意識不明の重体から脱却し改善の兆候はあるものの何故か意識は未だに戻らない。

小春の体に憑依していた魔物こそ[面喰い]と化した小林敏子の怨霊である。

小春もまた[面喰い]にとり憑かれた女性の一人で佑介の幼友達万里子の死後その遺体を見てしまい呪いにかけられていた。

霊媒師である小春は万里子の死に顔と鏡を見た時の獣にでもかじられたような自分の顔が酷似していたことから悪霊の仕業と見抜いていた。

小春は遠縁の男性の除霊師に相談を持ちかけ最近度々すれ違い坂を通ってその除霊師のもとを訪れていた。
警察から知らせを受けて居てもたってもいられず家を飛び出し道端に放置した車に乗り込むと一目散にその救急救命センターに向かった。

久々だったがこのような形での再会となるとは酸素吸入器が装着され心臓の拍動を示す数値が確かに生きている証と信じるしかなかった。

あのような大事故車は大破し全焼だったが不思議なことに彼女にこれといった外傷はなく軽い心不全だったことを担当医師から伝えられた。

そのまま佑介は彼女に付き添い時間は流れて深夜から日付が変わろうとする頃この病室のドアが静かに開いて一人の男性が入って来た。

こんな時間に面会時間はとっくに過ぎて何しに来たのか?しかも彼は除霊師だという。

彼がこの病室にどうやって入って来れたのか考える間もなく辺りは静寂から一変目は閉じたまま小春の中にそら恐ろしい呻き声を聞くことになる。
転落した車のことは勿論気になったがまだ日差しは強く汗だくになりながら自宅へと歩を進めた。

この頃になるとすでに口伝てで最近の女性の不可解な死に介在する化け物がいてそれを[面喰い]と呼ぶと噂になって広がりはじめていた。

それは佑介の耳にも届く事になる。警察としてはまだ物証も目撃証言も曖昧ことから自殺としか扱われずにいた。

万里子の残した不可解な言葉や最近繰り返される悪夢により魔物の存在を核心した佑介は事件の実態と化け物の正体の本格解明に向けて乗り出す。

連日連夜の取材で顔面裂傷死亡事故まで辿り着いて万里子の仏前に報告をした佑介だったがもうふらふらで家に着くとそのまま倒れ込むように眠りに落ちた。


携帯の着信で叩き起こされるまで久々に気味の悪い情景に魘されることもなく熟睡した佑介だった。

久々の静寂涼しい風が心地よく日除けのグリーンカーテンは風にそよぐ。と、突然空気を切り裂くように佑介の携帯が鳴り始めた。

寝起きで意識はまだ朦朧としていたが徐々に目が覚めてきて携帯電話の通話ボタンを押す。

「もしもし、どちら様でしょうか?」

「すみません。私静岡県警の本郷と申します。失礼ですが肥後佑介さんの携帯でしょうか?ご本人様でしょうか?」

「警察?何かご用ですか?」

「実は近くで午前中起きた自動車転落事故の件でお電話させて頂きました。」

「車を運転していた女性の身元は判明しました。お名前は菅野小春さん(32)才 意識不明の重体でドクターヘリで救急搬送され現在救急救命センターで治療を受けていますが身寄りがわからず手帳にあなたの連絡先が記載されていたのでお電話させて頂きました。」

「えっ! 何ですって。」まさかそんなこと...佑介は絶句した。
程なくして消防レスキュー隊や救急車そして警察と次々と到着し規制線が張られた。

物々しい警戒のあと報道関係者と 野次馬で辺りは騒然となった。

佑介は立ち往生待つしかなかったが借家は現場の向こうここから歩いて10分車はカギを残したまま離れざるを得ない。

買い出しした食料品は常温では駄目になるものもあり警察官に事情を説明しなんとか通してもらい現場から歩き出した。
誹謗の死を遂げ「面喰い」という怨霊と化した元動物園の飼育員小林敏子は救うべき魂。坂口靖子の自縛から解き放たれるまでは人を殺め続ける。

佑介の幼友達の隅田万里子もまた犠牲者の一人。今朝彼女の初七日を終えて10時頃近くのスーパーで買い物を済ませ心許ない銀行口座から生活費をおろすと気忙しく家路についた。

と.突然!

すれ違い坂の方角からド―ンッという轟音とともに暫くすると黒煙が立ち上った。現場に着くとすでに数人の人が恐る恐る下を覗きこんでいる。どうやら車が転落したらしい。