4月16日
大きな破裂音があった。
目の前が白くなる。
やがてモノクロの世界が静かに浮かび上がる。
廃墟の様な景色。
いたるところでくすぶる炎。
動かない…倒れた人々。
死体?
そうだ。死体だ。
自分も死んでいるのだろう。
私の体も動かない。
そんな私を誰かが見つめていた。
「起きろ。」
その誰かが声を掛けた。
「未だ死なせない。」
いつの間にやら私は起き上がっていた。
「未だ用がある。」
その声の主を探そうとあたりを見回したが…
あの誰かの姿は消えていた。
見知らぬ老婆が蹲っていた。
「今、生きているのは、私とこの婆さん2人か。」
その老婆に声を掛けようとした時、
再び爆音と爆風が…
1度目の目覚め… AM02:45
映画を見ていた。
試写会か?招待用の上映会だ。
それも終了しあたりを帰ろとすると友人に声を掛けられた。
布団屋と調理人だ。
二人はニヤニヤしながら
「もう帰るのか?」
「未だ、午後の部もあるぞ。」
えっ?そうなんだ…
でも午後の部は別の招待分じゃないのか?
「2階席なら誰でも見れるさ。」
「2階へ行こうぜ。」
2階へ行くと、さらに友人の古本屋と不動産屋と和菓子屋、資材屋、運送屋も来ていた。
みんな大集合だなぁ…
と思う間に午後の部も終了。
和菓子屋と運送屋が
「当然、夜の部も見るよな~」と言ってきたが丁重に辞退。
それでも運送屋はごねる。
「夜の部は貸切らしいぞ。」
と、古本屋が情報をつかんできた。
ふと見渡すと周りは喪服姿の人ばかり。
「貸切?…喪服?」
異様な雰囲気にそそくさとホールを出ることにした。
「あっちの駐車場に車とめてるんだ。送ってくよ。」
と、調理人。
その調理人について歩いていったが…
薄暗い景色の中で姿を見失った。
ともかく今来た道をそのまま進んでみる。
人だかり。
警察が交通整理をしている。
なんだろう?
事故?
警官が担架に人を乗せ運んでいた。
運ばれていくのも警官だった。
そのまま進む。
人だかりがサササと引いた。
ワゴン車が2台追突している。
その脇に倒れた人。
そして、倒れた人を介抱する男…ではない。
大声を上げながら角棒で殴り続けている男だった。
ワゴン車の反対側にも幾人か倒れているのがチラリと見える。
そして数メートル離れて野次馬が。
写メを撮ってる様子も。
な、なんなんだ?
角棒の男はあたりを威嚇するように叫んだ。
「何見てるんだ!次はどいつだ!」
角棒を振り回し、あたりを睨み付ける。
男の視線が止まった。
私の真正面。
「次はお前かぁぁぁぁぁぁ~!」
角棒を振り上げ向かってきた。
2度目の目覚め… AM04:48
3月24日
逃げていた。
何から逃げていたのか?
記憶は定かではないが、なにかから逃げていた。
うす暗い路地に停めた車にたどり着く。
ドアをあけ乗り込む。
キーは?
車のキーが無い。
探す。
探す。
探す。
ふと、その車が自分の車ではない事に気が着いた。
まずい!
その時、胃の中から何かがこみ上げて来た。
口を押さえる…が、それは溢れ出した。
黄色い蛍光色の液体。
薄墨色のこの空間に鮮やかな蛍光色が広がった。
なんだ?これは???
「毒を盛られた…」
頭の中で誰かが囁く。
毒?
何故?
誰が?
いつの間に?
頭の中がぐるぐる回る。
黄色い蛍光色に染まった車のシートに
体をうずめ
そして私は動けなくなった…
目覚め AM02:45
2月2日
濃褐色の木目の壁
横一列に並べられた机…いや、テーブルか?
そこに両肘を乗せ立っている。
両脇にも初老の男が幾人か同じ姿で佇んでいる。
私は何かを待っていた。
誰かと待ち合わせ?
病院で診察の呼び出しを待っている?
役所のロビーで書類の発行を待っている?
わからない。
わからない…が、
私は待っていた。
「遅いなぁ。」
思わずため息が漏れた。
「遅いですね。」
隣の男が私の独り言に答えた。
「でもね…いつもの事ですよ。」
その奥の男も会話に加わった。
「それもそうだ。」
微かに笑いが漏れる。
再び何かを待ち続ける私たち。
幾時間たっただろう。
「・・・・・」
不意に私の名が呼ばれた。
ホールの奥の方のドアが開き誰かが手招きしている。
「呼ばれた見たいですよ。」
と隣の男。
「思ったよりも早いじゃないですか。」
奥の男の声も聞こえる。
「私の方が早く来たのに…また、後回しですよ。」
私は「じゃぁ。」とドアの方に向かって歩き出す。
「おめでとう。」
と、男達が静かに言った。
何がめでたいのかわからないまま
「ありがとう。」
と、答えてドアの方に向かって歩き続けた。
目が覚めた。
目覚め…AM04:28
11月25日
道を歩いていた。
ガツン!
と、体に突き抜けるような衝撃。
天が回る。
視界が宙を舞う。
ざりっ…
砂の味。
いつの間にかうつぶせに倒れてた。
起き上が…ろうとする。
下半身が動かない。
両腕に力を入れて肩を持ち上げる。
ガードレールが視界を塞ぐ。
その向こうに微かに見えるもの…
もの?
足だった。
見覚えのあるズボン。
私の足だった。
意識が遠のき…
…。
…。
枕が現れた。
目覚め…AM04:46
9月20日
橋を渡っていた。
北の市と南の市を別ける川に掛かる橋。
北から南へと橋の歩道を歩いていた。
この橋を越え坂を下れば我が家へ続く道。
丁度橋の中間辺りで見知らぬ男に声を掛けられた。
「いよいよ始まりますなぁ。」
始まる?何が始まるのだろう?
「今度の戦争は…」
戦争?訝しげな顔の私の表情に気がつくのか気づかぬのか
男は続ける。
「今度は我がクスクス軍の勝ちだけどな。」
クスクス軍?
なんだろう?クスクスって???
男の笑顔が妙に気持ち悪い。
とりあえず無視して橋を進む。
今度は誰か走ってきた。
どこか見覚えのある…小学校か…中学辺りの同級生だったと思う。
私に近づき寄ってきた。
「お前はどちらに付いた?」
と、聞いてくる。
どちら?
私がきょとんとした顔をしてると苛立った様に声を荒く
「クスクス軍か!ペケペケ軍か!お前はどっちに付いたんだ?」
どっちって?
クスクスもペケペケも知らないし、何の事だか解らない。
「何ふざけてるんだ!」
怒った口調で言う。
「クスクス軍かペケペケ軍か、今度から、どちらに付くか決めなきゃならなくなったの知らないのか?!」
え?
「何を悠長な…俺達は皆、ペケペケ軍についたんだ。もうすぐ戦争が始まるぞ!
お前もペケペケに付くなら一緒に来い!」
と、返事も待たずに橋の北側へと走っていった。
皆、ペケペケ軍についた?
皆って?
私の住む、この地域の事か?
橋の南側に人が集まってきた。
時折、その集団から人が飛び出し橋を走りながら渡っていく。
橋の真ん中で佇む私を睨む者、不思議そうに眺める者、来いとでも言うように顎を振り走って行く者。
「もうすぐ始まるぞ!」
南の集団の中から声が上がる。
「そこの奴!(私の事だろう)お前はどっちだ?クスクスか!?ペケペケか!?」
橋を走り去っていく最後の男が、逃げろ!と声を掛ける。
私だけが橋の真ん中に取り残された。
「あいつはどっちだ?」
「こっちへ来ないぞ!奴はペケペケだ!」
「始まるぞ!!」
「撃て!」
ひゅんと風を切る音と共に足元の石畳が弾けた。
私は無我夢中で橋を北へと駆け出した。
クスクスもペケペケも、何がなんだかわからない。
ただ家はクスクス側にあった。
帰れそうになかった。
(目覚めAM5:58)