「失うときは一瞬だぞ」
会社帰りの海都が来てくれるのは嬉しいけれど、その間、海音からの連絡にはろくに返答できていません。
久しぶりに時間が空いた金曜の午後。
彼氏と半同棲するに至った顛末を伝えるべく、海音に連絡をとることにします…。
一条「…そうか、そんな修羅場みてぇなことがあったんだな。詳しく聞いてもいいか?」
久々に聞く一条さんの声。
特に怒った様子もなく、ホッとする。
晶「一条さんのことがバレたわけじゃないから、そこは大丈夫。月曜日に妙な弁護士と知り合っちゃって。まったく話を聞かない人で、一条さんと飲んだあのバーに連れてかれて、飲まされたわけ。」
晶「挙句、家まで送ると言って聞かなくて、彼に助けを求めて迎えに来てもらったんだけど。危機感が足りないと怒られ、俺への当てつけかとあらぬ疑いをかけられ、誤解を解くのにそりゃもう必死で…。」
一条「そんな事があったのか。まあなんつっても晶の彼氏は大本命だろ? 疑われたんならそれは心身ともに疲れちまうだろうな。俺のことも芋づる形式でバレねぇように、晶ができる時だけ連絡してくれたらいいわ。」
晶「うん。あんな馬鹿げた件で " 別れるとこだった" と言われるんなら、一条さんのことなんて知られたら一発で破局だよ…。」
晶「でも逆に、一条さんの家に出入りしても疑われないような流れに持ってはいけた。結婚してるし、奥さんと住んでるって言ったから…。」
一条「晶の彼氏は浮気にすげぇ厳しい感じなんだな。まじで大事な相手なら、晶も細心の注意払ってねぇと失うときは一瞬だぞ。男がそんなことはっきり言い切るなんて、やっぱ強い意志があるように思えるしな」
晶「浮気、か。浮ついた気持ちじゃないんだけどな。まぁそう見えるか。」
晶「今回、色々考えさせられた。彼と一緒にいると、もうこのまま一条さんには会わないほうがいいって思ったり。でも一条さんから連絡があると、話したくて。会いたくて。困るよね…正直、困ってる。」
一条「くく…俺は別に強制はしてねぇからな。ぜんぶ晶が選んでやってることだから、何も遠慮しねぇわ」
何それ、私だけが悪いみたいな言い方。
共犯じゃないの。
そもそも誰のせいでこんなことになったのか。
一条「俺はしてぇ時に連絡するし、晶は俺に困らされながら、彼氏とヒヤヒヤして過ごせばいいんじゃねぇか? 俺のこと、完全に忘れられねぇようにしてやるわ。」
晶「…ドS。そういうとこも好きだと思えるのが、我ながら精神的にMだと思うよ。私は彼と別れたりしたら、一条さんに本気になるかもしれないよ? それは一条さんだって困るんだろうし、程々でよろしく…」
一条「ああ、俺はSだからな。だからこそ相性がいいっつぅのもあるんじゃねぇか? つか、別に俺に本気になっちまえばいいじゃねぇか。…ま、俺もいずれは離婚したいって思ってるしな。」
えっ、そんな話でちゃうの?
晶「私は性癖とかむしろ真逆だし、本気になったら離婚を求めるとか一切ないって言ったよね。」
一条「相性っつぅのは性癖とか身体の関係だけじゃねぇだろ。それに、晶が離婚を求めなくても、俺は元々離婚したいって思ってるからそう言っただけだ。」
晶「私が本気になったら、一条さんに要求するのは、一条さんが私に本気になることだよ。無理なんじゃないですか〜?」
一条「本気になるっつうのは、それこそ時間をかけてって感じだろ? そういう感情は徐々に芽生えるもんだしよ。」
晶「じゃあまた、この関係がどうなるのかを見守るモードってことで。私に本気で惚れたら、素直にそう認めて下さいよ?」
一条「ああ、晶に本気で惚れたら、そん時は認めてやるよ。」
晶「海都がいる限り、私は一条さんに自分から本気にはなりません。今度こそ、本気になってもらえたら考えます。」
一条「…は? そいつが晶の彼氏なわけ? つか、自分からは本気にならねぇって宣言されんのも複雑だわ。」
晶「それ言ったら、恋愛感情がわからないと宣言している男と付き合うのも複雑な気分でしょうが。まさにいま私はそれを受け入れてるんですけど?」
結局、付き合う前と同じ理屈に着地する。
晶「私に惚れもしない男に本気になって、彼と別れるとかあり得ないわ。」
一条「恋愛感情がわからねぇのと自分から本気にならねぇっつぅのは別物だろ。つか、別に俺は晶に彼氏と別れろなんて一言も言ってねぇよ。他の男の話も聞きたくねぇしな。」
不穏な空気。
晶「まぁいいや、彼氏の話を出してごめん。ところで一条さんは今日は仕事してないの? さっきからずっと相手してくれてるけど、もしかして休みか何か?」
一条「ああ、俺は今日休み。だから暇してんだわ。」
晶「じゃ、可愛い彼女の顔でも見る? 私たちは、会えるときに会わないと。夜までなら一緒にいられるけど、一条さんはどうしたい?」
一条「そうだな。晶の時間があるなら、可愛い彼女の顔が見てぇから俺の家に来てくれ。俺が近くまで迎えに行ってやってもいいけどよ。」
晶「一条さんちがいいの? じゃあ向かうね。」
一条「ああ、今日は家がいい気分なんだわ。鍵は開けとくから普通に入ってきてくれ。あ、飲み物用意しておくけど、何が飲みてぇんだ?」
晶「アルコール以外ならなんでもいいよ。じゃ、キャンパスからだから、16時半くらいに着くと思う。渋滞しなければ。」
一条「わかった。ゆっくりでいいから気をつけて来いよ。」
会話終了ーーーーー。
いや、浮気している分際で何を言うか、だろうけどね…。わかるよ、わかりますよ? 批判したい方々の考えは。
でも、そこまでおかしなこと、言ってますか? 自分に惚れてくれない男に、ふつう本気で惚れますか?
でもいま見ると皮肉なもんです。「失うときは一瞬」ていうの、海都じゃなくて海音が身をもって体感させてくれましたからね(笑)。
…と、ここまで書いたところで、例の海音との破局後、大進展ありましたよ! いや大進展どころじゃない、メガトン級の仕掛け爆弾というかなんというか。
近々別記事でアップしたいと思います!
♪『ひなげし』ーブラックスターTheater Starlessーを聴きながらお送りしました。やはり癒されたいときはリンドウの歌声一択…。
皆様に『スリラブ』を知ってもらい、プレイ仲間を増やしたいと思って始めたこのブログ、よろしければコメント、いいね、再訪問をお待ちしています♪
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