶺羽様・・・。何故ここにおられるのじゃ・・・」
「先ほど舞ったその白拍子に用があったのだが・・・、
まだ邸の案内は終わらぬか?」
さっきのお方・・・。
部屋の中央で舞いを見ておられたけれど、
私が舞い終わると、すぐに姿を隠してしまわれたから。
どこのどなたか分からないままだった。
胸がトクン...と高鳴りだす。
またお会いできて嬉しい。
お名前を聞いても良いのかしら。
このお邸の方と懇意なのかしら。
・・・また会えることはあるのかしら。
期待の眼差しで見れば、
祇夕様が私の背を押して、目の前の公達の前へ。
ほのかに香る白檀の香り。
爽やかで、・・・甘い香り。
「ごほん・・・。白河! この方がお屋形様じゃ!」
「そうなのですかー・・・。この方がお屋形・・・さま・・・?」
呆けて返事をしてしまったけれど、今、祇夕様はなんと・・・?
この方がお屋形様??
「白河、と申すのか。先ほどの舞い、素晴らしかったぞ」
「・・・・・・・・・・・本当にお屋形様なのですか?」
「あぁ、私がここに主だ。これからよろしく頼むぞ。白河」
この方がお屋形様・・・。
とてもご立派で、清廉潔白な方に見えたのに、、、
まさか祇夕様と一年中・・・。
朝から晩まで一日中、衾の中におられるなんて・・・。
「祇夕様と愛欲の日々を過ごしておられるのに、
私にも頼むということは、、、余程、お好きなのですね?」
でも困ったわ・・・。
白拍子だもの。
その覚悟もしていたし、
狸のようなお屋形様だったらどうしよう、と思っていたから。
この方になら、と思うけれども、、、
そうなると祇夕様と寵を奪い合う事になるのかしら。
いえ、奪い合うだなんて滅相もない!
私は新人で、田舎から出てきたばかりで、床入りのこともよく知らなくて。
でもお仕えしたからには、主の言う事は絶対!
そちらの勉強もして、少しでも祇夕様の近づけるようにならなくては!
「祇夕様っ! 私、舞いも勉強も床も頑張りますので、
どうぞご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いしますっ!」
「し、白河? そなた、冗談が通じないくらいに素直なんじゃな・・・」
「冗談、、、でございますか?」
首を傾げれば、祇夕様は私の両肩を持ちながら、
真剣な面持ちで「本当のことを申すぞ」と。
「嶺羽様はな、お体が弱くてな・・・。
だから一年中、病床に伏しておられるのじゃ。
妾はそんな嶺羽様を看病する為に、傍にいるだけじゃ」
「そう、なのですか・・・」
チラリ...と視線だけで嶺羽様を見れば、
お体が弱いとは思えないくらいだけれど。
でも祇夕様が嘘をおっしゃるはずがないし・・・。
再び視線を祇夕様に戻せば、「だから・・・」と悲痛な面持ち。
そして私の肩を掴む手に力を込めてきた。
「高貴な血筋なれど、色々とあってな・・・。
体さえ丈夫なら、嶺羽様は都一の公達なはずなのに・・・っ!
本人もこの通り、貴族らしくないせいで、
この歳になっても正室がおらぬどころか、側室もおらぬ! 妾なんてもっての外っ!
このままでは血筋が絶えてしまうと言うのに、危機感すら持っておらぬ!」
「・・・祇夕、余計なお世話だ・・・」
祇夕様・・・、まるで嶺羽様の母上みたい・・・。
迫力に押されて、私がこくこくと相槌を打つと、
祇夕様はますます熱弁。
「嶺羽様、もぉ25歳じゃぞ!
元服や裳着をする子がおっても、おかしくない年頃であるのに・・・っ」
「病弱なれど、この歳まで生きながらえたのは、箔晴と祇夕のおかげだな」
感謝しておるぞ。
そう素直にお礼を言う嶺羽様に毒気が抜かれたのか、
祇夕様がはぁ...と溜め息をもらす。
「白河・・・、白拍子の意地を見せてやるんじゃ!」
「は、はいっ! ・・・え?」
「色仕掛けでも何でもして籠絡するんじゃぞっ!」
この邸の命運はそなたが握っておる!
そう言いながら、私の体を思いっきり突き飛ばした祇夕様。
傾く身体。
咄嗟に何かに掴まろうとしたけれど、
袴の裾を踏んでしまって、ますます転びそうに。
だけど転ぶ前に、白檀の香りが私を包み込む。
痛みの衝撃ではなく、甘い衝撃が身体を走って、
ドキドキとする鼓動の音を速めた。
力強い腕。
心配そうに覗きこむ顔。
金縛りにあったように、私は動けなくて・・・。
そんな私をずっと支えてくれている嶺羽様。
「祇夕め・・・。白拍子は遊女ではない、と申しておるのに。
すまぬな。こんな情けない主だから仕方ないとは言え、
祇夕も心配して、何かと世話を焼いてくるのだ」
「い、いえっ。嶺羽様は情けなくないですっ!」
「今日会ったばかりで断言しても良いのか?」
そう。今日会ったばかりだけれど・・・。
でも初めてあなたを見た時に感じたから。
「私が唄った今様を覚えておいでですか?」
即興だったからこそ、
あの今様は私の気持ちを言葉にしているんですよ。
そう言えば、嶺羽様は驚いた顔をしたあと、
・・・嬉しそうに微笑んだ。
「・・・そうか。ありがとう」
白檀の香りにクラクラする。
爽やかで、甘い香り。
「不束者ですが、今日からよろしくお願い致します」
「はは、まるで嫁にくる女人の台詞だな。
・・・あぁ、そういえばこの邸に住むのだったか? ようこそ、我が邸へ」
そう。今日から私はこの邸にお世話に・・・。
あ。
「嶺羽さま、私、まだ局の場所を教えてもらっておりません」
「まだだったのか。局は祇夕に聞かねば分からぬし・・・。
祇夕を呼び出してやるから、それまで私の部屋で待っておるか?」
「・・・・・・え、えっと、そのまま床のお供も、でしょうか」
「・・・・・・祇夕が言ったことを真に受けるな」
それとも色仕掛けで籠絡できるか試してみるか?
そう顔を覗きこまれながら言われて。
カァ...と火照りだす顔。
そんな私の温度を確かめるように、頬を撫でてくる掌。
「・・・冗談だ。白拍子に遊女の仕事をさせるつもりはない」
「そう、なのですか・・・」
・・・って、私どうして残念そうな声を出しているの?
自分が分からなくて。
でも恥ずかしくて。
顔を俯かせると、嶺羽様の苦笑した声が耳に届いた。
「廊下でする話でもないな。部屋に案内するから、着いてきなさい」
私から離れていった温もりと香り。
それが寂しくて、切なくて・・・。
だけど嶺羽様が離れても、私の着物から香る白檀の香り。
・・・移り香?
嶺羽様の香りが私の着物からする。
それが何だか嬉しくて。
歩きだした嶺羽様の背中を追いかけながら、
ドキドキする胸を押さえていた。
~つづく~
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甘い恋10題( 2 ) ・・・ お題配布元「確かに恋だった」
を前世組で書いたものです。
3年前に書いたものなので、書いた本人もすっかり忘れていたりで・・・
10話完結です。
時間がある時に2話を更新しますね(;ノ∀`)<忘れていたらごめんなさい
あと、最新記事を読んでいない方が多いのですが、普段はログアウトしています。
たまに「コメントしてアメンバー申請したのに何で承認してくれないんですか!」
と苦情がきますが、何度も記事を更新するたびに書いています。
ログアウトしているので、コメントもメッセージも気づきません。承認できません(泣)
急ぎのようでしたら、Twitterの方に話しかけてくださると有難いです( ;∀;)
よろしくお願い致します_(._.)_
2017.9.3 ひな