ひとやすみ ひとやすみ
雷さんにへそをとられるぞ
風呂上がりに、子供がいつまでもぐずぐずして服や寝巻きを着なかったり、夜おなかを出して寝ていたりすると、親によくこう言われた。どういうわけか雷は人間の子供のへそが大好きだということになっていた。子供が風邪をひいたり、おなかをこわしたりしないためのセリフだが、昔も今も腹を冷やすことが一番いけないことというのは真理だ。子供は雷が怖いので、脅しとしては効き目があった。

風呂上がりに、子供がいつまでもぐずぐずして服や寝巻きを着なかったり、夜おなかを出して寝ていたりすると、親によくこう言われた。どういうわけか雷は人間の子供のへそが大好きだということになっていた。子供が風邪をひいたり、おなかをこわしたりしないためのセリフだが、昔も今も腹を冷やすことが一番いけないことというのは真理だ。子供は雷が怖いので、脅しとしては効き目があった。
ひとやすみ ひとやすみ
そんなに親の言うこと聞けん子は出て行け!!
こんな恐ろしいことはなかった。怒った母親が子供を家の外に放り出し、玄関の戸の鍵を内側からガチャッとかけるのだ。その頃、家の外は真っ暗だった。闇だった。僅かにボォーッと灯るのは我が家の小さな門灯だけ。冬の夜など、はだしの足は凍え、人さらいが闇にひそんでいると思うと生きた心地がしなかった。子供は必死に泣き叫びながら戸を叩く。「ごめんなさい、ごめんなさい」、「もうしませんから入れて下さい」。しかし、心を鬼にした母親はちょっとやそっとでは許さなかった。結局、最後は父親が母親に頼んで入れてくれたんだ、と人はその頃を振り返る。そんな役割だったんだ、と。兄弟姉妹が多かった頃で、子供は自分だけでなく、誰かがその目に会った恐ろしさまで目に焼き付けたのだ。「聞けん子」は、聞くことができない→聞けない→聞けん、で、方言ではない。怒る時は短い言葉でないといけんのだろう。
こんな恐ろしいことはなかった。怒った母親が子供を家の外に放り出し、玄関の戸の鍵を内側からガチャッとかけるのだ。その頃、家の外は真っ暗だった。闇だった。僅かにボォーッと灯るのは我が家の小さな門灯だけ。冬の夜など、はだしの足は凍え、人さらいが闇にひそんでいると思うと生きた心地がしなかった。子供は必死に泣き叫びながら戸を叩く。「ごめんなさい、ごめんなさい」、「もうしませんから入れて下さい」。しかし、心を鬼にした母親はちょっとやそっとでは許さなかった。結局、最後は父親が母親に頼んで入れてくれたんだ、と人はその頃を振り返る。そんな役割だったんだ、と。兄弟姉妹が多かった頃で、子供は自分だけでなく、誰かがその目に会った恐ろしさまで目に焼き付けたのだ。「聞けん子」は、聞くことができない→聞けない→聞けん、で、方言ではない。怒る時は短い言葉でないといけんのだろう。
ひとやすみ ひとやすみ
お蔵に入れちゃうぞ
子供がわるさをすると、親はきまって「お蔵に入れる」と脅かした。いや、実際蔵に引きずり込んで鍵をかけ、食事を与えないお仕置きをした。蔵がない家は物置き、それもなければ押入れだ。押入れの暗闇の中で、洩れてくる茶の間の明かりや食事どきの家族の談笑に、子供はどれほど情けなく悲しい思いをしたことか。その頃の親は結構難しい言葉を知っていて、折檻する、打ち ゃくする、などの言葉もよく使った。折檻は「きつく責めること」、打ちゃくは「打ち叩くこと」だが、親はその字まで書けたのだろうか。
子供がわるさをすると、親はきまって「お蔵に入れる」と脅かした。いや、実際蔵に引きずり込んで鍵をかけ、食事を与えないお仕置きをした。蔵がない家は物置き、それもなければ押入れだ。押入れの暗闇の中で、洩れてくる茶の間の明かりや食事どきの家族の談笑に、子供はどれほど情けなく悲しい思いをしたことか。その頃の親は結構難しい言葉を知っていて、折檻する、打ち ゃくする、などの言葉もよく使った。折檻は「きつく責めること」、打ちゃくは「打ち叩くこと」だが、親はその字まで書けたのだろうか。