ジャック六番勝負  創作 ショート小説 | はやま△なつお

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ショート小説がメインです。
尊敬する人物は手塚治虫、ヤン・ウェンリー、豹頭のグイン、キース・ロイヤル、シャーロック・ホームズ。

題名「ジャック六番勝負」 はやまなつお


【本文】



イギリスがブリテン島と呼ばれていた大昔。
島には巨人たちが山の奥に住んでいて、時々
人里に降り、人や家畜を食って暴れていた。

人の王たちは巨人を退治してくれた者には望みの褒美を取らせる、と布告。
騎士、勇者や魔法使いが巨人に挑戦したが敗北して食われた。

孤児のジャックが巨人退治に名乗りを上げた。
ジャックは50人の兵隊を連れて、巨人ゴモランの洞窟に向かった。

ゴモランの身長は5メートル。
洞窟の前に深さ7メートルの落とし穴を兵隊たちに掘らせた。

朝になってジャックは角笛(つのぶえ)を吹いて怒鳴った。
「臆病者の巨人、俺が怖くないなら出てきて勝負しろ!」

「生意気なチビめ!」怒ったゴモランが駆け出してきた。
ザシャッ! 偽装した草と木の板を割って落とし穴へ。

ジャックは腰にロープをつけて、つるはしを持って飛び降りた。
ガッ! ゴモランは脳天を貫かれて絶命。

これが第一の戦い。




ジャックは旅を続け、城下町へ。
領主の話では、この町では巨人ブランダーボアが、
月に一度やってきて人や家畜を喰らい、家を壊して暴れていくと言う。

「私が退治してみせます。ついては・・・」

その日が来て、ブランダーボアがやってきた。
体のあちこちから蛇が生えている怪物。

ジャックは弓を射掛けると走って逃げ出した。
怒って追いかけてくるブランダーボア。

城の跳ね橋を渡る。
ブランダーボアも渡るが、途中で跳ね橋が切れ、堀へ落ちる。
橋の2箇所に切れ目を入れておいた。

腰にロープを巻いたジャックが飛び降りる。
兵士たちは弓で援護。

今度の武器は剣。噛み付こうとする蛇を切り、
ブランダーボアの首を、剣で切り裂いて仕留めた。

これが第2の勝負。




岩山に住む2人の巨人、ブルーズとレッドエッテン。
ブルーズは青色で猪の顔、レッドエッテンは赤色で大猿に近い。

里を襲って人や家畜を食って住処に戻り、リラックスしている。
2人は満腹して寝ようとしていた。

ジャックは気づかれないように近づく。
レッドエッテンの頭に向かって石を投げた。

レッドエッテン「いてっ! おい、何の真似だ!」
ブルーズ「?」
「石を投げたろう?」
「知らねえよ。山から落ちてきたんじゃねえのか」

そして1分後。もう一度レッドエッテンに一撃。
「この野郎!」
怒ったレッドエッテンがブルーズに飛びかかって殴り合い。

10分後、どちらも相打ちで倒れる。顔も体もボロボロ。
「悪いがそれでは・・・」グサッ!グサッ!
ジャックは槍で2匹の脳幹を突き刺して殺害した。

これが3番目の戦い。




巨人と人間が共存しているエリア。
ジャックの経験では、人間でも悪い者と、まともな者の2種類がいる。

巨人にもまともな者がいたらしい。
最初は疑っていたジャックだったが、
村長の案内で巨人ダデルと会い、話して信用した。


巨人討伐のための別の国の軍勢が攻めてきた。
それもこちらの国の国民を人質にして、抵抗したら殺す、と。
前にも攻めてきて巨人ダデルの棍棒で敗北したらしい。

ジャックは夜中に敵陣へ。
眠り薬の煙幕を焚いて軍勢を眠らせる。

ジャック自身は水に濡らしたタオルで鼻と口を隠している。
そして指揮官を刺殺。

ダデルと村人たちが、人質たちを運び出す。
軍勢の武器防具、食料備品を奪う。

翌日、軍隊は退却。

これが4番目の戦い。

1週間後、別れる時にダデルはジャックに妖精族の武器を贈ってくれた。
過去に巨人族と妖精族は戦争をして大勢が死に、協定を結んだ。

巨人の方もジャックを信用して、武器を渡しても悪事には使わない、
悪い奴、人間でも巨人でも、悪党を殺す時のみ使う、という条件で。




ダデルから貰ったのは鞭のように伸びて敵を切る剣、
考えれば解答を教えてくれる帽子、高速移動できて、空も飛べる靴、
透明になれるマント。
小柄なジャックにぴったりの大きさ。

ジャックは、これらを使い、村人たちに話を聞いて、山賊、悪人、悪い巨人、
モンスターなどを退治してブリテン島のあちこちを回った。

ゴオ!ジャックが森で野営していると。炎の矢で攻撃された。
ドラゴンに乗った黒い巨人。2つ首。太っている。
火はドラゴンの攻撃。

「おまえがジャックだな」「だな」
「仲間を大勢殺してくれたな」「たな」

大きい方の首に小さい首が唱和する。
「俺はダブラーだ。食らえっ!」「食らえ」

小さい首が黒い煙を噴射する。
森の木が溶けていく。強力な溶解液。

速靴で移動、透明マントを作動、離れた地点から飛ぶ。

「溶けたか。死体を確認しないと」
降りてくるダブラーとドラゴン。

上空から鞭剣で切ろうとして。
ザシャッ! 細い鎖に捕まる。

下の草地に落ちるジャック。

「妖精族の武器だ。戒めの鎖。それに捕まると他の武器は使えない」
黒マント、ドクロの仮面。人間の大きさ。

「我はキルト教団のガイスト。殺し屋。貴様と同じようなものだ」

ダブラー
「ガイスト、そのチビは俺が殺す」「ころす」

ガイスト
「構わんよ。手柄はそちらに譲るから」

ダブラーは棍棒を出してジャックに近づく。
「うおお!」ジャックは縛られた状態でガイストの方に走る。

ガイスト「ふん、悪あがきを」長剣を構える。
ジャックは懐から指で弾ける短弓を出して撃つ。

「ぐっ!」額を射抜かれて棒立ちになるガイスト。
ぶつかるようにして、鎖を持つ手を叩いて離させ、横にころがる。

ガガーン!ダブラーの棍棒の一撃。ガイストは粉微塵。地面に大穴。
戒めから抜けてジャックは低空飛行でダブラーの毒煙を避ける。

さらにドラゴンの火炎攻撃。あえてドラゴンの方へ移動。
ダブラーの毒煙がドラゴンに命中。
「グワアー!」怒ったドラゴンがダブラーに襲いかかる。

棍棒、毒煙、火炎、噛み付きで2者は格闘。
ジャックは鞭剣で3つの首を切り飛ばす。

これが第5勝負。




ジャックはキルト教団の本部へ向かった。
首領の黒魔術師キルトは人間を動物に変える魔法を使う。

多くの国の王女・王子を誘拐して動物に変えて、その国から
身代金を奪い取り、払わなければ半分だけ魔法を解いて無残な死体を送り返した。

ジャックは透明マントで潜入。
1000名ほどの魔術戦士が訓練している山の砦。

狩猟隊が帰還、門が開く。透明ジャックも通過。
人間を捕らえてきた。

黒ひげの大男キルトが呪文を唱え、20人の村人が牛に変わる。
「今夜の食事だ」槍で殺されて切り分けられる。

動物たちが捕まっているエリア。
ジャックが姿を見せて話しかける。

鹿が地面に文字を書いて状況を教える。
キルトは魂を分割していて半分はサーベルタイガーに封じている。

人間の姿のキルトを何度倒しても復活する。
まずは山に居るサーベルタイガーを先に始末してほしい、と。


飛行靴で山へ。牛を食って眠っているサーベルタイガーを発見。
鞭剣を避け、体中から雷光を放ち、反撃してくる。

バシッ!空からの雷に撃たれてジャックは地面へ。
飛びかかるサーベル。透明マントを有色にして顔にかぶせる。

戸惑った敵の4本足に鎖が絡む。戒めの鎖!雷撃が止まる。
ザン! すかさず首を切り落として勝利。


飛行靴で城へ戻る。
ゴゴゴゴゴッ!

城の地下から巨大ゴーレムが出現。
ライオンの体、大きい頭部は3面。男、女、鬼。翼付き。

キルト
「よくも我が半身を殺したな。世界制覇の前に貴様を殺す!
人造巨獣ガルガンチュア!最初の獲物だ、殺せ!」

ゴオッ!男の口から火炎放射。姿を隠していても位置が分かるらしい。
必死で避ける。

「魔力を感知できるレーダーがある。逃げても無駄だ」
キルト、それに巨大なガルガンチュアも空を飛ぶ。

女面がこちらを向く。キイイン!口からレーザー光線。
山や木々、大地が切断される。

巨体で降下、猫のように前足で物理攻撃。大地を削る。
必死で速靴で移動。

鬼の首。ガガガガッ!振動波。
行く手にあるものが崩れ、砂粒に変わる。

距離を取っては飛び道具でやられる。ジャックは接近。
ビシ、ビシ、ビシ!
鞭剣では巨体に通用しない。
敵の両手両足、尻尾の蛇が噛み付きに来る。

鬼面が噛み付こうとする。口に飛び込むジャック。
キルト「振動波だ!粉微塵にしてしまえ!」


しかし動きが止まる巨獣。
「むっ、どうした、ガルガンチュア?」

ズバッ!キルトの首が飛ぶ。倒れる。
近くに透明マントをはずしたジャック。鞭剣を使った。

「思考帽子が戦い方を教えてくれた。たとえば。
 君は不死の術が使えているが」

首なしの体が手印を結び、黒い炎を出してジャックに飛ばす。
鞭剣で打ち落とす。

「こうすれば滅ぼせる。陽光のランプ!」
手のひらに乗るほどの小さいランプ。スイッチ1つで作動。

しかし辺りが真昼のように明るくなる。
「グワアアア!」崩れるキルトの頭部と体。


ジャック
「巨獣の方は。戒めの鎖で内部の動力源である魔法石を縛った。
操縦を奪える。だから」

巨大魔獣は前足で城の壁を壊す。
キルトが死んで人質の魔法が解け、動物が人間に戻る。こちらへ向かう。

ガルガンチュアが抵抗する敵兵たちを踏みつぶす。
残りの敵兵たちがジャックの方に向かってくる。

ガガガガッ!鬼面の振動波で一掃される。
洗脳されているせいか、敵は全滅するまで抵抗をやめなかった。

ガラガラガラッ!
振動波を自分に仕掛けるようにしてスフインクス魔獣は崩壊していく。

ジャックは王女たちをそれぞれの国に送り届けた。
これが第6の戦い。


【終わり】

【あとがき】

手本は脇明子編訳「かじ屋と妖精たち イギリスの昔話」岩波少年文庫