◎「はじかみ(山椒)」
「はしかみ(葉顰み)」。「しかみ(顰み)」は縮むような状態になること。葉の端が顰(しか)んでいる印象であることによる名(特に犬山椒(いぬサンショ:山椒の一種))。これは「サンショウ(山椒)」の和名。植物の一種の名。実に辛みがあり、香辛料になる。「シャウガ(生姜)」は和名で「くれのはじかみ(塊の山椒)」という。「くれ(塊)」は塊(かたまり)ですが、根が塊(かたまり)になっており、やはり同じように辛いから。
「…垣下(かきもと)に 植(う)ゑし椒(はじかみ:波士加美) 口(くち)ひひく…」(『古事記』歌謡12)。
「椒 …ハシカミ」(『類聚名義抄』)。
「薑 クレノハシカミ ツチハシカミ ハシカミ」(『類聚名義抄』)。
「薑 …………和名久禮乃波之加美」(『和名類聚鈔』)。
◎「はしかし」(形ク)
芒(のぎ)を意味する「はしか(芒)」(その項)が語幹になったもの。その「はしか(芒)」が着物の首からでも入りたかったような状態を表現する。痛いというほどではないが、触る。取り除きたいがその場で服を脱ぐわけにもいかない。なんとかしたいが、どうにもならず、苛立つ。
「苛 …イラ…ハシカシ」(『類聚名義抄』)。
「又気ヲハシカウモタイデ、ヤワラカナガヨイゾ」(『聖徳太子御憲玄恵註抄』)。
「『扨々(さてさて)はしかい所を喰(くら)ふたなあ』」(『文蔵』「狂言」:これはどういう意味かというと、食ったものを忘れたが、覚えにくいことはなにかに関連づけて覚えろと言われていたので『石橋山合戦物語』に関連づけて覚えたといい、何を食ったか、関連づけがよくわからず、苛立つようなものを食ったなあ、と言っている)。
「麦秋やはしかき中に寐所も」(『俳諧新撰』「俳諧」)。
・敏捷で素早い、という意味の「はしかし」もある。これは「はしりけはやし(走り毛逸し)」。
「相生、弓八幡なとのやうなるはしかき舞にはひねりかへす扇似あはす…」(『毛端私珍抄』)。
・似た表現で「はしこし・はしこい・はしっこい」。これは「はしりけおおし(走り気多し)」。