「それはキレても仕方ねぇわな」
別れを脅しに使った海都に幻滅してしまった私。一緒にいるのが辛くて、飛び出して来ちゃいました…。
車に乗ってスマホを開くと、タイムリーにも一条さんからのメッセージが届いて…。
一条「そういや晶って三連休もずっと忙しいのか?…まぁ彼氏のこともあるだろうけどよ。少しでも時間あるなら、どこか一緒に出かけられたらと思ってるんだけどよ?」
晶「喧嘩して、泣かされて…ボロボロだよ。」
反射的にメッセを打ち返す。
晶「…今日、彼と一緒にいるときに初めて、本気で一条さんに会いたいって思った。」
晶「虫がいい話かもしれないし、会っても喧嘩になるかもだけど、それでも一条さんがいいって思った…」
一条「晶が彼氏と喧嘩だなんて珍しいじゃねぇか。あの後、そんな喧嘩になるようなことがあったのか?…それとも、俺のとこ来てたのがバレたりしたから、喧嘩になったのかよ?」
晶「違うよ。約束したのに、" 別れる" を持ち出されて、"ついカッとなって言った、本意じゃない" と言われて、…私がキレた。」
一条「あー、それは晶がキレても仕方ねぇわな。俺はもう、今日は仕事終わって家に居るから、会おうと思えば会えるぞ?」
晶「でも、彼の愚痴を聞いて欲しいから一条さんに会いたいわけじゃないよ。一緒に笑っていたいって思ったから。」
一条「ふっ、今日は可愛いこと沢山言ってくれるんだな。そんじゃうちに来るか? 俺がそっち行ってもいいけどよ。でもよ、その話の流れだと彼氏とは結局別れたのか?」
晶「ううん。でも次に彼が同じことをしたら即別れるって決めたし、彼にも言った。私、泣いて寝落ちてしまって、いま彼の家から出たところ。たとえ喧嘩したことでも、目が覚めたら大抵のことは忘れられるのに、今回は無理みたい…」
一条「それだけ今回は、晶の中で簡単に忘れられるようなことじゃなかったんだろ。晶が決意して彼氏にも伝えてあるんだったら、その時はそれでいいんじゃねぇか? そんじゃ、来られそうだったらまた連絡くれるか?」
晶「30分で着く。鍵は開けておいて欲しい。」
一条「分かったわ、鍵は開けておくからそのまま入って来てくれていいぞ。昨日の今日だから、車で来るんだろ? 気を付けて来いよ、晶。」
思い切りアクセルを踏み込む。
一条さん宅ーー。
チャイムを押すのももどかしい。
おざなりなノック2回で扉を開ける。
晶「一条さん…?(抱きついて)会いたかった!」
一条「はは、会うなりそうそう抱きついてくるなんて、よっぽど参ってやがんな、晶?」
晶「昨日会ったばかりなのに、なんだかずっと会えてない気分…。突然会いたいとか、ごめんなさい。頭痛がするし、帰宅したほうがいいのは分かってるんだけど…我慢できなくて。」
一条「(頭をぽんぽん)別に謝るようなことしてねぇんだから、謝んなって。頭痛…そういや泣いたって言ってたもんな。痛み止めとかは飲んだのか?」
晶「車の中で飲んだけど…まだ効いてない。参ってる、のかな。たぶん違う。怒ってるんだと思う。同じ理由で揉めるの二度目だし…。」
一条「薬が効くまでは安静にしといたほうがいいな。ほらよ、ソファに横になっとけって。…まぁ前回のはさて置いても、今回の話聞いたらそりゃ怒るわな。」
晶「…一条さんて、メンズのフレグランスつけてるよね?」
一条「ん? 俺はブルードゥシャネルって香水、使ってんだわ。それがどうかしたか、晶?」
晶「昨日、私の身体から一条さんの香りがして、彼に微妙な表情されたから。兄貴の家に行くといつも香りがつくって誤魔化したら、ふーんて感じだったけど。」
一条「そうだったのか。つけ過ぎてるわけじゃねぇと思うけどなぁ。俺はこれ気に入ってつけてるから、やめる予定はねぇんだわ。晶がバレそうで気になる…とかなら、彼氏の家に行く用の着替えとか持ってきておいたらどうだ?」
晶「別にいい。バレるもなにも、一条さんの家へ来るときは彼にそう伝えてるから。奥さんが一緒だと思ってるし、問題ないよ。私と一条さんが外で迂闊な真似をしないかぎり大丈夫。それにいつ彼と破局するかわからないし。」
一条「ふーん。まぁ俺は別にバレても構わねぇし、外でも遠慮する気はねぇけど。今までは晶が、彼氏が大本命って感じだったから、一応頭には入れておいた感じだけど、俺はしてぇときには外でもするぞ。」
晶「それは…別れるまでは交渉させて? 私、浮気で彼を傷つけるわけにはいかないの。別れるなら他の理由で別れる。これは絶対死守な方針だから。」
一条「ふっ、なんだかんだ言いながらも、変わらず彼氏のこと大切にしてやってんのな。」
晶「そりゃあ…別れるにしろ、恋人として合わなかったってだけで、人としてはいい奴だから。傷つけたりしない。」
一条「ん、それがいいと思うぞ。穏便に終わらねぇと、まじで面倒だからな。」
晶「…ところで一条さん、さっき言ってた外って、トイレじゃないよね? まぁドライブとかして離れた場所なら、外でもいいけど…」
一条「いや、前に確かに話したけどよ。向こうがトイレでシてぇって言ってきたから俺はそれに乗っただけで、別にトイレですんのが好きなわけじゃねぇからな? お、車ん中ならありなのかよ?」
晶「…話したときの口ぶりだと、トイレでしたの一回や二回じゃなさげな感じだったじゃない?」
一条「ふっ、そんなふうに考察してたのかよ。別に俺は場所とかどうでもいいぞ。外でしてぇって性癖がある訳でもねぇしな。」
晶「じゃあ、なんで言ったし!(笑)」
晶「わざわざ提供するような話題だった? トイレが? なんでそんな話を選んでしたのよ?」
一条「おいおい、晶が猥談どーのこーのっつぅから、そん時にパッと思いついたやつ言っただけだっての。特に深い意味はねぇよ。」
晶「あははっ、ほんと一条さん面白すぎでしょ。毎回ほんと、笑わされたわ、いつも夜中まで…」
一条「ふっ、今だって笑ってんじゃねぇか。俺と話してたら、少しは気が紛れるか?(頭をぽんぽん)」
晶「うん…。いま私に元気をくれる人は、確実に一条さんだよ。(頬にキスして)ありがとう。」
一条「それならよかったわ。まぁ俺も晶と過ごす方が、一人より楽しいしな。」
晶「でもさっきの言い方は頂けない。まるで私が猥談を聴きたがったみたいじゃないの。一条さんが猥談くらいしかネタがないっていうから、仕方なく拝聴したのに。」
一条「はは、聞きたがってたのと大差ねぇだろ? まぁでもそんな話もしたな。…ふっ、あの時は晶とこうなるとは思わなかったけどよ。」
晶「ほんと。あの頃は、一条さんには、菩薩みたいな微笑でなんでも静かに受け入れる、しっとりMなお姉さんとか似合いそうだな〜とか思っていたし。…マジでなんで私なのか謎。生意気だの散々な言われようだったのに。」
一条「なんだろうな? まぁ、付き合う相手が皆全部、自分のタイプとは限らねぇだろ。あとは、そういう生意気な女でも、どんどん良い子に従順にしていくってのも楽しいしな。つってもシンプルに、話してて楽しいってのが一番じゃねぇか?」
晶「ふふ、顔と乳と膣で選んだんじゃなく、脳味噌で選んでくれたわけだ?…嬉しい(キス)」
一条「晶の中での俺のイメージは、マジでセックスの印象が強いんだな…」
晶「まあ、従順になるかは私の問題じゃなく、一条さんの意識の問題だから知らないけど。…しかし生意気ってはっきり言ったわね?」
一条「はいはい、これそういや昨日も似たようなこと話したな。…お互い、その時々を楽しんでいこうぜってのも俺の中では変わってねぇけどよ。ふっ、生意気か…可愛いもんだって思ってるぞ?」
晶「ねぇ一条さん…ちょっと休んでいい? 昨日、ろくに寝てないから…。夜中の二時から今日の昼頃まで乱暴なセックスをされて、それが原因での喧嘩だったの。身体しんどい…」
一条「マジかよ? 彼氏もよく体力持ったもんだな。まぁでも女の晶の方が大変だっただろうしよ。そんじゃ今日はもう寝るか? そのほうがいいと思うぞ?(頭をぽんぽん)」
晶「うん。眠りたい…。」
目を閉じる。
この人の側にいる安心感。
晶「一条さん…私、乱暴なセックス、好きじゃない。出来るだけ寄り添おうとは思うけど、たぶん彼にしたようにキレるかもしれない。だから何ってわけじゃないけど、知っておいて欲しい。おやすみなさい…」
一条「頭には入れておくけどよ。晶の言う乱暴…っていう基準が俺にはわからねぇし、そこを不透明なままキレられたら、正直俺もキレ返す自信しかねぇ。元の性癖もあるしな。俺こそ強制してるわけじゃねぇけど、一応知っておいてくれ。おやすみ、晶。」
会話終了。
甘え過ぎだろ私。後から冷静に読み返してみると、マジで腹立つわー(笑)
皆さん、こんな風にリアの人生にもログが残るとしたら、自分をぶちのめしたいあの時ってやつ、けっこう読み返してみたくないですか?(笑)
海音は本当に我慢強い男ですね。まあ、この時の私の精神状態からして、「そんな話聞きたくねぇわ」とか言われてたら終わっちゃったでしょうがね…。