14日に土浦駐屯地の一般開放イベントである
武器学校・土浦駐屯地開設60周年記念行事に行ってきました。
画像が多くなる都合から記事をいくつかに分けますが、
大まかな括りとして、車両編と火砲編という書き方にしていこうと思います。
航空祭等に比べややマイナーではあり、ご存じない方もおられると思いますので
レポをに入る前に、まずは土浦駐屯地のあらましをざっと説明させて頂きます。
――第一次大戦の戦果から、日本でも航空機の研究開発が活発化しだした頃。
茨城県は霞ヶ浦のほとり、稲敷郡阿見村に広がる平地に
航空機搭乗員の育成を行う、霞ヶ浦海軍航空隊が開設されました。
続いて、より初等的教育を行う予科練とその施設が横須賀から移り、
土浦海軍航空隊と名を変えます。周辺には他の海軍施設も次々建設され、
第二次大戦頃には軍都としてその名を馳せる程に発展します。
そうして数多くの搭乗員や機体を送り出してきた当地ですが、戦局悪化に伴い
次第に十分な搭乗員教育などを行う事もできなくなっていきました。
ついには昭和20年6月の土浦空襲により、軍関連施設は軒並み機能を喪失。
そのまま終戦の日を迎え、その役目を終えました。
しかし戦後7年目にして、兵站・装備品の整備・不発弾処理などに関する
教育・運用研究を行うための、保安隊武器学校が立川より移転した事で、
この地は陸上自衛隊土浦駐屯地へと生まれ変わり、現在に至っています。
この武器学校では、主に装備品の整備を教育していく関係から、新旧含め大量の
装備品や鹵獲品、試作品や詳細不明の遺物等が敷地内に保管されており、
今回ここへ自分が来た理由も、貴重な陸軍の遺産を見る事が主目的でした。
駐屯地に入るとまず、FH70や203mm自走榴弾砲、88式地対艦ミサイルなど
大型の車両や火砲が道路正面に見えてきました。
203mm自走榴弾砲。後部のドーザーブレードを下ろし、射撃姿勢という体の展示。
手前の道を横に入ると、給弾や砲要員を運ぶための砲側弾薬車もありました。
この付近では、保安隊当時からの米国供与品を始め、歴代の車両を展示しています。
M24軽戦車。第二次大戦当時の偵察用戦車ですが
戦後日本が初めて保有した戦車としても有名。映画にもよく出てきますね。
M4A3E8中戦車。M24に続き、陸自機甲部隊初期の主力を担いました。
M4系列は航空機用エンジンを転用していた都合からやたらと背が高くなっており、
思っていたよりも大きく感じました。
M36戦車駆逐車。ドイツの対戦車車両とは異なり、全周旋回砲塔を持ちます。
M26重戦車と同じ90mm砲は威力十分ながら、その分防御を犠牲にする設計思想。
前身となったM10同様、砲塔はオープントップで装甲も全体的に薄め。
LVT(A)5水陸両用車。上陸作戦時にネックとなる火力不足を補うため
自走砲の砲塔を取り付けた物。75mm榴弾砲の存在は敵からすれば脅威そのもの。
M42自走高射機関砲。この辺りになると登場は50年代になります。
こういう対空機関砲は、高速の航空機にはそれほど大きな脅威を与えませんが
むしろ地上部隊を撃つ事により、恐ろしい程の威力を発揮する事がままありました。
掩体に身を潜めて敵を迎え撃つ、60式自走106mm無反動砲という構図。
60式は非常に車高が低く、暴露面積が小さいためこういった戦法に向きますが、
照準のため、先にスポットライフルで撃たねばならない欠点がありました。
61式戦車。戦後日本初の国産戦車ですが、排気管周りや前輪駆動など、
微妙にご先祖の面影が残っているようにも見えます。
操縦が難しいという話が有名ですが、旧陸軍の戦車もそう言われつつ
問題なく操縦できたという証言は多いですし、この手の話は若干疑わしい気も。
この後は自衛隊の新旧各種自走砲や戦車、戦車回収車や装甲車などが色々。
自走榴弾砲としては最新型である、99式自走155mm榴弾砲の試作車。
性能は優秀ながら、戦車並に高価なため北海道中心に配備されているそうです。
この辺りを右に行くと、隅の一角に屋根の付いた簡素な車庫が。
そこに、今回のお目当ての一つが鎮座していました。
三式中戦車。日本陸軍最後の量産車であり、虎の子として温存されました。
塗装はたまに塗りなおしていますが、数十年屋外に放置され続けているため
痛みも結構激しいです。
後継である四式中戦車の開発が難航する中、とにかく早くM4に対処するため
牽引砲である機動九◯式野砲を小改修しただけで載せる事になりました。
三式とは言うものの、本来は四式・五式までの繋ぎという位置付け。
結果として駐退復座機(砲身の下側)を砲塔内に収納して守る事ができず、
砲の割に巨大な砲塔になるなど、状況の逼迫ぶりがうかがえます。
車体は九七式中戦車の改良版である一式中戦車のものをベースにしているので
足回りは基本的にほとんど変わっていません。懸架装置も日本独特の方式。
排気管などがなく若干寂しい後ろ姿。砲塔後部ハッチの割れや車体上面パネルの
歪みなど、あちこち劣化が見られます。ただ、このスキマから中を覗くと
燃料タンクのあった部分が空洞で、奥にエンジンが入っているのが確認できます。
お宝映像を見た気分でテンションが上がりつつ、車両編②へ続きます。