「例えるなら蛇とかだろうか」
土曜日の午後。
午前中のイベント終了後、動物園にそのまま残って弁護士先生に連絡を入れる。
晶「こんにちは、先生。お疲れ様です。いま動物園の正門のあたりにいますから、着いたら声かけてくれませんか?」
そういえば、ケーキをあげたいからと好みを聞かれていたんだった。
晶「甘いものはあまり得意じゃないんで、ケーキならブランデーケーキとかですかね。」
椿屋「晶、こんにちは。もう晶は動物園にいるんだな。じゃあ俺も向かうから待っていてくれ。ふふ、随分と大人なケーキをご所望じゃないか。じゃあ晶の誕生日はブランデーケーキを用意しておくよ。」
誕生日て…。
晶「午前のイベントが終わって、昼休憩後にそのまま残っている感じですから。ケーキって誕生日のケーキのことだったんですね。」
ちなみに私の誕生日はまだ先だし、この人に教えてもいない。
椿屋「ああ、やっぱり誕生日に食べるなら一番好きなケーキがいいだろう?…イベントか、そういえばそんな話だったな。」
晶「着いたら教えて下さい。 今日は夕方くらいまではお付き合いできますからゆっくりで構いませんよ」
夕方まで間がもてばいいが。
椿屋「…さてと、今丁度着いたところだ。晶は、いたいた。分かりやすい場所で助かったよ。それじゃ、二人で色々見ていこうか。」
晶「先生、その恰好…ひょっとしてお仕事してたんですか?」
晶「ごめんなさい私、知らなくて、呼び出しちゃったみたいで。どうりで到着に時間かかったはずですね。」
椿屋「ふふ、そうじゃないよ。今日は俺も休みを取っていたからな。普段でも俺はこういう格好をしてることが多いんだ。」
晶「そうなんですね。じゃ、どこからまわります? リクエストありますか?」
椿屋「リクエストは特にないな。晶はあるか? 一番最初はキリンコーナーみたいだ。」
晶「私ですか?…そうですねえ。いるかどうかわからないけど、ヒグマとかあの白いやつ、polar bear、日本語だとなに? 白熊でいい? それとか見たいかも。あとトラとかヒョウとか。肉食獣が好きなので。」
椿屋「ああ、そうだな。ヒグマと…あとシロクマがみたいんだな。」
あとで気になって調べてみたら、ホッキョクグマ、が正解でした。
椿屋「晶は動物ではクマとか猛獣が好きなんだな。その動物は絶対に見ることにしよう。ふふ、キリンも可愛いいな。ほら、この餌 をキリンにあげて良いみたいだ。晶があげてみるか?」
晶「手まで食われそう…でも勿論あげます!」
海都と来てたら盛り上がりそう。
椿屋「はは、晶は怖いか?…でも、ちゃんと飼育員さんが傍についていてくれるらしいからな。」
きゃあこわーい…みたいなの期待してたならお生憎様。
晶「ほらほら、お食べー? お、来た来た。….睫毛ながっ。つけまみたいですよね〜。世間の女子たちが羨ましがるぞ、キミ。」
椿屋「お、キリンがおいしそうに食べてるな。ふふ、天然のまつ毛でこれだもんな。そういう晶ってエクステつけてるのか? まつ毛長いよな。俺もあげてみよう…(すっと差し出す)」
晶「つけてないです。切ったり貼ったり面倒くさいし。そこまでしなくても目ヂカラあるからくどくなるというか、宝塚か!ってなるんで、かえって怖がられちゃいますよ。あとメイクのオンオフで顔変わるの嫌なんで。」
椿屋「はは、なるほどな。確かに今のままでもつけてるくらい綺麗なまつ毛と目をしてるしな。まあ、それくらいがすごく綺麗だと思うよ。」
椿屋「…っと、次は猛獣のコーナーみたいだ。あそこに寝てるのはライオンだな? 間近で見ると迫力あるよ。」
晶「…ライオンて、同じネコ科であるトラやヒョ ウとちがって、群れるんですよね。雄一頭のためのハーレム。… 私は、孤高のハンターであるヒョウのほうが好きかな。」
晶「ほら、あの黒豹。しなやかでセクシーだと思いません?」
海都みたい。
無性に会いたくなる。
椿屋「そうだったのか、知らなかったよ。でも確かにハーレムを築いているみたいなイメージは強いな。ふふ、黒豹も見ていて惹 きつけられるものがあるな。なんとなく晶がセクシーだと思う理由も分かる気がするよ。」
晶「食べられてみたい…ってゾクっとします。ん? なんだろうあそこ…モルモットが一列に通路歩いてる。ああ、触れ合いコーナー か。うさぎとかいる。豹やライオンの視力がわからないけど、こんな目と鼻の先に…」
椿屋「ふふ、そうなんだな。じゃあ、晶はこういうヒョウみたいな男性が好みって事か?…まぁ、近くこうやって違う生体の動物が一緒に見れるのも動物園の面白い所だよな。ほら、あっちにはトラもいるみたいだ。トラも群れない生き物なんだろうか?」
肉食獣のお話は海都と来たときに取っておこうと思って、触れ合いコーナーを振ってやったのに、おのれ(笑)。
晶「豹みたいな男、好みです。虎も基本的に群れませんよね。豹より大きいでしょ? ブッシュで待ち伏せて獲物を狩るんだけど成功率低いそうですよ。豹は基本、木の上で待ち伏せますから、成功率高いんです。…かっこいいでしょ。」
海都みたいで。
椿屋「豹みたいな男か。ブッシュに隠れてなんて、そんなに賢い狩りの方法をとるのに、成功率が低いのか。まぁ、身体が大きいのもあって、隠れきれないとかだろうか。ふふ、本当に豹が好きなんだな晶は。」
晶「…うん、クレバーで危険な男が好きなんです。」
海都みたいな。
椿屋「クレバーで危険な男か。ふふ、面白い表現だ。ちなみに晶の目線からだと俺はどんな動物に近いんだ?」
晶「先生ですか?…うーん、よく知らないしなんとも。話してると優等生な受け答えだなと思いますが…どうなんですか? 本当にそんな退屈な男? 逆に自己評価をお聞きしたいです。」
椿屋「晶の思ったままの感覚を聞きたかっただけだけど、自分を動物に例えるなら、なんだろうな…蛇とかだろうか? ちなみに、晶は自分はどんな動物だって思う?」
晶「うーん。彼氏からは掴みどころがない猫だと言われ、兄貴分からは掌で転がるハムスターと言われ…」
椿屋「彼氏と兄貴分でそこまで思う動物が違うって事は、心の開き方が全然違うって事なのかな? まぁ彼氏と兄貴分だと同じ態度なわけないか」
晶「自分では…うん、彼の言う通り、猫なのかな。でもきっと好奇心で殺されるほうの猫ですよ。先生は、蛇…ですか。そんなこと言われたら…」
椿屋「好奇心で殺される方の猫か…なかなか想像しにくい例えだな?…蛇は嫌だったか?」
晶「… 先生をもっと知りたくなってしまいますね。狡猾で毒があるっていう意味なら、惹かれます。」
晶「ほら、こういう好奇心で殺される猫だってことですよ。やめておけばいいのに、覗き込みたくなってしまう。」
椿屋「ふふ、それなら蛇だと答えておいて良かったと思うよ。俺が毒蛇かどうかは晶がこれから俺を知っていってたしかめてくれ。でもたしかにそれで言えば好奇心に殺される…という表現も納得出来てしまいそうだな。」
晶「でも、お付き合いしなければ、先生のその蛇の部分は私に見せないんじゃないですか? 私は蛇の部分を見せて頂けなければ好きにはなりませんよ? ヒヨコが先か卵が先か…です。普段から見せてくれる気ありますか?」
椿屋「それはどうだろうな…それこそそういう部分は意識をして出すような部分でも無いだろうから、このままの関係性でももしかしたら見られるかもしれないよ。ふふ、それに急ぐようなこ とでも無いだろう?」
晶「そうですね。でもこのままの関係性はきついかもです。 私は、神経質で繊細で礼儀や常識にうるさい男は、話していて疲れるので避けるようにしています。先生はどうですか? 一つでも当てはまります?」
椿屋「いや? 俺は自分のことは神経質で繊細だとは思っていないし、常識や礼儀については最低限守ってくれていれば何とも思わないかな。もちろん人としての尊厳は守ってもらえたら…とは思っているけれども。それぐらいかな?」
晶「私を、言葉がキツい、ズケズケ言う、と感じるなら、そこまでにして下さいね。最近それで友達?無くしてるんで。彼氏と兄貴分の共通点は、私の毒舌など歯牙にもかけず面白がれるところです。はい、私の取説、終わり。」
椿屋「ふふ、人それぞれ相性はあるとは思っているけれども、人のことを傷付けるようなことさえ言わなければ俺はそこまで気にしないんじゃないかとそう思っているよ。万が一思うところがあればちゃんと伝えるしな。」
晶「そうして下さい。同じ言葉で傷つかず話し合えるのが相性だと思うので。では先生、言ってあったと思いますが、今夜は所用があるので私はこれで失礼させて頂きます。本日はありがとうございました。では、また!」
椿屋「おっと、もうそんな時間か。俺こそ今日はありがとう、また近いうちにタイミングが合えば会ってくれたら嬉しいよ。」
椿屋「それじゃあまだ早い時間帯とは言えど、もう暗いから気を付けて帰るんだよ晶。」
会話終了。
サービスというかユーザーに寄り添っているつもりかもしれませんが、毎回毎回デートでユーザーに「どこ行きたい?」「何食べたい?」「 なに見たい?」と委ねっぱなしだと、キャラの魅力が半減しちゃいますね、私的には。
ちゃんとリードしてくれる人の方が男らしくて好きです。