題名「戦争仕掛け人を撃て!」 はやまなつお
【本文】
1
「58だ」
空手着の60歳ぐらいの男が言った。
「・・・・・」
空手着男
「不吉な事を言って悪いが緊急事態なのでね、この飛行機は99%の確率で落ちる。
防ぎたい。残り1%の道筋を辿ってほしい」
アメリカ。満員の旅客機。
通路側のシートに付いて離陸して3分後。
いつのまにか現れた空手着男が通路に立っていて私に話しかけてきた。
私「・・・・・」
空手着男「私は霊体だ。君にしか見えないし聞こえない」
私(あなたは・・・海音寺倍達さん、極獣空手の創始者の)
海音寺倍達「そうだ。そのように心で思うだけで会話できる」
私「霊体って。あなたは亡くなったはずでは?」
「そうだ。私は例えていえば真幻魔大戦のライアン機長のようなものだ。幽霊の」
「わかりやすい説明!・・・それで?」
「ハイジャック、いや、自爆する洗脳された犯人が、この機体を乗っ取る。
それを阻止してほしい」
「そいつを叩きのめしてくれ、と」
「いいや、爆弾はスイッチ式だ。犯人は5人。武器は大型ナイフ。
殺さないと爆弾を作動させてしまう」
「それはいつ?」
「君は13分後に死ぬ」
「えっ。・・・・そうか。まあ・・・それは構わない」
「覚悟を決めてくれ」
「わかった。で?」
「今すぐ行動を。君は58人と戦う事になる」
「犯人は5人のはずでは?」
「そうだ。しかし成り行きで。
最初の5人、洗脳犯人はかならず殺すように。
それで爆弾のスイッチは入らない。
後の連中は殺さないように手加減を。
ではすぐに!今、行動しないと先手が取れない」
空手着男は私の手を取って立ち上がらせた。幽霊なのに。
「前へ」通路を前方へ移動。
30~40歳の屈強な白人の男5人が立って、荷物を上の戸棚から下ろしている。
海音寺「大きい鞄が爆弾だ。まずあの男を」
スチュアーデスが席から立った事を5人に注意していた。
5人はナイフを出して見せる。乗客たちが悲鳴。
私は腕時計を外して。
後方から近づく私に連中が気づく。
腕時計を一人目の目に投げて接近。
「ウッ!」うめく男の右手をつかむ。関節を捻って倒す。
後ろ手に固めて後頭部を一撃、脳を揺らしてから手を離し、
両手で首を持って折る。バキッ!
死体を持って二人目にぶつける。ナイフの右手を取って。
同じ動作を繰り返す。
通路は狭いので向こうにいる敵が来れないように敵の体を盾にする。
2人目、3人目、4人目を殺害。
4人目の死体を持って5人目にぶつけようとするが、5人目は大きく下がる。
大きい鞄から爆弾を取り出して、英語の早口で喚く。
「爆発させるぞ、そいつを取り押さえろ!」と言ったらしい。
乗客たち「「「・・・・・」」」
「早くしろ、スイッチを入れるぞ!」
まずい展開。
「よし、彼を抑えろ」運動部のコーチらしき男が指示を出す。
海「アメフトのチーム2組だ。10秒以内に5人目を撃破を。
安全装置をはずして押す準備をする前に」
「ター!!!」私は甲高い高周波を発した。
半径5メートルほどの周囲がバタバタと倒れる。
私はコーチ男を越えて移動、倒れている犯人5人目の首を
折って絶命させ、爆弾を遠ざける。
「てめー何しやがった!」
殺気立った筋肉男の群れが攻撃してくる。
コーチ男を倒したのが気に食わないらしい。
突き出してくる手足に対して、距離を見極め、手のひらで触れて衝撃波を送り、
相手の生体電流を無効化して片付けていく。
私は数をカウントしていて「57人」でアメフトの連中は沈黙。
下がっていったので前方の搭乗口まで移動していた。
通路はハイジャック5、アメフト51で埋まる。
「!」背後から殺気。右に飛ぶ。ダンッ!
銃弾が通路の尾翼方向へ飛んでいく。
40歳ぐらいのパイロット男が拳銃を持って殺気立った視線を向けている。
指が引き金を引く。
半身になって避けて接近、手首を捕らえる。衝撃波で無力化。
拳銃を取り上げ、窓方向の床下に投げる。
こいつがハイジャック側かどうか不明なので脳にもう一度、
叩き込んで数日は起きないようにする。
スチュワーデスとシンプル・ワード・イングリッシュで会話。
私がガード側とわかってもらう。
2
もうひとりのパイロットが操縦して近くの空港に臨時着陸。
私「海音寺さん、58人倒して・・・13分過ぎたのに私は」
海「まだ試合続行中だ。気をつけてくれ。ああ、元の席に戻ってくれ。
君が死ぬ可能性は高かった。死に身の覚悟がないと切り抜けられなかった」
私は倒れている連中を避けて移動、元の席に戻って座った。
海「ここは乗客に混じって降りてくれ」
旅客機が着陸すると、乗客たちは荷物を持って我勝ちに
出口に殺到、私もそれに紛れて降りた。
「海音寺さん、それで?」
「さっきのハイジャック事件は、9.11と同じく、またアメリカを
ある国と戦争させようとする筋書きだ。
これからこの計画の大本を叩く。
ブラックゴーストの首領、戦争の仕掛け人を。
連中の手口は小さい規模での奇襲。
クレムリンを核攻撃したら終わるのに、決してそれはしない。
だからモスクワの民間人を虐殺して激怒させる。
そして犯行声明を出した組織の国を攻撃させる。
ハマスの奇襲、真珠湾攻撃、9.11事件も同じだ。
やられた側は準備通り、敵国の民間人虐殺を始める。
奇襲攻撃も、後の報復攻撃も同じ連中が行っている。
命令を下している戦争商人のリーダー、トニー・スタートを狙う」
「それってアイアンマンの名前に近いですよね」
「トニー・スタートは現在のリーダーの仮名だ。本名、表の身分は別」。
「そこに移動するまでが大変そうですが」
「迎えが来ている」
3
空港前に出ると。銀色の巨大戦車。
出入り口が開く。「中へ」乗り込むと扉が閉じる。
海「彼らは味方だ」1人の男が広い後部座席に。
前座席に運転手。走らずに上昇。
20メートルほど上がってから猛スピードで前方へ。
坐っている白人男からにじみ出るように幽霊が出現。
「私は石橋湛山(いしばしたんざん)。見ての通りの死霊だが。
この白人はイギリス貴族委員会のメンバーだ。私が憑依して操ってる」
「この飛行戦車は?」
石橋湛山
「連中の科学力は100年進んでる。その産物だ。
向こう側のゴーストが武器開発に協力している。
現在は敵側、ブラックゴーストが世界中に移動、
戦争を一度に多発させようとしている。
例えばプーチンは、悪霊ラスプーチンが操っている。
しかし手薄な本部を突くチャンスだ。
連中はイギリス貴族による世界征服が目的だ。
2024年の大統領選挙で敗れたトランプもメンバー。
だからイスラエルを支持している。
アメリカ全部がその動き。
トランプはワシントンを核攻撃で消滅させて、
強引に大統領になり、中国とロシアの仕業として戦争を始める。
あと30分でワシントンへの攻撃が始まる」
4
飛行戦車は猛スピードで移動、森の中の広大な研究所前に着陸。
「次世代科学研究所。アメリカ軍の新兵器開発施設だ。
ここが白人支配プロジェクトの総本部。メンバーはイギリス系貴族のみ」
警備用ロボットの群れが出現。しかし同士打ちを始める。
「こちらの憑依ゴーストたちが警備を乗っ取っている。このまま突撃してくれ」
戦車は入り口を破って建物内へ突入。
「向こう側のゴーストが憑依している相手は操れない」戦車の外へ。
黒い幽霊が重なっている警備兵が銃を撃ってくる。
黒い幽霊は、角、翼、耳まで裂けた口、尖った耳、尻尾、つまり悪魔の姿。
警備主任らしき男が、光る鞭で黒い警備兵を切り殺していく。
警備主任から白い幽霊が浮かび上がる。
「私は李登輝(りとうき)、案内する、来てくれ」
李登輝の後を追って走る。あちこちで警備兵たちが戦闘。
しかし数でこちら側が優勢。
研究室。
海「大きいほうがトニー・スタートだ」
軍服の大柄な男と、科学者の白衣を着た男。
ゴリラとネズミを連想させる。
どちらも頭は良さそうだが、人相が悪いモリアーティタイプ。
黒い幽霊が2人の上に浮かび上がる。
大柄の方は、原爆を落とす命令を出したアメリカ大統領トルーマン、
ネズミ男は、原爆を作った悪魔の科学者オッペンハイマー。
トルーマン「邪魔をするな、下等な有色人種ごときが!」
オッペンハイマー「強い者が支配する。自然界の当然の摂理」
李登輝
「それだ、霊界エネルギー発生装置、エジソンが作った、
あの世とこの世を結ぶ悪魔の送受信機!」
彼らが背にする奇妙なドラム缶10個分の複雑な機械装置。
敵側の黒い警備員たちが銃を撃ってくる。
李登輝、石橋湛山、海音寺倍達が飛びかかって敵幽霊と取っ組み合う。
黒幽霊が離れても2人は光線銃を私に向けて撃ってくる。
引き金の動きを見て接近、手首を捕らえて体勢を崩し、もう一人にぶつける。
衝撃波で動きを止めてから、2人の首を折って絶命させる。
憑依者に性質は似ているから、二人は狂気の大統領と悪魔の科学者に近い人間のはず。
生かしておいてはひどい悪事しか行わない。
そして光線銃で「霊界エネルギー発生装置」を撃つ。ゴオオッと燃え上がる。
「クワアアア!」悪霊2匹が消える。
警備員たちも憑依が解けたショックで倒れる。
「我々もコンタクトできなくなる。
操られた人間もだんだん正気に戻るだろう。時間はかかるが」
3人の味方幽霊も消える。
私は燃えて崩れる研究所から脱出した。
【終わり】
【あとがき】
手本はクライブ・カッスラー「地球沈没を阻止せよ!」
李登輝は台湾を民主化させた大統領。
石橋湛山は戦争反対で貿易での発展を唱えた政治家。