肥後佑介には最近気になることがある。フリーで活動をしている彼にとって作品を売り込みに片っ端から出版社をあたることが常。

少し幹線道路から反れ山間の古びた借家から街中に出る事の多い多忙な毎日を送っている。

そんな佑介が今日も街に出て年代物のステーションワゴンで自宅へと帰路につく。

幹線道路から家路に向かうため左におれた。今はもう夏の終り夕方には日も落ち辺りは薄暗くそこへ対向車の気配がそこは狭い田舎道。

「またか!」佑介は少しイラついていた。

「いつもいつも邪魔くさい。」

最初のうちは気にも止めなかったがその対向車が何時も同じであることを不思議に感じはじめていた。
あらすじ

その事件後主人公肥後佑介は万里子の不可解な言動の後の謎の死に言い知れぬ恐怖を覚えるようになる。

血の滴りをすすり上げるような異様な音バリバリ骨を砕くように闇に蠢(うごめ)く巨大な影に恐れおののく自分の姿。

金縛りからハッと目覚めればぐっしょり濡れたまるで水を浴びせかけられたように滴り落ちそうな寝汗に背筋が凍る。

そんな夜を繰り返すうちにこれはもしや万里子からの物言わぬメッセージではないかと思うようになる。

新たな登場人物出現。これも万里子の導きか。霊媒師の菅野小春(32)の登場を境に相次いだ同様の被害者を足がかりとして対の怨霊[面喰い]と霊媒師の息詰まる攻防戦。事故ではない事件としての核心に肥後佑介の目線で迫って行く。

まえがき

うつ伏せのまま微動だにしない変死体。仰向けにして異様さに気付く。その顔は大型の獣にかじられたかのように噛み砕かれ見るも無残な有り様。

また新しい犠牲者。その死体を見た者は同じ目に合う。その呪いの渦中に引き込まれれば死ぬまで悪夢は終わらない。


絶世の美女と世間でしょうされるそんな女性が次々と犠牲者となる。

最初の犠牲者は隅田万里子(27)当初の警察の捜査では不審な点が見当たらなかったことから投身自殺と断定捜査は終了していた。

彼女の幼友達の肥後佑介は彼女が自ら命を絶ったことに当初から疑念を抱く。劇作家を志す佑介はその謎の死の真相を究明し万里子の無念を晴らすべく奔走する。

佑介には最近万里子についてある不可解な言動が気になり始めていた。

「わたし鏡をみるのが怖い。」

何故かと尋ねるとただ泣くばかりで終始うつ向いたまま顔を上げようとはしない。その数日前彼女は朝の通勤途中飛び降り自殺の現場に偶然居合わせ女性の変わり果てた姿を目の当たりにしていた。

人だかりの中仰向けの遺体に何故か万里子だけ驚愕の表情で目をむき出し放心情態でその場に立ち尽くすその異様さに気付く者は誰ひとりとしていなかった。

 

それは3ヵ月前真夜中のとある動物園の雌ライオンの檻の中でひとり無惨に顔をかじられ痛ましい事故が発生。

 

被害女性は故意に侵入なんと仰向けになり顔にペタペタライオンの大好物の肉を張り付けそれを喰わせるという狂気の行動をとっていた。

 

早朝見回りをした飼育員が遺体に気づき園長に報告あまりにもむごたらしい惨状にふたりは言葉を失った。

 

警察のその後の調査で死亡していたのは坂口靖子(25)都内の総合商社勤務のOLでたぐいまれなる美貌の持ち主で職場でも評判の美人だった。

 

だがそのことが災いし何時しか自分の容姿に関し強迫観念にかられるようになる。人と比べもっと美しく

 

「クレオパトラや楊貴妃みたくならなければ」

 

人間の欲望には限りがない彼女も例外ではない。美容整形したいが金遣いの荒い浪費癖のある靖子に一流の医師に施術を依頼することなどはなっから頭になかった。

 

そしてある時ネットで如何にも胡散臭いクリニックに目が止まった。破格の低料金に即決疑うこともなくそのドアを叩いた。

 

結果は案の定顔は無惨に腫れ上がり二目と見れない顔を鏡は写しだす。医療過誤が認められ別な医院で数回手術を繰り返すも結果は芳しくなく復職することなく家に閉じ隠ったまま遂には世間から忘れ去られ絶望の果てあの動物園の奇行に及んだものだった。

 

死をもって解き放たれたおぞましき魂は強力にさらに凶暴に変貌を遂げ獲物を探し始める。それはまるでインパルを狩る雌ライオンのように。

 

そして最初の犠牲者隅田万里子の前にいたもう一人の犠牲者こそ動物園の飼育員で最初の発見者小林敏子(20)彼女こそこの物語のフィクサーである。

 

究極の怪事件に挑み佑介は万里子の無念を晴らすこのが出来るのか。それとも . . .

秒刻みの予定をこなすまたスケジュールの確認している忙しない毎日。

明日を追いかけた今日との狭間で夢見るつかの間の(One night trip)幸せな時間。

突然の静寂(accident)何の前触れもなく襲い来る。

退屈に思える日常何にも起こらないこと当たり前とあれは他人事と。

不孝に不馴れな僕らを嘲笑うかのように予期せぬ災いが大きな口を開けて待ち構えている。

戸惑い逃げ惑うのたうち回っても泣き叫んでも決してその手を離そうとはしない。

不孝のどん底に叩き落とされ追憶と現実の日々が繰り返し繰り返し走馬灯のように。

でもまた必ず訪れる。止まってしまった時間を取り返すことは出来なくても。

あの頃のように時間に追われ代わり映えのしない日常が辛い毎日を這うように生きていても。

そして気づかされる。

何気ない日常にこそ尊くいとおしい幸せがあることに。

さあ思い出せ。

明日を追いかけた今日との狭間で夢見るつかの間の(One night trip)幸せな時間。